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第十二話 殺人鬼


「それはそうと」

「何だ?」

「所で、御兄さんは今何方にいらっしゃるので?」

「ここで少し待てば来る」

「はい」

「……」


 何で僕を睨む。


「あのう~~」

「俺に話しかけんな」

「分かりました……」


 剣呑な目で僕を睨む。

 ヤバイ。

 ヤバイ。

 眼力に込められているのは殺気だな。


「あの」

「あん?」

  


 怖いいいいいいい。


 目が座ってる。

 警戒心バリバリ。


 全然此方を信用してない。

 これ下手に刺激すれば互いに殺し合いになる。


 何でこうなった?

 あ。

 僕が狸汁とか言ったから。

 不味い。

 これはマジでヤバイ。


「あのう~~狸汁の発言はすみませんでした」

「いや、それは別にどうでも良い」

「はい?」

「別に狸汁の件で怒っていない」

「え?」

「本性が妖怪の癖に、俺に人間と偽ったからムカついていただけだ」

「いや僕は本当にただの人間で……」

「先祖返りならばそれは人間ではなく妖怪だ」

「いや……」

「あん?」

「あ、はい」

「なら、この話はもう良いな?」

「もう、妖怪でも人でも良いです……」


 


 目が怖い。


 いやガチで。



「妖怪の癖に人間を名乗るなんてお前には誇りが無いのか?」

「……」


 え~~と。


「妖怪である事を恥じるんじゃねえっ!」

「団二郎兄さん」

「何だ桜 ?」

「此の人、今日初めて自分が妖怪だという事実を知ったんですが」

「マジで?」

「ええ、マジです」

「まあ~~それなら仕方ないか」


 良いんだ。


 因みに狸の女の子の名前が分かりました。

 桜ちゃんだそうです。


 因みに他のオスの狸の中には軒下一郎とか居ました。

 メスは梅とかも。


 狸の名前は独特だな。


 オスは適当に、メスはキッチリつけられてる。


「痛いよ~~痛いよ~~」

「股間が! 股間が!」

「陰嚢が破裂しそうだ!」

 

 暫く経ったら、そう叫びながら数匹の狸が此方に向かって来た。

 股間を抑えながら。


「何で股間を抑えてるんだ ?」


 しかも全員。


「化け狸伝統の最強の武器のせいだ」

「化け狸伝統の最強の武器?」

「これ以上は聞くな」

「あ、はい」


 目が怖い。

 団二郎の目が怖い。


「それであの中の誰が君の御兄さんなので?」

「あそこの……」


 そう言いかけた時の事だ。

 そこに一人の少年が居た。


 つい最近見たばかりの少年が。

 もっとも会いたくない相手が。


 相手は僕に気が付いたのかニャリと笑う。


「よう、また会ったな」


 背筋が凍った。


 そこへ現れる『ラジオと何かの塊』を持った少年。


 漆黒で絹のように細い髪。

 目は一重。

 黒目と白目部分がハッキリわかれミステリアスを演出する美しさ。

 鼻は平均より低いと思う。

 あまり痩せすぎず頬の肉がついていて丸顔。

 黄色みがかった肌の色と顔立ちはモンゴロイド系だろうが、どこか異質な感じだ。

 足や手のパーツも小さいという典型的な日本人の容貌なのにだ。

 不自然なまでに。


 まるで誰かに作られたかのような日本人の容貌を持った少年。



 その少年は僕を見ながら口を開く。

 筈だった。


「ぎゃああああああああっ! あの時の殺人鬼っ!」

「おい」

「お助けええええっ!」


 ズダダダダダダダダダダッ!


 

 ダッシュで逃亡した。

 それはもう。

 自分史上過去最速の速度を出した。

 恐らくオリンピックの選手にも引けを取らないレベルだったかも。


「待たんかいいいいいいっ!」

「いやああああっ! まだ死にたくないいいいいっ!」



 こうして僕と少年の壮絶な鬼ごっこが始まった。


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