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第47話「千尋、“言葉を残すということ”」

千尋は、図書館の静かな閲覧席に座っていた。

 机の上には、ノートPCと制度ノートの編集用資料。

 画面には仮タイトルが並んでいる。


 


 「地域実習2025年度版 制度ノート」


 


 もともと「ちょっとまとめたら終わり」のつもりだった。

 でも、今は違っていた。


 


 灯のカフェ構想。

 葵の「まだ決められない」という素直な言葉。

 自分自身も、制度の意義をゼミで発表したあと、「もっと言葉にしないと」と感じていた。


 


 


 そんな中、役場の担当者からメッセージが届いた。


 


 「制度ノート、村内にも配布する予定ですが、何部刷りましょう?」

 「希望部数、編集側のご意見があれば教えてください」


 


 (村の人も読む……そしたら、“制度の外”の言葉もちゃんと入れなあかんな)


 


 千尋は思った。

 報告書には載らなかった「あの瞬間」を、どう残すか。


 


 


 翌日、千尋は灯’sカフェ予定地に向かった。

 まだ本格オープンはしていないが、掃除と準備の合間なら会えると聞いていた。


 


 


 「いらっしゃーい。コーヒー、淹れよか?」


 


 灯が笑って迎えてくれる。

 縁側に並んで座りながら、カップにコーヒーが注がれていく音が心地よい。


 


 千尋はノートを広げた。


 


 「実はさ、制度ノート、村にも配るんやって。

  そやから、灯ちゃんに一言、最後にコメントもらいたいんよ。

  制度が終わってから、今、何を思ってる?」


 


 


 灯は少し考えてから、ぽつりと話し出した。


 


 「うちは……制度はきっかけやったな、やっぱり。

  でも、“制度のためにやってる”って思ったことは、最後はほぼなかった。

  うちが“やりたい”から、動いてただけやった」


 


 千尋は頷きながら、メモを取る。


 


 「“やりたい”が先にきてたんや」


 


 「うん。制度終わったあとも、灯’sカフェやりたいって思えたんは、

  制度の枠に“自分の言葉”で向き合ったからやと思う。

  “自分のための実習”って言ったら変やけど、そんな気持ちやった」


 


 


 その言葉に千尋は少し胸が熱くなった。

 (やっぱり、“誰かのため”も大事やけど、自分の言葉で動けた人が、こうして残っていくんやな)


 


 


 帰り道、千尋は駅までのバスの中でノートPCを開いた。

 制度ノートの冒頭に、仮で入れていた前書きの文章を少し書き直す。


 


 『制度は終わる。けれど、私たちの時間は続いていく。

   このノートは、制度の報告ではなく、“そこにいた私たち”の言葉を集めたものです。

   制度の先を歩く誰かに、少しでも届きますように。』


 


 (これなら、村の人も読むとき、押し付けがましくなくて、でもちゃんと“気持ち”が伝わるかもしれん)


 


 


 その夜、灯と葵にもチャットを送った。


 


 千尋:「制度ノートの前書き、ちょっと書き直した。

   “そこにいた私たち”っていう言葉、入れたんやけどどう思う?」


 


 灯:「めっちゃええと思う!」

 葵:「それやったら、うちも“まだ決められてない”って堂々と書けそうやわ」


 


 返信を見て、千尋はほっと息をついた。

 (やっぱり、うちは記録をやめたくない。残していきたい)


 


 


 PC画面の下には、次の見出しが見えていた。


 


 「葵のページ」「灯’sカフェ」「千尋あとがき」――。

 あと少し。ちゃんと“私たちの言葉”を、未来に残そう。

この回は、千尋が「制度ノート」を単なる記録から“未来に残す言葉”として意識を変えていく回です。

灯との会話を通じて、「制度の枠」から「自分たちの言葉」への軸足がしっかり移っていきました。


これによって、制度ノートというモチーフに「感情の重さ」が加わり、読者に余韻を残せる土台が整います。

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