第九話 令和の狸 弐
そう思ってたら巣穴からフラフラと出てきた狸が倒れた。
力尽きたかんじだった。
弱弱しい。
ヴイイ~~ヴイイ。
それでも僕を威嚇してくる。
でもやはり弱弱しい。
飢えで死にかけてるんだろう。
ヴイイ~~ヴイイ。
ヴイイ~~ヴイイ。
ヴイイ~~ヴイイ。
その後ろから更に数匹の狸が出てきて、外に出た弱々しい狸を巣に戻そうとする。
だけどその狸達も倒れる。
僕から仲間を守ろうとしたんだろう。
やはり飢えだな。
皆痩せてるし。
それでも何とか這い出てきた狸達は、フラフラしながらも、僕を威嚇していた仲間を巣に戻そうと努力する。
「人間……」
「狸が話してる……これは幻聴か?」
弱々しく僕を威嚇してきた狐はメスっぽいな。
声で分かる。
「聞いているのか? 人間よ?」
「どうやら幻聴では無いな」
「話を聞いてるのかと聞いている! 人間っ!」
「やはりこの狸が話してるのか~~」
「いい加減にしろ! 人間っ!」
「はいはい」
「仲間達には私が指一本触れさせないっ! すぐに此処から出ていけっ!」
「あ~~」
「さもないと貴様を殺すっ!」
「あ~~はいはい」
「私は本気だぞっ!」
「そんなガリガリに痩せた体で殺すとか言われても……」
う~~ん。
多分一時しのぎにしかならないと思うけど……。
「何だ?」
僕はカロリーメイトの包装を剥ぎ中身を狸の前に置いた。
「あげる」
「「「「「は?」」」」」
狸達は目をキョトンとする。
僕の気のせいで無ければ。
「食べていいよ」
「人間の施しなど必用ないわっ!』
僕の言葉に激高する狸のメス。
「「「「いただきますううううううっ!」」」」
「お前たちいいいいいいっ!」
仲間達の突然の裏切りに驚愕の声を上げるメス狸。
ヴイイ~~ヴイイ。
ヴイイ~~ヴイイ。
ヴイイ~~ヴイイ。
ヴイイ~~ヴイイ。
メス狸の抗議をものともせずにガツガツと食べ始める狸達。
「美味いいいいいっ!」
「甘くて美味しいわっ!」
「滋養が有るっ!」
「量が少ないよ~~」
その様子に唖然とするメス狸。
はっとする。
「私にも食わせろっ!」
突如、餌の奪い合いに参戦するメス狸。
量は少ないけど今だけは凌げなら、それはそれでマシだろう。
自分の分を全て与える僕。
さて。
人家を探すか。
そう思った時の事だ。
はい?
「「「「「待ってください」」」」」
「はい?」
食事を終えた狸達に引き留められた。
はい?
「第一回家族会議だ」
「「「「おう」」」」
行き成り狸達全員が喋り始めた。
「人間さん。お礼にこれを受け取って下さい!」
「いやいや」
干からびたミミズに団栗。
それ君らの最後の非常食だろう。
物欲しそうな目で他の仲間が見てるよ?
「では飲み物でも~~」
「近くの川の場所は~~」
あ~~
川の水?
ああ、飲料水ね。
いやいや。
「人間は生水をそのまま飲んだらお腹下すのよ」
「そうですか……」
「もてなしてくれる気持ちは嬉しいよ」
うん。
「でも僕は君達と違い人間だからね~~」
「あ~~」
何やら考え込む狸の女の子。
「第二回家族会議っ!」
何か話し込んでるね。
「あ~~」
何?
その微妙な顔は。
「最初は貴方を人間と勘違いしましたが、実は私達とは同類ですね?」
同胞?
え?
僕はただの人間だよ。
え?




