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第十五話 焚火


「熱っ!」


 手に持つライターの金属部分が熱くなったので慌てて指を離す。

 うう~~。

 熱い。

 火傷は~~してないけど指先がジンジンする。



「むう」


 再挑戦して金属が擦れる音と共に再びライターに火を着ける。


 木の葉にライターの火を近づけ燃やして小さな火種にする。


 ボッ。


 点火に成功した。


 木の葉に火が灯り燃え始める。

 直ぐにその火種を小枝に移そうと頑張る。

 小さい枝に火種が移り、今度はそれで大きめの枝を炙る。

 これで大きな火種になればいいんだけど。



「あれ?」


 だけどすぐ消えてしまった。


 もう一度挑戦。


 再度、ライター金属ヤスリを擦り火を着ける。


 そのまま葉っぱに前回と同じように火をつける。


 ボッ。


 点いた。


 前回同様葉っぱに火がついた。

 直ぐに小さな枝に火を移そうと頑張る。

 小さい枝の火種から大きめの枝を炙る。

 これで火種が移れば焚き火の元として成功なんだけど。



「あれ?」


 だけどやっぱりすぐに消えた。



 というか大きめめの枝に移す段階で火種は直ぐに消える。

 マジか。


 何か昔見た西部劇では簡単にこの方法で焚き火まで持っていっていたけど……。

 同じように木の葉に点けて小さな木の枝を燃やして……。



 無理。何度頑張っても無理。


 意外に僕には難しい。


「諦めよう」

「諦めるのはやっ!」


 合いの手のように団二郎のツッコミが入る。


「今度野宿の仕方とかネットで調べてみよう」

「お前がそれで良いなら良いんだけど」


 団二郎が僕以上に疲れた声を出す。

 はて?



「それはそうと……腹減った」


 何かないかな~~。

 バックを漁る。


 そういえばカロリーメイト狸達にあげたっけ……。


「どうした?」

「お腹空いたから何かないかなーと」

「町に行った時に夕飯でも買っとけば良かったのに」

「怪しげな町での食材など口に出来るか」

「美味いんだがな」

「味では無く、さっき全貌を知ったけど、あの世の食材なら特に嫌なの」



 さっきまでは『怪しげな街』だったけど、『あの世に有る町』と分かった以上、尚更の恐ろしくて口に入れられるか!


「何だ、黄泉戸喫 (よもつへぐい)とでも思ってたのか?」


 黄泉戸喫 (よもつへぐい)。


「黄泉戸喫を食すという事は「あの世のものを食べると、この世に戻れなくなる」という事を意味する。

 たとえ生きたままあの世に招聘されても、黄泉の食材を口にすると黄泉の国の住人にされるらしい。


『お前、本当に博識だな、それで尚更あの町の物を食べたくなくなったのか?』

「また今回も口に出てたのかい」

『出てたぞ』

「出てたんかい」


 またかよ。


『それで黄泉の物を食ったら黄泉の国の住人なると思ったのか?』

「ええ」


 霊界ラジオの言葉に頷く僕。


「妖怪は別に黄泉戸喫 (よもつへぐい)を』食っても影響はないぞ」

「影響ないの?」


 無明の言葉に耳を傾ける僕。


「妖怪は元から、あの世と現世を行き来できる存在だから影響はないぞ」

「そうなんだ」


 無明の言葉に感心する。


「あの世の人間と妖怪では味覚が違うんで不味いが」

「不味いんかい~~」


 意味ないな~~。


「まあ~~町の食材は現世から仕入れた妖怪や縁のある人間の為の物が多いから大丈夫だ」

「それなら結構な量になるのでは?」

「現世で契約してる農家さんとか居るから大丈夫だ」

「仕入れのための代金はどうしてるの?」

「国からの補助が出てるから大丈夫だ」

「国はあの世の存在を知ってるのか~~~」

「それはそうだろう、そうでなければ食料目当てに妖怪が現世になだれ込んでしまうから」

「うわ~~」

「昔の百鬼夜行の一部はそれだ」



 マジかい。

 僕は無明の言葉に愕然とした。





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『本当に博識だな、それであの町の物を食べたくなかったのか』 >「また今回も口に出てたのは良いとして、そうですと答えます」 すんません。ここの表現に拘わられておられていいるようですが、もしかして私だけ…
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