第二十二話 幻想家族 実母は魔法少女(吐血) 2
「はあああああああっ!」
……。
幻覚だ。
これは幻覚ですね。
「マジカルタカコ奥義! マジカル~~撲殺っ!」
「色々ツッコミどころ多すぎて何も言えねえ~~」
多分母にツッコミした所で、後のトラブルの種にしかならない。
それにあれが現実の僕の母とは思えない。
パンパン。
「マジカルタカコオオオオオオオオッ!」
華麗なステップ踏み宙を舞う母!
「シャイニングスタアアアアッ!」
母が片目でウィンクをしたら何故か金色の星が周囲に飛び散る!
ズガアアアアアアンッ!
ドコンンンンンッ!
見た目だけはファンシーな金色の星達は雪だるま達に直撃すると爆散。
「ぎゃあああああっ!」
「ぐああああっ!」
「だああっ!」
雪だるま達の悲鳴が響く。
断末魔の悲鳴だ。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
というか……。
絵面が酷い。
えげつない。
やはりあれが僕の母親と思いたくない。
ましてや魔法少女だとは。
普段は老婆の魔法少女って何?
「あっ! おーーい」
僕を呼び止める声がする。
「マー君んんんっ!」
聞こえるが聞こえないふり。
うん。
マー君。
暁真央。
それが僕の名前だ。
何処にでも居る普通の中年。
最近その前提が非日常的な事が続き崩れつつあるんだが。
ズドオオオオオオオオンッ!
「キング雪だるまああああああああああっ!」
何か雪だるまの声がするね。
「おや?」
何かが破壊される音がした。
巨大な何かが。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ!
「あれ?」
上空から聞こえた。
爆風が僕の体を叩く。
暴風。
言葉にすれば、まさしくそう呼ぶの正しいんだろう。
この風の暴力性なら。
問題は何故この爆風からの爆風が起きたかだ。
話は簡単だ。
異形の巨人の出現の所為だ。
あの巨人がビルを破壊したからだ。
僕が見上げる程の巨体から放たれれた腕力だけで。
その恐ろしいまでの破壊力。
その巨大の体の内包する力は見かけ倒しではないらしい。
巨人の圧倒的な腕力で硝子をまき散らしながら爆散破壊される高層ビル。
遠方で倒壊するビルの凄まじい地響きが僕の体を揺らす。
倒壊したビルは地面でバウンドした後に僕目掛けて飛んできた!
押しつぶされる!
そう思った時の事だった。
「はあ?」
僕は間抜けな声しか出せなかった。
これが僕の人生の最後の言葉かと思うと後悔する
筈だった。
「「「「「雪だるまあああっ!」」」」」
倒壊したビルが急速に砕ける。
何故か。
粉砕されたビルが落ちてくる。
小さい瓦礫を頭にぶつけただけで即死する。
そんな状況に顔を青ざめた時の事だ。
異変に気が付いたのは。
上空数百メートルの瓦礫の破片が行き成り変化した。
無数の雪だるまの人形に。
最初は無数の雪だるまの人形だと思っていた。
だが違う。
地面に落ちてきた雪だるまの人形を見ると理解した。
明らかに違うと分った。
ただの人形ではないと。
巨人と同じ存在だと理解した。
小さい雪だるまが次々と建物を破壊しているからだ。
可愛らしい手で鉄筋コンクリを抉り硝子を粉砕。
粉砕した物体をまき散らすその姿は悪魔としか言えない。
「此れは……」
其れは恐ろしい光景だった。




