6ー5
ワッシャンから愛の告白を告白を受けてしまった翌朝、ずぼらなあたしは待ち合わせ時間に目が覚めた。
だって!! ゆうべは胸がどきどきしてなかなか寝付けなかったんだもん。
眠ろうとした瞬間に、ワッシャンの人化した姿とイヌワシ姿が交互に出てきて、あたしを口説くんだもん。
そんなのって、絶対眠れないじゃん。
そんな感じであわてて支度したものだから、髪はぐちゃぐちゃ、化粧もしないでそのまま出たら、怒られると思っていたのに盛大に笑われた。
「悪い。まさかそこまで追いつめるとは思わなかった」
逆にあやまられちゃうし。
本当、いろんなことがあるなぁ。
「でも、撤回はしない。俺は前からあんたのことが好きだった」
「ま、またそういうこと言って〜」
外でそんな話して、恥ずかしいじゃない。
「塩顔の男なんかより、俺を選べよ?」
「だから、そんな人知らないって言ってるのに」
しつこいなぁ、もう。
恥ずかしい中で、ワッシャンを肩に乗せて歩く。
もちろん、肩にはワッシャン用の鞍をつけているから安心なんだけど、好きとか言われた後で肩にとまられると、恥ずかしさが倍増される。
けど、ワッシャンが作ってくれたサンドイッチは美味しいからゆるす。
なんとなく無口になって、王立図書館の入り口で手続きをすまして建物の中に入る。
この、なんとも言えない古い本の香りがたまらなく好き。
「それで? ワッシャンはどこから調べるの?」
「少し待て」
そう言うと、ワッシャンは人化した。館内で人化することは禁じられてはいないから平気だけど、たまたま近くを通りかかっていた男の人とぶつかってしまう。
「あ。ごめんなさい」
「いや、あの。すまないです」
うん? 塩顔の男の人。細マッチョ?
まさかと思うけど……。
「すみません。ぶつかってしまって」
「その本を探そうとしていたんだ」
塩顔の男の人のことなんて目に入らないように、ワッシャンは男の人が持っている本を見て、それから彼を見た。
「あれ?!」
館内はできるだけ静かにしなくちゃいけないのに、その男の人はあたしを見て、信じられないとばかりに細い目を目一杯大きくした。
「もしかしてミリーさん? 前世が猫だった」
うん? 前世が猫? なにそれ?
でも、なんか気になる。
「前世までは知らないけど、あたしはミリーという名前であってます。猫耳族です」
やっぱり、とその人はつぶやいた。
瞬間、ワッシャンがおいっと彼の肩を押した。
「離れてくれませんか?」
「あ? ええ、はい。俺、ビリーって言います。パン屋のせがれですが、時々古代竜の討伐に駆り出されてます」
は? なんの話? まったくわからないんだけど。
前世って、そんなに大切なものなのかな?
つづく




