表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/51

第15話 “うちらの成果”って、誰のもんになるんやろ


 翌週、役場の地域連携課に呼ばれた3人は、

 あの高梨さんの前に並べられたA4資料の束を見つめていた。


 


 「いや〜、今年のチーム、出来が良くて助かってますよ」

 高梨さんは笑顔だった。

 「前の年なんか、空き家の写真撮っただけで終わりましたからね。いや、ほんと」


 


 「うちら、そんなに差つけられても困るんですけど……」

 千尋がぼそっと言った。


 


 「でですね、今回のコーヒースタンドの件、来年以降の広報パンフレットに掲載したいんです」

 「え?」


 


 「“若者の感性で地域を元気にした好事例”として。あと、大学の公式アカウントで紹介も」

 「待ってください。それ、うちらに了承なしで進んでる感じですか?」


 


 千尋の声が一段低くなった。


 


 高梨さんは、一瞬言葉に詰まり、それでも笑顔を保って言った。


 


 「いや〜、一応“公的実習”ですし、“地域の資産”として共有できたらなと」

 「成果を“地域の資産”にするって、つまり“うちらの関与なしで勝手に使う”ってことですか?」


 


 少し、空気が張り詰める。


 


 「制度に参加してる時点で、ある程度は共有の前提ではあると思いますが……」

 「“制度の中でやったから自由に使える”って、そういうもんなんですか?」


 


 そのやりとりの間、灯と葵は黙っていた。

 でも、ふたりの目は千尋と同じように、強く、揺れていた。


 


 帰り道。

 千尋は言った。


 


 「うちら、自分たちが頑張ってるって思いたいわけじゃないねん。

  でも、“成果”だけ切り取られて、“制度が優秀だったから”って言われるの、違うと思う」


 


 「うち、SNSでバズったの、ちょっと嬉しかってん。でもそれが“制度のおかげ”って扱いになったら……嫌や」

 葵も呟く。


 


 「制度に乗ってることと、“自分の足で歩いたこと”は別やもんな」

 灯がぽつりとつぶやいた。


 


 その夜、千尋は大学の実習担当にメールを書いた。


 


 > 「広報使用について、一度当事者として立場を明確にしたい。

  制度の枠内であっても、現場の行動は“自主性”によるものです」


 


 そして最後に、こう記した。


 


 > 「来年の学生が同じように悩まなくていいように、整理しておきたいです」


 


 それは怒りではなく、“今この制度の中にいる誰か”としての提案だった。


 


 成果は残していい。

 でも、それが誰の手柄になるのかは、

 せめて一緒に決めさせてほしい。


 


 そう思えるようになったのは、

 きっとこの村で、“誰かと一緒にやってきた”からだった。


次回予告(第16話)

役場と少し距離を置きつつ、3人は「来年のための記録ノート」を作り始める。

ギャルたちが“制度に使われる”のではなく、“制度を使いこなす”側へ変わっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ