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第18話 “動き続ける仕組み”があれば、人は去っても意味は残る

 


 「うちらで、“村に残すもの”作ろう」


 


 その一言を言ったのは、千尋だった。


 


 合同ゼミから帰った夜。

 鍋の残りをつつきながら、千尋はまっすぐに言った。


 


 「このまま半年過ごして、“楽しかったね”で終わるのもええけど……

  うちら、たぶん、それで満足できへんやろ?」


 


 葵と灯は顔を見合わせて、すぐに頷いた。


 


 「せやな。うちは“また来たくなる場所”にしたいって思ってたけど、

  “また来れる仕組み”作るほうが、もっとええかもしれん」


 


 「仕組みって、例えば?」


 


 千尋は手帳を開いて、メモを見せた。


 


 > ● 空き家の一部を拠点化

 > ● コーヒーやお茶が飲める“週1開放”型カフェ

 > ● Wi-Fiあり。地元の高校生・大学生インターン枠

 > ● 運営マニュアルを簡潔に残す

 > ● 卒業生が“見守り役”として遠隔参加


 


 「これ……もはや“制度外”やん」

 葵が目を丸くする。


 


 「でも、制度って“器”やん? 中に何を入れるかはうちら次第やと思う」


 


 灯は、すこしだけ口元を緩めて言った。


 


 「うちら、その器の使い方、ようやくわかってきたとこやな」


 


 翌日、3人は役場の地域支援員・佐々木さんに相談を持ちかけた。


 


 「“うちらがいなくなった後も動く場所”を作りたいです。

  村の人が自由に出入りできて、ちょっと休めて、学生がまた繋げられるような場所を」


 


 佐々木さんは驚いた顔をしたあと、深く頷いた。


 


 「……正直ね、制度があるから人が来る、じゃなくて。

  “人が動いたから、制度が意味を持つ”って、初めて思ったよ」


 


 「でも、うちらはもうすぐ帰りますし……」

 灯が言う。


 


 「それでも、動き出したものは止まらないよ。

  仕組みに人が宿れば、“人が去っても意味が残る”から」


 


 その日の夕方、3人は再び空き家を訪れた。

 以前、広瀬さんが「壊されたくない」と言っていた家――


 


 千尋は、電話の受話器を握りながら言った。


 


 「一部だけ、活用させてくれませんか。記憶や思い出を傷つけない形で。

  “誰かが訪れたくなる場所”として、未来に繋ぐために」


 


 受話器の向こう、広瀬さんはしばらく黙っていた。

 やがて、優しい声が返ってきた。


 


 「それやったら、ええよ。思い出は、ちゃんと残してくれるんやろ?」


 


 「もちろんです。誰かの“大事”を削って、うちらの“便利”を作ったりせん」


 


 風が吹いた。

 乾いた木の匂いと、どこか懐かしい陽のあたたかさ。

 この村に“動き続ける何か”が、今、静かに芽を出しかけていた。


次回予告(第19話)

空き家の拠点化に向けて、村の中からも協力者が現れる。

だが同時に、「どうせ来年も別の子が来るだけ」と冷ややかな視線も――。

そのとき、灯が静かに言った。「うちらの顔、見て言える?」

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