第19話 “分岐点”で、うちらが選ぶ道
秋が深まってきた。
収穫祭を終えてから、村の空気が少しだけ変わった気がした。
町内会での集まりや、役場の会議にも顔を出すことが増えた。
けれど、それと同時にギャルたちの中には、**ひとつの大きな“分岐点”**が忍び寄ってきていた。
「…ねぇ、うちら、ほんまにこの村に何を残せるんかな?」
千尋が目の前のカフェブースを見つめながら呟いた。
この数ヶ月、ギャルたちは空き家の再生、地域交流、カフェスタンドの運営を試みてきた。
その活動がうまくいっているようにも見えたし、地元住民からも少しずつ認められてきた。
でも、この村に本当に「何かを残すことができるのか?」
そして、それを「続ける人が現れるのか?」
その答えが、まだ見えなかった。
「残すんじゃなくて、“続ける”ってどうするかが問題やろな」
葵が言った。
「うちらが帰った後、この村に来る実習生たちが、うちらのやり方で続けていける仕組みを作る…」
葵は少し手を広げて、何かを示すように言った。
灯は、静かにうなずいた。
「ただの“お手本”にはしたくない。
“うちらが始めた”からこそ、次に繋がる何かを作りたい」
灯の目は、いつもよりも真剣だった。
その夜、千尋はノートを開いた。
少し冷たい風が窓を揺らす中で、しばらく黙って考えていた。
「この村で本当にやりたかったことって、“何かを継ぐ”ことやったんちゃうかな」
彼女の声が、部屋の中に静かに響いた。
その言葉に、葵が突然顔を上げた。
「継ぐって、どういうこと?」
「“守りたいもの”があるんや」
千尋は続けた。
「自分たちが去った後でも、その場所が機能するように、何かを“引き継ぐ”ことが必要やって思う」
灯は少し黙ってから、ゆっくりと言った。
「うちがやりたかったのは、この村に居場所を作ることやな。
自分たちだけのためにじゃなくて、次の誰かが“ちょっと戻りたくなる場所”にすること」
その言葉に、葵も静かに頷いた。
「つまり、うちらが戻ったとき、すでに他の学生とか地元の人がその場所を使ってるような仕組みを作るってことか」
「うん。それが一番、“意味のある”ものになる」
灯が言った。
その晩、3人はそれぞれの思いを整理し、ノートに書き込んだ。
“戻る場所”を作る。自分たちが一度きりの存在にならないようにするために、
その場所を次の手に渡す仕組みを作り始めること。
翌日、再び役場に出向き、担当の高梨さんと話をした。
「来年以降の実習生たちが、私たちが残した仕組みを活用できるように、何か準備を進めたいんです」
高梨さんは少し驚いた顔をした後、真剣な表情で答えた。
「それは素晴らしい考えですね。でも、続けるには地域の理解も必要ですし、何よりも最初の一歩が肝心です。
そのためには、村の他の人々や、外部の支援を得ることも考えなければなりません」
「それがうちの仕事やな」
灯がにっこりと笑って言った。
「来年の実習生たちには、うちらのやり方を受け継いでもらって、もう一度この村に来たくなるような場所を作っていこう」
千尋の言葉は、決意に満ちていた。
次回予告(第20話)
ついに、実習生たちが動き出す。
“次のギャルたち”が村にやってくる。
そのとき、ギャルたちは何を残し、何を渡していくのか?




