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第十二話 極卒のバイト



「いや~~あの時は、いきなり襲い掛かってスンマセンでしたね」

「いえ……」


 あんな惨殺事件なんて無かった事のように、にこやかに僕に微笑む『ラジオを持った少年』。


「何か僕に言いたいことでも?」

「……」


 そこでメンチ切るなや。

 僕は顔を引きつらせる。

 とても眼前に居る少年が『コトリバコを造っていた村人達』を虐殺していったとは思えない。


「そうかい?何も僕にないなら良いんだが」

『お前が普通に威嚇してるようにしか見えんからな』

「えっ!? そう見えるの?」


 ラジオからの声に驚く少年。


『傍目からは、ヤンキーがオッサン狩りでカツアゲしてる構図に見えるぞ』

「マジで?」

『マジ』

「あ~~すみません。何か無意識に僕が威嚇してたみたいですね」


 頭を下げる少年。

 

「あ~~いや……」

「ぼくの名前は無明です。元人間なんですが『獄の極卒代行』の仕事をやってます」

「極卒?」


 何か知らない恐ろしいワードが出たんだが。

 ただその恐ろしい響きから眼前の少年が、ガチでヤバイ背景の人物だという事だけは分かる。


「それでコイツが僕と同じ元人間で、今は霊界ラジオに憑依させられた、幼馴染で相棒のミーちゃんです」

『よろしく』


 ラジオから人の声が聞こえる。


「霊界ラジオ? あのトーマス・エジソンの最後の発明の?」

「知ってるんですか?」

「まあ~~」



 トーマス・エジソン。




 世界中で知らぬものは居ない傑出した天才発明家だ。

 生涯におよそ1,300もの発明と特許出願と技術革新を行った人物でもある。

 たとえば有名なものだけでも蓄音器、白熱電球、活動写真がある。

 

 そしてエジソンは『天才』以外にも様々な異名を持つ。

 一般的にはその偉大さから「発明王」とだけ知られているが。

 研究所が置かれたニュージャージー州メンロパークにちなんで『メンロパークの魔術師』とも呼ばれていた。

 メンロパークは、今ではエジソンと改名している。

 リュミエール兄弟と並んで「映画の父」とも言われている。

 このほか、自らの発明の権利を守るため訴訟を厭わなかったことから「訴訟王」の異名も持つ。


 エジソンは「努力の人」「非常な努力家」「不屈の人」などとして知られている。

 


 電話、蓄音機、白熱電球


トーマス・エジソン(1878年)


1877年に蓄音機の実用化(商品化)で名声を得た。

ニュージャージー州にメンロパーク研究室を設立。

 

 研究所では電話、蓄音器、電気鉄道、鉱石分離装置、電灯照明などを商品化。

 中でも注力したのは白熱電球である。

 数多い先行の白熱電球の芯に竹を利用することで実用的な稼働時間まで改良した。



 晩年


 鉱山経営などにも手を出すが失敗。

 高齢となって会社経営からも身を引く。

 だが、研究所に籠もると、死者との交信の実験(霊界との通信機の研究)を始める。

 其の際黒魔術等研究にも手を出す。

 1914年12月に研究所が火事で全焼して約200万ドルの損害を被った。

 だが臆せず、まるで何かに取り憑かれたように、その後も死者との交信について関心を持ち続け研究を続けた。


1930年11月18日、死者との交信が出来る『霊界ラジオ』完成。

1931年10月18日、ニュージャージー州ウェストオレンジの自宅で死去(満84歳没)。

1868年:電気投票記録機

1869年:株式相場表示機

1877年:電話機・蓄音機[E 4]

1879年:電球

1880年:発電機

1888年:改良型蓄音機

1891年:のぞき眼鏡式映写機キネトスコープ

1897年:改良映写機ヴァイタスコープ

1910年:トースター

1930年:『霊界ラジオ』



 だが、死去する前に完成したとされる霊界ラジオは忽然と姿を消した。

 その後の行方は誰も知らない。


 其の筈だった。


 そう、其の筈だったはずだ。


「よく来歴を知ってますね」

「あれ? 声に出てた?」

「まあ」

「僕の相棒はオリジナルの『霊界ラジオ』の複製品の一つです」

「複製したという事は他にも数が?」

「ええ……沢山有ります。大抵は悪霊と繋がり現世に悪さしてるんですよ」

「それヤバくないですか?」

「ヤバいです。其れで相棒は見つけては、回収するか破壊していったんですよ」

「へえ~~」

「その過程で、ある都市伝説に巻き込まれ、偶然ぼくと再会する流れになりまして」

「そこから愛の逃避行?」

「そうそう!」



 僕の言葉にノリよく相槌を打つ少年。


『それは違うわ』


 ラジオの相棒さんが冷静に否定する。


「まあ~~実際は、その都市伝説に二人ともヤラレかけて、危機一髪の所で彼女と僕が契約して撃退出来たんですが。」

『そのせいで無明は「人」から「鬼」に変貌しまったんだ』

「まあ、それは後悔していないけど、妖怪になったら今度は学業ではなく仕事しないと生きていけないんで」

『生活費は掛かるからな。妖怪であろうとも』


 妖怪の世界も世知辛い。


「それで僕達は地獄でバイトに応募して極卒をする事になりました」



 地獄ってバイトできるんだ。


「無明殿~~この熊本当に食べて良いの~~」

「おお~~血を抜いて皮を剥いで塩を大量にまぶした物だから塩分いには気をつけろよ」

「ガッテンですっ!」


 眼前の少年が持っていた物。

 どうやら熊を仕留めて塩漬けにしたものらしい。

 狸達の土産に持ってきた獲物らしい。


 これを素手で仕留めたとか。



 良く生きてたな僕。






 それで誰が君の御兄さんで?


 あ。


 君かい。


 え?



 あ~~君かあ~~。

 以前有った狸の……。



 あ~~はいはい。

 報酬?



 では大きいドックフード一袋では?

 少ない?


 自分が持ってこれる量は此れだけです。

 流石に何往復もしたくないんですが。


 体力的にきついので。


 あ~~。


 君ら運べない?

 人間に化けて。


 出来る奴がいない。


 あ……はい。



 なら根性で運んでほしい?


 分かりました。

 だから絶望に満ちた目で見るのはヤメテ。


 運べばいいんだろう。

 運べば。


 ここは道が無いから車が無いし。

 人力で運ぶしかないんだけど。


 なら三袋で良い?

 それで当分は凌げる・


 なら良いですが……。

 あ~~でも土地勘が無いので往復する度に案内が要りますが。


 問題ない?


 あ、はい。


 では取引成功です。


 と言う訳で僕は町まで案内してもらった。

 


 そこで遭遇した街の住人にドックフードを扱っている店を教えて貰う。

 そのままドックフードを買い案内してくれた狸の元に帰る。

 


 え?


 約束を反故しようと何故考えなかったって? 

 いや~~。


 化け狸に二度会ってますよね。

 うん。


 二度ある事は三度あると言いますからね。

 次にまた同じことが有ったら助けてもらえないですよね。

 あ。


 はい。


 信用すると。

 はい。



 そうして僕は往復二時間の距離を三回繰り返した。

 道なき道ってキツイわ。


 おかげで最後の報酬を渡した時は深夜でした。


 というか……僕すげえ~~。


 連続六時間歩いてるのに全然疲れてない。



 あ、はい。


 妖怪なら当然。

 妖怪すげえ。




 それはそうと泊まるとこどうしよ。

 深夜だしな~~。

 場所は知らんし。

 

 ビジネスホテルは受付が無理だし。

 民宿もな~~。


 え?


 泊まっていけ?


 いや狸の巣穴は流石に……。


 熊に襲われたくなかったらって……。

 居るんかい~~。



 泊まらせて頂きます。


 というわけで狸に泊めてもらいました。

 いや字で書くと変だ。

 タダの妄想にしか聞こえん。


 というかそうとしか言えんし。


 狸の所に泊めてもらった。

 というのは正確ではない。

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