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第17話 正解じゃないけど、大事なことってあるんよ

 


 「合同ゼミ、明日だってよ」


 


 千尋がスマホを見ながら言った。

 それは、**“他の地域で実習中の学生たちとの合同ゼミ”**という通知だった。

 毎年、実習生同士で集まり、これまでの経験や考えを共有する場。

 今年は水沢村の実習生たちも招待された。


 


 「うちら、何話すん?」

 葵が少し不安げに言う。


 


 灯は静かにうなずいた。

 「話すこと、あるんかな」


 


 「話すことがないんじゃなくて、話さなあかんことがあるんちゃう?」


 


 千尋がノートを開いて、今日の記録を見つめる。

 「うちら、毎日誰かと話して、学びながら動いてる。それだけでもすごいことなんやと思う」


 


 「でも、何話すんやろ?」

 葵がもう一度繰り返す。


 


 その夜、3人は一緒に夕飯を食べながら思案した。

 正解なんてない、今までの実習で学んだことがすぐに出せるわけでもない。


 


 翌日、村の集会所で合同ゼミが始まった。

 たくさんの地域実習生たちが集まり、開かれた場所に机を並べて座った。


 


 講師の先生が挨拶を終えて、実習生一人一人に話す番が回ってきた。

 最初に指名されたのは、名古屋から来た他の実習生の佐藤さん。


 


 「私たちは、農作業の支援や地域の清掃活動をしてきました。

  実際、最初は何も分からずにただ手伝っているだけでした。

  でも、日々の積み重ねで少しずつ変化を感じられるようになりました」

 「素晴らしいですね」

 先生が褒めると、佐藤さんは軽く頷き、次の実習生にバトンを渡した。


 


 次に回ってきたのは、葵。


 


 「あ、あの……えっと、うちらは、村でカフェをやりました。

  最初、SNSで“映える”とかやろうと思ってたんですが、

  結局、どうやって“村の人たち”と繋がるか、っていうことに気づきました」


 


 葵が話しているうちに、少しずつ緊張がほぐれてきた。

 「結局、うちらがやったことって、正解じゃないかもしれません。

  でも、なんか、うちらがここでできたことが、村の人にとっても、ちょっと元気になれた瞬間だったらいいなって思うようになりました」


 


 灯がうなずきながら小さく言った。


 


 「正解じゃなくても、大事なことは伝わるよな。

  うちら、何かを“作った”わけじゃないけど、“手伝った”ことで何かが変わったと思う」


 


 千尋がさらに続けた。


 


 「でも、それが“正解”かは分からんよな。

  正解があると思ってるうちは、結局、どこまで行っても自分の答えを出すことにはならん」


 


 セミナーの後、先生から一言があった。


 


 「素晴らしい発言でした。

  実習で最も大切なのは“現場で感じたこと”です。

  正解なんてありません。ただその“感じたこと”を、どう未来に繋げていくか、そこが一番の学びです」


 


 その言葉に、3人は何も言わずに静かに頷いた。


 


 「正解って、誰かが作ったゴールじゃなくて、

  自分がやりたかったこと、やれることをやることが、実は一番の“答え”かもしれん」


 


 その後、夜に帰宅した3人は、再びテーブルに向かって話をした。

 千尋がノートを開きながら、ふとこう言った。


 


 「うちらがやってきたことは、“正解”じゃないかもしれんけど、

  それは自分たちの答えとして、誰かに伝えていけばいいんやと思う」


 


 葵は、少し顔を赤らめながら言った。

 「うちも、“正解じゃない”って思ってた。でも、“うちら”はここにいたって言いたい」

 灯は静かに微笑んで、言った。


 


 「正解がなければ、間違ってもいない。

  だから、うちらの答えを、ちゃんと次に繋げよう」


次回予告(第18話)

地域起業に向けた新たな挑戦が始まる。

「うちらで、村に残すものを作ろう。自分たちがいなくても動くように」

千尋が発したその言葉は、今度は村人たちにも届くのか?

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