4ー4
グルーはあたしたちが残したパンを皿から取ってかじった。
「さてと。そんじゃま、先に代金を払ってもらおうかな?」
「え? 先払い? なんでよ」
「威勢のいい譲ちゃんだな。先払いってのはあれよ。途中で海賊に襲われた時に命を落とすかもしれないし、水中トンネルでよくないことが起きて命を落とすかもしれない。だから前払いなんだよ」
な? と言って、金払いのいいスナオに向かって手を出した。
ちなみに、スナオからはお金の匂いがするんだそうだ。
「な、なんで俺?」
「さっきブラックカード使ったろ? ニオイでわかるんだよ。さ、早く出せ」
そんなこと言われても、とぶつくさ言ったスナオだけど、やっぱりそこはスナオだから、素直に言われた金額をカードで払ってくれた。助かる。というより、スナオのせいでこうなったことをわすれないでね?
そんなこんなで宿屋を出ると、港に向かって歩き出す。
そして、すっごくおなしなタイミングでグルーがこう言うのだ。
「しっかし、本当に首が後ろ前についてるな。俺も斬ってみていいか? ぐにゃんと首が曲がるところを見てみたいんだ」
「か、勘弁してくれ。首を斬られるたびに、体力をなくすんだ」
本当か? とばかりにグルーがあたしたちを見る。
「本当よ。このあたし特製の体力魔力回復ポーションが効かないんだから」
ほぉ〜、とばかりにグルーがあたしを見る。
「お嬢ちゃん特製のポーションか。それはいくらで売ってる?」
「売り物じゃないんだ。もしもの時にはただであげるから心配しなくてもいいわよ」
「そりゃたのもしいな」
とくん、と胸が跳ねた。
嘘嘘!! あたし、ビリーのことが好きなんだからねっ。
いっくらグルーがこれでもかっていうほどのイケメンでも、ビリーの方が好きだし、前世からの恩を感じてるんだからね。
だからこんなの……。くっそう、イケメン野郎めっ。
なんて、頭の中で葛藤を繰り広げていたら、港についた。
海というより、水そのものが苦手なので、港には初めて来たのですべてが珍しい。
「わぁ〜。船がたくさんある〜!!」
そんなあたりまえのことを口に出してしまうくらいには感動した。
グルーはその中の一艘に向かって歩いてゆく。えらく磨き上げた古い船だけに、重厚感かある。
「ボアー、準備できてるか?」
グルーがしっきのイノシシに話しかけると、イノシシのボアーは人化して、アイアイサーと答えるのだった。
うっわぁ。いよいよ船出だ。わくわくした気持ちより、怖さのほうが勝ってるよ。
つづく




