第二十一話 幻想家族 実母は魔法少女(吐血) 1
え?
あれ?
「いくよっ! タカコッ!」
「ええっ! タマ」
というか母と猫が喋っている!
我が家の飼い猫が人語で喋っている!
え?
マジ?
その衝撃的な光景に僕は呆然とする。
だが唖然とするのはまだ早かったようだ。
「光よ我に力をっ!」
屈んで力を籠め母は空に向かって胸を張る。
「マジカルタカコオオオオオオオオオオっ!」
グン。
天からの無数の光が空を覆い尽くす!
ブワアアアアアッ!
その膨大な光の奔流が母に流れ集う。
キュンキュン。
膨大な光の中で老いた母のシルエットが変化!
髪は白髪から艶やかな黒に。
皮膚の皺は無くなっていく。
弛んだ目尻の皺はピンと張り眼力を増す。
猫背だった背骨はまっすぐに伸び。
同時に手足の関節もピン伸ばされ母は若さを取り戻す!
まるで十代前半の少女のように!
「はあああああああっ!」
年寄臭い着崩した母の地味な服も変化完了!
フリルの付いた袖。
大きな宝石を生地に付けたブローチ。
それに負けない大きなリボンを中央に付けた勝負服!
沢山のフリルが裾に散りばめられたスカート。
目立つリボン付きの靴先。
「はあああああああっ!」
其処にはもう見慣れた老婆はいなかった。
空中にそびえ立つのは十代前半の派手な装束の少女!
そう。
見るからにこれは魔法少女だ!
しかも日曜朝の定番系の!
その定番系の始祖と謳われる元祖魔法少女!
その番組のタイトル名は『魔法少女 マジカルタカコ』!
其の名は我が国では一部の人間にとっては今でも有名である。
なにせ五十年前に流行った特撮物の女性初の主人公名だ。
正確に言えばモデルになった名前をそのままアニメに採用した。
ジャンルは初の魔法少女物。
人々のストレスを具現化させ世界征服を企む秘密組織が存在する近未来。
人の善意の念が動物に変化した使い魔と契約して戦う者がいた。
それがマジカル・タカコだ。
という設定です。
当時魔法少女の原型と言われる魔女っ子シリーズはアニメではなく特撮でしか見られなかった。
石◯森太郎原作漫画「麦っこさん」が当時の最高技術の特撮技術で放送。
魔界から来た魔女が家政婦として人間界に来て魔法の力で活躍する物語だった。
絶大な支持を受け何度も続編が作られ終了。
その流れとして「お米ちゃん」更には「沢庵さん」が放送された。
だが1978年代になると、ロボット系アニメが主軸となり特撮系の魔女っ子シリーズは人気が低迷した。
特撮系魔女っ子シリーズの衰退を打破すべく、帝都チャンネルが社運を賭けアニメとしてリスタートした新たな流れがあった。
その際魔女っ子シリーズではなく魔法少女シリーズと変更。
其れは視聴率五十%を超える国民的人気作品になった。
以降十年掛けて放送され続けた人気作品である。
放送終了した後も熱心なファンが居たというからその人気は本物だ。
続編を望むファンの声を聴き何度も続編が作られたらしい。
其のうち主人公が交代した続編も作られるようになっとか。
魔法少女物。
仮面を被ったヒーロー物。
戦隊物。
今では日曜の定番番組である。
その初代アニメ魔法少女が居ます。
僕の目の前で母が変身して!
うん。
見なかった事にするか。




