禁断の恋は、自分でなんとかします!!もちろん自己責任で。(2)
車が見えなくなるまで、リアはじっとその方向を見つめていた。
胸の奥で渦巻くのは、乙女の恋心。
けれど、その口元に浮かぶのは悪魔の笑み。
「見つけた……もう離さない。全てはこの時のため……仕込んできたの。ねえ、お兄様。必ず二人の世界を……二人だけの世界を──」
その声は、夜の闇に溶けていった。
夕暮れの道。
檀家まわりを終えた戸祭隼人は、疲れを抱えつつアパートへ帰ろうとしていた。
だが――。
「……なんか、めっちゃ見られてる」
歩くたび、背中に突き刺さる視線。
しかもそれは、じっとりとしたものではなく、熱くて……妙に甘い。
試しに足を止める。
すると背後の足音もピタリと止まった。
「ははぁ……ストーカーか?」
次はダッシュしてみる。
ダッシュ、ピタリと追随。
振り返れば――顔を真っ赤にしてもじもじしているリアだった。
「お、おまえ……昨日の……」
リアは両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、うつむきながら蚊の鳴くような声で言う。
「……あの〜……その……どっかで……お話できな……ませんか?」
まるで告白する乙女のそれ。
あの昨日の「邪心の悪魔」顔はどこへやら。
目の前にいるのは、ただの恋する乙女――いや、それ以上に危険な可愛さを振りまく“全力乙女モード”のリアだった。
喫茶店にて
カラン――
懐かしいドアベルの音とともに、二人は入店した。
こぢんまりとした昔ながらの喫茶店。
カウンターから香るコーヒーの匂い、店内にはカップルや女子グループ、年配の女性、サラリーマンたちが憩いを求めて座っている。
どうやら人気店らしく、席の七割は埋まっていた。
女子たちは写真映えする大きなパフェを取り囲み、きゃっきゃとスマホを構えている。
その中に――地味に目立つ、隼人とリアの二人。
「メニューがお決まりになりましたらお呼びください」
女性店員がお冷とメニューを置き、さっと立ち去った。
隼人は気まずそうにメニューを開き、口を開く。
「で、急にどうしたの?」
リアは頬を赤らめ、両手でストローをいじりながら答える。
「いや……その……会いたくなって……だめでした?……」
上目遣い。
声は震えている。
背後に桜の花びらでも飛んでいそうな雰囲気に、隼人は思わずコーヒーを吹きそうになる。
「いや、だめじゃないけど……そもそも、なんの用事だったの?」
「あっ、そうそう、それ! あの子の誓約を見破ったでしょ? すごいなって……」
「……は? それだけ?」
「ううん、それだけじゃないです」
リアは小さく首を振り、にっこり笑った。
その笑顔は昨日までの“狂気の悪魔”のそれではない。
「どんな人なのかなって……どうしても知りたくて。だから……会いにきちゃいました♡」
……完全に乙女。
リアの視線は隼人に釘付け。
胸の奥で、確信が燃え上がる。
――見つけた。
――もう離さない。
それは、邪心の悪魔が抱く執着ではなく。
一人の少女が、お兄様に恋する“乙女”としての決意だった。
「……お兄様、やっぱり素敵です」
リアはお冷を両手で包みながら、甘く囁いた。
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