3ー5
結構気を張って注意してたんだけど、スナオがビリーを襲うようなことがなかった翌朝、あたしたちは早めに朝食をいただいて、ヤスと合流。そのまま宿を出た。
ゆうべ、ヤスとは友達関係にあるおじさんから防具店の場所と名前を聞いておいたから、ヤスに道案内をしてもらう。
「防具屋なんて、俺も久しぶりだよ」
なにしろこの不景気で、冒険者やろうにも、ポーションひとつ買えなくてさ、なんてヤスがぼやく。
「パーティーグループを作ろうにも、先立つものがなくちゃな。ってんで、スナオという金づるがいる今がチャンスとみた」
意外とちゃっかりしてるじゃん。そうね、昨日はいろんなおじさんたちから軍資金をわけてもらったけど、やっぱりスナオを味方に引き入れてあげたからにはお金よね。
なにしろ、ビリーが言うところの金持ちのボンボンだし、古めかしい魔剣ひとつだけを見ても、相当な金額になる。
……その魔剣、あたしに売ってくれないかな? なんてね。くれるわけないよねぇ。だってスナオ、その魔剣がなかったらただの半端魔道士ゲス野郎だもんね。
「それで? 他になんの防具を売ってるの?」
あたしがヤスに聞くと、先頭を歩いているヤスがん? と振り返った。ちなみに、ヤスとスナオに肩を担がれて歩いているビリーなのだ。
「基本的な防具はひとそろいってところかな? 嬢ちゃん、なにか入り用かい?」
「う〜ん、あたしってよりかはビリーかな?」
昨日あのままウルフ族と戦闘になっていたら、きっとビリーは食料にされていただろう。つまり、それくらいビリーを守らなくちゃいけないってこと。
頭が後ろ前についているだけで、呼吸も苦しそうだしね。
「ヤスはウルフ族と戦ったことはある?」
「俺か? 俺はまぁそこそこは。顔や身体についた傷はだいたいウルフ族だな。あいつら海でも平気で泳ぐんだぜ。しかも、その族長ともなれば人化できるし、船を操ることくらいはできる。人語もしゃべれるしな」
おおっ。なかなか深いウルフ族の習性。
「あたしが戦ったとして、勝てると思う?」
「お嬢ちゃんは腕力なさそうだし、難しいだろうな」
「はっきり言ってくれてありがとう」
ここで変に言葉をにごされたりしたら、それこそショックってもんよ。
海を泳いだり、船を漕ぐウルフ族。ひょっとしたら、海賊より面倒なんじゃないかしら?
つづく




