2ー7
あたしがそそのかしたわけじゃないんだけど。額に素直と書かれたノリオはやけに張り切って縄を解いてもらった。
「いい? ここであなたが裏切ったら、全員でボッコボコにして、その魔剣、質屋に売るからねっ!!」
勢いづいてそう言ってしまうと、おじさんたちから、威勢のいい姉ちゃんだな、と大笑いされてしまった。
いいもん。裏切ったら許さないんだから。
その文言は、縄を解くまえに腕に書いてやったから、めったなことはしないだろうけど。
すっくと立ち上がったノリオは、生まれ変わったような顔で夜空を見上げた。
「うわぁ。星が綺麗。泣ける」
泣くのか? そんなことで泣いてないで、ビリーをなんとかしなさいよっ。
「俺、生まれ変わる。今日からノリオを捨ててスナオになる」
……アホくさ。
「いいから。早くやっちゃいなさいよ」
そう言うとおじさん達からも、そ〜だ、そ〜だ、やっちまえ〜。という野次が飛ぶ。
引っ張りすぎだぞ、スナオ。ノリオ? どっちでもいっかぁ。
「では、斬らせてもらいます。ビリー。俺、前世からあなたのことが好きでした。てぇ〜いっ!!」
ザンっと魔剣が振り抜いて、ビリーの頭を派手に斬る。何人かのヒーラーの手助けのもと、なんとか三秒以内に頭を身体にくっつけた。
もちろん、顔はきちんと前向きにつけた。
なのに。
「嘘でしょう!?」
「何回見てもエグいな」
あたしとワッシャンがつぶやく間にも、ビリーの首はぐにゃんと後ろ向きにひねりついてしまう。
あ〜!! という残念そうな野次の中、おや、ということに気がついた。
「あんた、スナオも前世でビリーと会ったことがあるの?」
うっかり聞き流すつもりでいたけど、ビリーの本妻を気取ったあたしには聞き捨てならない台詞だった。
「そ、それは、そのぉ。ポッ」
「ポッじゃないし。頬赤らめる場面でもないしっ」
そうか、本当の意味での恋敵か。それならそれで、こっちにも考えがある。
「あんたさぁ、せっかくだからあたしたちと一緒にこの世界を楽しまない? あたしも本命はビリーなんだけど。なんだか楽しくなりそうな予感がするの」
いや。そうじゃなくて。多分スナオが一緒じゃないと、術が解けないような気がするんだけど。楽しくなりそうだなんて。あたし、なにを言ってしまったんだろう……。
つづく




