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制度で村に送り込まれた女子大生3人、2ヶ月間の実習生活と、それぞれの未来  作者: 巡叶
第二章 この村に、うちらがいない日を作るために
22/51

第21話 “うちらがいない日”が、ちゃんと回るように

 「うちら、村にいない日って、もうすぐ来るんよな」


 


 朝の台所。灯が味噌汁をよそいながら、ぽつりとこぼした。


 


 実習も終盤に差しかかり、3人が水沢村を離れる日も、もうカレンダーの1枚先に見えていた。

 「いない日」の準備が、本格的に始まっていた。


 


 空き家を拠点とした小さな交流スペース、

 週1の「灯’s COFFEE」、

 放課後に来る中学生とのふれあい――


 


 それは、村の中で“ゆるく機能する場”として定着しはじめていた。


 


 「けど、うちらがいなくなったら、この場所、止まるかもしれんよな」

 葵がパンをかじりながら言った。


 


 「だから、ちゃんと“人と仕組み”を渡していかんとあかん」

 千尋はすでにリストを作っていた。


 


 > 【引き継ぎ事項メモ】

 > ・灯’s COFFEE:道具一式・レシピ・豆の仕入れ先

 > ・空き家管理:佐々木さんに鍵預け/開閉チェック表

 > ・放課後利用:中学校の生活指導教諭との連携

 > ・Wi-Fiルーター:役場経由の貸出方式に切替検討

 > ・清掃/備品補充:村の子育てサークルへ依頼調整中


 


 「ガチで会社やん、これ」

 葵が笑うと、灯もふっと口元をゆるめた。


 


 「でもさ……こういうの作ってるとき、うち、なんかちょっとワクワクするんよ」

 「なんで?」


 


 「うちらがいなくなったあと、“うちらが作った何かが動いてる”って想像すると、

  それだけでちょっと泣けそうになるやん」


 


 午後。

 3人は再び空き家拠点に集まり、マニュアル化の作業を始めた。


 


 ラミネートされた手順書、写真つきで貼った「鍵の取り扱い」「お湯の沸かし方」「豆の挽き方」、

 さらには、ノートの最後のページに、ある言葉を追加した。


 


 > 「うちらはここにいた。だから、あなたもここにいてええよ」


 


 その横に、それぞれの名前と日付が並ぶ。

 灯、葵、千尋――三人の、半年間の証明。


 


 数日後。

 佐々木さんが、次の実習生の概要資料を持って現れた。


 


 「来月から、また別のチームが来る予定やけん。うちらの“あと”やな」

 「……誰が来ても、“うちらの続き”になってくれたらええな」

 千尋が小さく呟いた。


 


 「せやけど、強制はしたくない。

  この場所、誰かが“自分の居場所や”って思えたときに、ほんまに意味あると思うんよ」

 灯が言った。


 


 「次に来る子たちが“うちらをなぞる”んやなくて、**“うちらを踏み台にしてくれたら”**うちは嬉しいな」

 葵の声は、少し震えていた。


 


 それは、去る人の覚悟だった。

 去るけど、消えない。

 残るけど、縛らない。


 


 “自分たちがいない日”が、ちゃんと動いている――

 その想像が、何よりのご褒美になる気がしていた。


次回予告(第22話)

村のある家から「手紙」が届く。そこには、ギャルたちが知らなかった村の過去と、

今だからこそ“受け渡される想い”が綴られていた――。

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