第七話 再び
それから数日後。
夜十時。
最終電車に乗った僕はウツラウツラとしていた。
仕事と連日のバイトの疲れで。
ガチで眠い。
ガチで。
ヤバイ。
連日シフトを入れた所為でキツイ。
眠い。
「眠ってたまるかぁあああああああああああぁっ!」
「「「……」」」
「すみません」
眠気覚ましに叫んだら他の乗客に睨まれた。
こええ~~。
でもまあ~~このままでは寝入ってしまう。
仕方ないので缶コーヒーを取り出しす。
「自宅で眠れなくなるから嫌なんだけどね~~」
とはいえ眠気覚ましは必要だし仕方ない。
「眠気覚ましの薬を飲むよりはマシか」
カフェインって一日ある程度以上取りすぎるとヤバいんだよね。
「ふうう~~微糖は最強と思います」
美味い。
美味すぎる。
「ふうう~~ぐううう~~」
「やべ寝てた」
座席の硬さと電車の暖房がいい塩梅過ぎる。
だから眠りこけるのは仕方ないと思う。
数日前も思ったが電車内の暖房と振動は眠るのに適しすぎてる。
「だけど眠ったら不味い気がするんだよね~~あれは気のせいだったかもしれんが」
家以外の場所で寝たら不味い気がする。
多分。
数日前の事が有るからな。
念のために一応アレから準備しといた物がある。
「ふむ有るよな」
鞄の中を確認する。
ステンレスナイフとライター。
それに水道水の入ったペットボトル。
カロリーメイト数本常備してます。
後は常備薬を少しずつピルケースに入れといたな。
うん。
「もしも長期間向こうに滞在にでもなったら、カルキの入って無い自然水は腐りやすく危険だからな」
もう少し他にも用意して持ち歩いても良いがな~~。
対策を取っても何事もなく無駄に終わるかも知れない。
だけど数日前の事が頭から離れない。
アレは。
あの悪夢は。
というか夢と判断するにはあの出来事はリアルすぎる。
下手すれば本物を凌いでいる悪夢だ。
現実みたいな夢。
「そして多分あれは悪夢ではなくリアルだ」
そう。
「リアルで異界に僕は行ったんだ」
今回も行く羽目になったらヤバイ。
ガチでヤバい気がする。
多分。
ただの勘だが。
う……ん……。
「す~~す~~」
まあ~~結局、努力虚しく意識が暗転して寝てしまったが……。
「次は〇〇駅~~」
「うん?」
あれ?
気が付いたら朝だった。
時間にして朝の七時。
やべええっ!
また駅のベンチで寝過ごしたっ!
うん?
あれ?
「林?」
僕はいつの間にか杉林の中にいた。
あれ?
空を見上げる僕。
青い空だ。
ただしその青空は僅かにしか見えない。
空を覆い隠そうとする林。
視界の隅に映る雄々しく生える黒い幹。
黒い幹の束が複数生えている。
先端は遥か上で霞んでいる。
「これ……杉の木だよな? 凄く太くて長いけど……」
どれだけ高い杉なのかすら分からない巨木。
大きな杉だ。
しかも幹の太さもかなり大きい。
何十年。
何百年。
そんな悠久の時間を過ごした杉に見える。
恐らく。
僕が居るのはそんな杉の林の中だ。
杉。
立派な杉。
正直ここまで大きな杉を見たことが無い。
そんな杉林の中を僕は歩き始めた。
「眠たら見知らぬ場所に居たんだから、多分此処も夢の世界だよな?」
フカフカとした土。
腐葉土が多いみたいだ。
「ふむ」
屈んで足元の土を摘まむ。
う~~ん。
「匂いが凄い」
口元にもっていく土。
少し口に入れて咀嚼。
「ペッ」
うわっ。
「多分、夢じゃなく現実だな此処は」
僕は見渡す。
「ということは此処は異界で良いのかな」
電車で眠ったら異界って何だよ。
うわ~~。
「ともかく何処か安全な所を探すか」
そう考えた時のことだ。
重大な事実に気が付いた。
歩き始めたのは良い。
だが僕は今重大な事実に気が付いた。
命に関わる事だ。
「ご飯食べてない」
うん。
夕飯食べてないからキツイわ。
どっかで飯を食うか。
安全そうな所。
そう考えて歩き出した。
と言う考えが甘かったと言っておこう。
見事なまでに迷いました。
マジで無いわ。
キツイ。
ガチでキツイ。
時間は……昼の十二時。
昼だな。
あ~~キツイ。
雲が綿菓子に見える。
うん?
雲が大きくなってるな?
先程よりも。
まあいいか。
雲を見たら綿菓子を思い出す。
後はメレンゲ。
メレンゲ入りパンケーキ。
雲で連想してたら腹減った。
昼飯食べたい。
非常用のカロリーメイト食うか?
いや、これはいざという最後までとっとこう。




