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第十六話 残飯


 それはそれとして……。


「腹が減りすぎて眠れん!」


 お腹が空いたな。

 いやガチで。


「ならアレでも食うか?」

「アレ?」


 僕は無明の言葉に困惑した。

 食い物は無いんじゃねぇの?


「流石に狸達が町から持ち帰ってきた残飯を食すのは嫌なんだが?」

「贅沢な」


 何故無明に呆れられた。


「いやいやそれが普通だろう? ゴミバケツなんかに捨てていた物を食えるわけないだろう?」

「まあ~~確かに一般家庭から出た残飯はお世辞にも食えたものではない」


 僕の言葉にしっかりと頷く無明。


「俺達狸は問題なく食えるが?」

「「……」」


 団二郎の言葉に返す言葉がなく沈黙する僕ら二人。


「団二郎」

「何だ? 無明」

「人間って奴は基本的には異臭のする食い物は食えないもんなんだ」

「そうなのか?」

「そうなのだ」

「そうか」

「そうなんだよ」

「人間って奴は損な習性背負っているなぁ」


 キョトンとする団二郎。

 習性ではない。

 習性ではないんだ。

 本能なんだ。

 生存本能なんだ。


 これだから雑食性の動物は。


「あんな美味しそうな匂いなのに」

 

 これだから野生動物は……。

 羨ましい。


「残飯では無いが此れなら食えるだろう?」

「何だ?」

「ドックフード」

「マテ」


 昼間僕が町で買ってきた代物を出してきた。

 つまりそのドックフード。


「どうした?」

「あ~~僕にドックフードを食うかって?」

「そうだが?」



 コイツ冗談を言って無い。

 ガチだ。

 ガチの目だ。


「いや……」

「どうした? これなら人間でも食えるんだろう?」

「人として……それを食べるのはどうかと……」

「そうなのか?」


 だが。

 本当にお腹空いた。

 何か食いたい。

 何か。


「あ~~」


 ヤバイ。


「やっぱりお腹空いた」

「別に食いたくないなら無理しなくても良いんだぞ?」

「いや」

「言っとくがドックフードを侮るな」

「ドックフード……いや別に侮っては……」

「ドックフードの趣味期限は未開封なら一年。開封しても一か月は持つ!」

「あの……」

「そして様々な食品をベースにしてるので栄養が偏らず携帯食としても最適だ!」

「まて」

「欠点はドックフードの一部は人間には食べられないという事位かな」


 いや。

 そこまで注意して食いたくないんだが。


「これは人間でも食えるタイプの奴だから安心だぞ」

「別に其処まで聞いて無いわ」


 お腹空いた……。


「なら仕方ない」

「何か他にも有るの?」

「有る」

「え……本当に有るの?」


 なら最初から出してくれればいいのに。


「これは、とっておきだ」

「無明まさか……」


 無明の言葉に何かを察する団二郎。


「そうだ団二郎、そのまさかだ」

「ええええっ! ぼくはアレを楽しみにしてたのにっ!」

「仕方ないだろう。此奴がアレも此れも嫌だと言うし」


 やめてもらえません?

 残飯やドックフード食べれないのを僕のせいにするの。

 でもまあ~~食えると断言するれが何かは気になる。

 しかもとっておき。


「これなら食えるだろう」


 そういって無明がバケツに入れてた物を持ってくる。


「料亭の残飯」

「残飯か~~い」


 結局それかい。


「残飯だが贅沢だ」

「残飯に贅沢もへったくれも無いんだが……」

「料亭のゴミバケツに入っていた、真ん中の部分だけ抜き出して持ってきました」

「ねえ!それ端だろうが真ん中だろうが同じ残飯だよね? やっぱりその考えおかしいよね?」

「異臭がしない真ん中の部分、物凄く贅沢な部分だ」

「贅沢の基準がおかしい」


 残飯なのに贅沢とは此れ如何に。



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