第15話 “うちらの成果”って、誰のもんになるんやろ
翌週、役場の地域連携課に呼ばれた3人は、
あの高梨さんの前に並べられたA4資料の束を見つめていた。
「いや〜、今年のチーム、出来が良くて助かってますよ」
高梨さんは笑顔だった。
「前の年なんか、空き家の写真撮っただけで終わりましたからね。いや、ほんと」
「うちら、そんなに差つけられても困るんですけど……」
千尋がぼそっと言った。
「でですね、今回のコーヒースタンドの件、来年以降の広報パンフレットに掲載したいんです」
「え?」
「“若者の感性で地域を元気にした好事例”として。あと、大学の公式アカウントで紹介も」
「待ってください。それ、うちらに了承なしで進んでる感じですか?」
千尋の声が一段低くなった。
高梨さんは、一瞬言葉に詰まり、それでも笑顔を保って言った。
「いや〜、一応“公的実習”ですし、“地域の資産”として共有できたらなと」
「成果を“地域の資産”にするって、つまり“うちらの関与なしで勝手に使う”ってことですか?」
少し、空気が張り詰める。
「制度に参加してる時点で、ある程度は共有の前提ではあると思いますが……」
「“制度の中でやったから自由に使える”って、そういうもんなんですか?」
そのやりとりの間、灯と葵は黙っていた。
でも、ふたりの目は千尋と同じように、強く、揺れていた。
帰り道。
千尋は言った。
「うちら、自分たちが頑張ってるって思いたいわけじゃないねん。
でも、“成果”だけ切り取られて、“制度が優秀だったから”って言われるの、違うと思う」
「うち、SNSでバズったの、ちょっと嬉しかってん。でもそれが“制度のおかげ”って扱いになったら……嫌や」
葵も呟く。
「制度に乗ってることと、“自分の足で歩いたこと”は別やもんな」
灯がぽつりとつぶやいた。
その夜、千尋は大学の実習担当にメールを書いた。
> 「広報使用について、一度当事者として立場を明確にしたい。
制度の枠内であっても、現場の行動は“自主性”によるものです」
そして最後に、こう記した。
> 「来年の学生が同じように悩まなくていいように、整理しておきたいです」
それは怒りではなく、“今この制度の中にいる誰か”としての提案だった。
成果は残していい。
でも、それが誰の手柄になるのかは、
せめて一緒に決めさせてほしい。
そう思えるようになったのは、
きっとこの村で、“誰かと一緒にやってきた”からだった。
次回予告(第16話)
役場と少し距離を置きつつ、3人は「来年のための記録ノート」を作り始める。
ギャルたちが“制度に使われる”のではなく、“制度を使いこなす”側へ変わっていく。




