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第十七話 ドックフード


 あ~~。

僕のお腹は空いたままだ。



「お腹空いた……」

「良い加減どれか食えばいいのに」

「いや、団二郎」

「何だ?」

「人間にはね。尊厳と言う捨てられない大事な物が有るんですよ」

「尊厳とやらで腹が膨れるのか?」


 この狸、痛いことろを突いてきやがった。


「あ~~」


 遠い目をする僕を見つけ続ける団二郎。



「ヤバイ、お腹空き過ぎてもう限界」

「流石に何か食わないとヤバいぞ?お前」

「何で?」

「餓鬼の様な顔になっとる」


 え~~そうなのか?


「仕方ない」

「うん?」

「団二郎、覚悟を決めた。ドックフードを僕にくれ」

「良いぞ」



 そうして手渡されたドックフード。

 改めてみるとマジで食えそうもない。

 人間の食い物ではない。


 見た目だけは良い出来損ないの焼き菓子にしか見えない。


「……」


 ぷーんと独特の匂いがする。


「う……」


 ボリボリ。




 ボソボソして味が無い。

 うん。

 予想はしていたが人間が好む味ではないな。



 不味い。


 不味いけど、自分から頂いたものを素直に口に出すべきではない。


「美味しいね~~」

「癖になる」

「こんな美味しい物を人間は作ってるのか~~」


 目の前で美味しそうに食べてる狸達を見たら。

 どうせ買うなら僕にも抵抗なく食べれる煮干しにすべきだった。



 でもなあ~~値段がな~~。



 高くつくし



 まあいいや。

 ねよう。


「団二郎、寝るぞ~~」

「おお~~」



 モゾモゾと僕にくっつく。

 


「毛布代わりになってやる」

「良いのか?」

「ドックフードをくれたお礼だ」



 プイと顔を逸らす団二郎。


「俺も俺も」

「寒いからな~~今夜」

「私も」


 あっという間に狸の布団になった。

 モフモフで良いな。



 翌朝。




 チュンチョン。


 パタパタ。



 雀が鳴きながら空を飛んでいく。

 その鳴き声で僕は目を覚ました。



「う~~」


 寒い。

 ガチで寒い。

 


 咳が出そうになる。


 やはり野宿は風を遮る物が無いとキツイ。

 ホームレスが段ボールを家に使う理由が分かりました。


「でもまあ~~狸達がいてくれて良かった」


 天然の布団。

 そう言いたいほど暖が取れました。

 露出してる部分は寒いままだけど。


 でも凍えて風邪に成るほどではない。


「う……」

「う~~ん」

「眠い」


 

 近くで寝ていた狸が目を覚ます。

 ブルブルと首を振りクシャミをする。


「冷えたね」

「寒いね」

「う~~~」


 言葉にしてはいるけど、大して寒くなさそうだ。


 自前の毛皮のお陰なんだろう。


 いいなあ~~。



「朝ご飯食べるか?」

「いいね」

「食べよ食べよ」

 

 

 狸達は残飯を食べ始める。

 

「うまうま~~」

「う~~ん」



 美味しそうに食べる狸達。



「お前は食べないのか?」

「残飯は流石に……」


 団二郎の言葉に苦笑いをする。


 絶対に食いたくね~~。


「なら余りのドックフード食うか?」

「うん」


 受けとったドックフードをガリガリと食う僕。


「う~~ん」


 まあいい。


 今度こそ家に帰ろう。


 僕は狸に断りをいれ街に向かう。

 道は無明が教えてくれた。

 それだけでなく同行してくれる事になった。



 そして僕達は一緒に街へ歩み始めた。

 

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