タイトル未定2025/09/10 22:18
凄く見覚えのある顔です。
ええ。
だって毎日見てる顔ですから。
「お客さん昨日飲み過ぎたんですか?」
「あ~~いや」
僕の顔を覗き込む駅員。
何年もの付き合いだ。
多少だが馴れ馴れしい。
「最終で帰って来たは良いが駅で寝られては困るんですが……」
「いや~~すみません……あ~~」
「どうしたんですか?」
「僕は此処まで、どうやって戻って来たんですかね?」
「は?」
僕の言葉に目を丸くする駅員さん。
意味が分からないと言う顔だ。
「電車で帰って来たんでしょ?」
「あ~~いや~~まあ~~」
「まさかタクシーでワザワザ駅まで?」
怪訝顔をする駅員さん。
「いえ電車で帰宅していたんですが寝過ごしてですね」
「折り返しですか?」
「いや最終の「きさらぎ駅」に事情が有って降りたんですよ」
「はあ?」
「あ~~いや済みません切符は買ってないので料金はお支払いします」
「あ~~いえ」
「どうしました?」
「きさらぎ駅なんて無いですよ」
「え?」
何?
何なの?
は?
「いや確かに僕は「きさらぎ駅」で降りたんです」
「あ~~いや~~何かと勘違いされてるのでは?」
「はい?」
「全国の駅を調べても「きさらぎ駅」は無いのですが……」
「そんな筈は無いのですが確かに……」
「あ~~」
スマホを取り出す駅員さん。
「ほら」
「あれ?」
検索。
きさらぎ駅。
「ない?」
「でしょう?」
「あれ?」
じゃあ~~あれは一体……。
いや~~でも……。
なあ~~。
実際有ったとしてもなあ~~。
とんでもない駅だったからな~~。
「はあ~~」
「納得しました?」
「ええ」
「夢でも見たのでは?」
「そうかも」
「では自分は此れから仕事なので」
「すみません」
「いえいえ」
駅員さんは去って良く。
疲れた。
今は何時だ?
「あ~~今の太陽の高さから恐らく朝だな~~時間は~~」
あれ?
「何か違和感が……」
僕は周囲を見回す。
右手には見慣れた駅前のドラックストア「桜」
大手のドラックストアチェーン店です。
清潔感のある白い壁に店内に多くの採光を考えた大きなドアと窓。
多くの来客を考えた駐車場。
見慣れた光景だ。
その道路を挟んだ向かいには割烹「錦」
つい最近建てられた日本料理店ですね。
庭園などは無い料理店です。
立地的に予算がヤバかったんでしよう。
庭が無いのは。
そして僕の正面。
大きな四階建ての建物。
駅前のバスターミナル兼ビジネスホテル。
僕が幼いころからある建物です。
中は入った事が無いので見たことないけど。
そしてその横にある道路。
僕の正面の道路。
国道に続く道ですね。
その道路の左横に地元の観光案内がある。
地元の名産を取り扱う店も兼ねているが。
その隣は交番ですがね。
話がそれた。
僕の正面の道路。
または地元のアーケード横を通る道だ。
あ~~昔の思い出が思い出される。
地元のアーケードは昔は流行ってたんだがな~~。
今は寂れてます。
大手に押されて。
とはいえだ。
それでも個人の店は未だに幾つか有るけど。
有ったよな?
そして僕の左手に有る店。
駅の左側にある店。
大手のコンビニチェーン店がある。
昔からお世話になってます。
代金の支払いとか煙草を買ったりとか。
そして弁当を忘れた時に重宝します。
まあ~~隣の駅の中にもコンビニが有るから其処でも買えるけど。
普通に忘れるからな。
買うの。
うん。
現実逃避をしていた。
いや違う。
現状の確認か?
いや違う。
「違和感は気の所為か」
本当に?
「気のせいだろう」
まあいいや。
僕は帰って来た。
あの狂った様な世界から。
多分。
「最後は死んだと思ったけど……」
リアルな痛みが有った。
有った……気がした。
「多分夢だな」
うん。
考えたらあんな非常識なものが有るか。
夢。
というか……
「夢おちかよ」
寝てたし。
それはそうと……。
今は何時かな?
僕は腕時計を見る。
丁度……八時。
うん?
再び見た。
「ち・こ・く……」
血の気が引いた。
遅刻確定。
「ぎゃあああああっ! 遅刻だああああああっ!」
悲鳴を上げました。
「お客さん大声を上げないで下さい」
「すみませんんんんんんんんっ!」
その日は会社で怒られたのは言うまでもない。
泣きたくなった。