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第14話 “残す価値”って、自分がいなくなった後にも続くことや

 「空き家、カフェ、交流拠点……それって、誰が残すんやろな」


 


 千尋が言ったのは、翌朝のことだった。

 前日に大学から「起業提案」の話があり、3人の空気はどこか少し変わっていた。


 


 「うちらが残すんちゃう?」

 葵が言う。


 


 「でもな、卒業して戻ったら、誰が継ぐん? ずっとここおるわけやないやん」

 「……たしかに」


 


 灯は、静かに台所の皿を洗っていた。

 その背中に、ふたりの声は届いているのかどうか。


 


 「この村でやったこと、どうやったら“自分らがおらんくなっても続くもの”になるんやろな」

 「それが“価値”ってことかもな」

 千尋は、ノートを閉じた。


 


 午後、3人は収穫祭で好評だったコーヒーの残り豆を持って、公民館に向かった。

 「おかわり欲しい」という声があったらしいと、佐々木さんが教えてくれた。


 


 そこで出会ったのは、前に会った主婦・あゆみさんだった。


 


 「またやってくれるん? 前の美味しかったよ〜。お母さん仲間で話題になってて」

 「うれし〜。じゃあ“試験営業”ってことで今日もやります!」

 葵が笑顔でカウンターを整え始めた。


 


 「でも、うち、いつか帰るんですよ?」

 千尋がぽろっとつぶやくと、あゆみさんはにっこりしてこう返した。


 


 「帰ってええよ。うちら、ずっと“誰かがやってくれるの待ってた”だけやし。

  でも、“こうやってやれるんやな”って知れたら、次は自分でやる人、出てくるかもしれんよ?」


 


 その言葉に、3人は思わず顔を見合わせた。


 


 「誰かがやれるって証明だけでも、残していけるってことやな……」

 灯が、ほとんど呟くように言った。


 


 「うちら、“残る人”じゃなくても、“残る仕組み”は作れるかもしれん」


 


 その日の帰り道。

 3人は村の高台に寄り、遠くの田畑と山を見渡した。


 


 「なあ、将来、ここに戻ってきたいって思ったら……おかしいんかな?」


 


 葵の問いに、千尋が笑った。


 


 「全然おかしくない。

  ただ、“それまでこの村が残っててくれたら”って思う」


 


 「だからうちら、残してくんやな」

 灯の声は、どこか力強かった。


 


 自分たちがいなくなっても残るもの。

 それは、評価じゃなく、収益じゃなく、

 「やれるって、わかった人」が次の誰かになるという循環。


 


 それが、“価値”なんだと少しだけ、わかった気がした。


次回予告(第15話)

役場の動きが変わり始める。

成果を「制度のPRに使いたい」と言い出した地域連携課――“善意の横取り”に、千尋が静かに怒る。



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