ジグルド編 聖騎士レイア(中の下)
間違って刻印の方に投下していたのを今気づいたのでした。 投下とツイッター野予告変更ですね
「……貴族が好きな庶民なんていねぇよ みな態度がでかいからな。
ジグルドは苦笑して、酒をあおった。一息つくと……
「態度がでかい、働かねぇ、偉そうなことばかり言う。そんな連中に、誰が好意持てるってんだ?」
「でも……ホントはそんな人ばかりじゃないってことは?」
少女は少し眉を寄せた。
「いや、貴族なんてどいつもこいつも同じ穴の狢だ」
煽った酒が効いていたこともあって言い放つ!
「本当にそうでしょうか?」
眉根を寄せて静まりかえってしまう少女、自問自答するかのようにつぶやく。
おそらくザックにでも聞いていたのだろう、俺の貴族嫌いのことも知っているらしい。
そして、その原因が自分たち貴族にもあると聞かされて、うつむく少女……」
そんな彼女を見かねて、少し本心を語ってやる気にはなった。
「なあ、少し昔話でもしてやろうか――騎士に憧れた、ある少年の話をな」
まあ、あの国では誰でも知ってるライアって騎士団長に憧れる少年のおとぎ話だ。
彼は歳でいえば10歳の少年だった。
貧しい家の出身だった彼は、両親もろくでなしでな。
飲んだくれの親父と、身体の弱い母親、それはもう大変な貧民でな、少年も年端も行かない頃から働かざる得なかった」
「そんな! 10歳なんてまだ子供ーー彼が働く必要があったなんて?」
自分のことのように少年のことを悼む少女、底辺の家庭なんてそんな物。
だが、この少女には想像もつかない世界だったらしい。
退屈な話なので、このまま眠ってくれれば楽なのになあ、などと思いながら話を続ける。
少年は、クルトという名前だった。彼は、町一番の剣豪を目指すという夢があった。
だが、10歳に満たない彼には非合法のは働き口しかなかった。
彼は少年でありながらも、天性の才能があったーー天賦の才能だ。
誰になら腕もなし少年は成長過程で、徐々に天才的に剣の才能を開花刺せていったという。
あるときの話だった。街にモンスターが入り込み暴れたことがあった。
城下には騎士達が駐屯しているが、それらを食い殺すほどの強力な魔獣だったそうだ。
クルトは騎士の死体から、剣を奪いそれを使って見事に魔獣を返り討ちにした。
あまりにも凄惨な光景、死体の山騎士達の者だ。 その真ん中で返り血に染まって立ちすくむクルトに声を掛けられる者など一人もいなかった。
だが、その行動を見た一人の貴族は思ったらしい。 この少年は使えると、
貴族の男は、クルトに取引を持ちかける。
もちろん非合法な取引だった。
少年は渋々ながらその話を聞く、働き口がなかったからだ。
酒場での雑用は彼の心にはキツイものだったらしく。
ライアの英雄譚のような活躍を希望していたクルトは貴族の話に興味を持ち始めていた。
貴族は語る。 曰く、王女が、護衛をもとめていると!
町外れの廃屋に、野党の手段が陣取っており、騎士団でもそう簡単に排除ができないこと、近いうちに成人の儀を迎える王女は、その野党が陣取っている。
遺跡ーー白亜の神殿に行く必要があったが、
当時まだ、存続していたロイヤルガードが動くには、まだ幾ばくかの時間が必要で、王国も手を焼いていたという?
話は簡単だった、用はその野党を倒してしまえば。手柄はクルトのものとなり、女王からの感謝も、ロイヤルガードの推薦状もうまくいけばもらえるのではないかと?
男は、ライアの武勇伝に似た状況の説明をうまく強調して、誘導しているようだったが、幼いクルトにはそれに気づかなかった。
クルトは、一人で野党に立ち向かう決意をする。 貴族の男は前金として金貨を一枚払った、とんでもない額だったが、死ぬ危険性が高い依頼故の金額だという。
その説明に、クルトは納得してしまった。
クルトは、意気揚々と、指定された白亜の宮殿に向かう。
底に待ち受けるのは野党の集団ーー15にんほどいただろうか?
ただ、クルトも自分の力量には自信を持っており、物怖じすることはない。
野党が、一人一人、トイレなどで、その場から離れるタイミングを狙い各個撃破していった。
次第に数が減っていく野党は、最初は寝ている団員が多いと行っていたが、探しに出た男が、クルトが倒した野党の死体を発見してしまう。
一気に、臨戦態勢へと入った。
クルトは子供のふりをして斬りかかる算段を立てたが、貴族より借り受けた大剣はあまりに目立つために、その作戦が不発してしまう……
少年とはいえ容疑者に見える、その強力な剣を前に野党は手加減をしなかった。
いきなり襲いかかってきた、野党の剣をはじき返し、一人目を倒すーー相手はすでに10人だったが、周りを取り囲む野党に、クルトは、多少焦りを覚えた。
一人を切り裂いた感触でわかる、この野党は騎士並の手練れだったと。想像以上の難敵だった。
群れるばかりで、たいした強さがないと思っていた。野党のイメージを覆す謎の野党。
彼らは巧みな連携をとり、クルトを追い詰めていく。
クルトは守勢に回ることしかできず、やはり大人とはこのレベルの戦いを行うのかと実感していく。 徐々に追い詰められるクルト、野党ごときと侮ったのが運の尽きだったのかも知れない……?
妙な話だと思った。魔獣さえも撃破するクルトが野党にろくに歯が立たないなんて、だが、おかしいのはそれだけではない。
野党の中に一人、少女の姿が見えたからだ。
彼女は村人の格好をしており、誘拐されているのかと思ったのだが、そんなこともなく、野党と連携するように剣を構えている。
そして野党は暗くてわからなかったが戦っているに気づく、厳つい荒くれではなかっ他のだ。
衣装こそ、野党のそれだが、おのおのが武器としているのはレイピアーーそこまできづいて、相手が野党の格好をした別の何かだと気づいた。
ようやく剣空力を止めて様子見を、取り始めたので相手も剣を納め始める。
「少年ーー君は何か勘違いをしているらしいな? 私、聖騎士レイアが話を聞こう、私はロイヤルガードの一人、王女の護衛の側近だ!」
ロイヤルガードが何でこのようなところにいるのか、訳がわからなくなるクルト、その状況に相当混乱していた。
「君が、疑うのも無理はない、野党の格好をした彼らは、皆ロイヤルガード達だ。
紛らわしいことをしてすまなかった。
我らは、皆ロイヤルガードーー模擬戦のためにAチームと、Bチームにわかれ、今日いっぱいの訓練を行っている最中だったのだ。
君の罪は重いーー何せロイヤルガードを不意打ちとはいえ、7人殺害している。おっと一人は正面からだったか、確か、最近大型魔獣を倒したと噂になった少年がいたかな?
それが君かな?ーークルトはうなずく、この場でごまかし倒したところでしょうがない。
クルトのしたことで血の気が引いていくのを感じていく……
自分の人生はとにかく運がない。
所詮はこんな物かと、自分のツキのなさを受け入れて剣を捨てる。
「君の罪は重いが、私の一存でなんとかして見せよう? これほどの才能を見逃すのは惜しいし、本来、紛らわしい姿をしていたこちらにも非がある。
まだ少女であるにもかかわらず、少女の言には乱れがない、英才教育を受けて育った熟練の少女剣士それが彼女だった。クルトよりもずっと頭も切れるし、弁も立つ。
そこに、駆けつけたように先ほどの貴族の男が訪れる。
「これは問題ですぞ、反逆です。 反逆なのです!
この少年は間違いなく国家反逆罪。
その剣をお見せください。
おおお、これは反逆者レオンが使っていた魔剣、ダーインスレイブーーこれは大問題ですぞ!」
大げさな芝居がかった動作で、貴族の男が言う。
流石にレイアという少女も眉をひそめて、顔色が悪くなった。
「ここには王女様もおられる。彼女の暗殺を企てた、テロリストーー反逆者クルト、それがこの少年の正体ですぞーー!」
そんなとクルトは思う、濡れ衣だと……
飲んだくれの親父がを持つ彼は父親のことをよく思っておらず、日頃から鬱憤がたまっており……貴族の男から、同じうさんくさい匂いを感じたていた。
言い訳するならばそんなところ、頭にきてその貴族を思いっきり殴った。
吹っ飛ぶ貴族の男……気をしなった彼を前にレイアが言うーー
「クルト君だったか、君は大分問題行動をしたぞ、今のはこの国大臣だった。
確かに彼の言動は度を過ぎていたが、殴りかかった以上君の非はあるのだ。
大方彼の入れ知恵だったと思うが、まだ手はあったというのに、手を出してしまっては……
彼は大臣だ。意識を取り戻せば、君を処刑するように誘導してくるだろう。
たかだか騎士風情の私には残念だが、これ以上の擁護できないし無意味だ。
使えそうな少年だと思っていたのに……かわいそうだが、今のうちにこの国を出た方がいいと思うが?」
落胆の声を発するレイアーーその声には残念な響きが含まれていた。
そこへ凜とした鐘のねーー少女の声が響く、『私、自らが命じます……静まりなさい』
現れた少女にロイヤルガード達すべてが、膝をつき頭を垂れる。
プラチナの髪を持つ少女ーーその特徴がすべてを物語っていた。
間違いなく彼女が王女だった。
彼女はクルトを見ながら言うーー
「私の権限で、大臣への暴行、およびロイヤルガードの殺害は、すべて不問とします。
騎士クルトよ、私には貴方が悪い少年には見えない。
何らかの行き違いがあったでしょう?
貴方をロイヤルガード見習いとして、推薦状を書きましょう!
何会議のある人はいますか?」
「しかし、誰も名乗りを上げなかった」
先ほどの大臣でさえも、遠目空状況を見守るばかりだ。
だが、クルトは王女の美しさに見惚れる一方で、こんな形での救済いらないと感じていた。
救われたのは事実だったが、簡単に大臣の甘言に乗った自身が許せなかったからだ。
大臣の狙いは、おそらく目の前の王女の殺害に他ならなかった。
ロイヤルガードをクルトが無力化したところで、私兵を動かすなどで王女をもろとも殺害するか何かを思い描いていたのが容易に想像できた……?
それ以外の動機が思いつかなかったからだ。
自分のせいで、この少女は死んだかもしれない。 すべてのロイヤルガードを斬り殺していたらと怖気が走った。
なにより、血にぬれた自身の手がおぞましかった。
少女はつらかったでしょうとクルトを抱きしめようとするがクルトは逃げた。
聖母のように慈愛を向けてくる彼女に、女性免役のない彼は大いに困惑したし、何より彼女を手に掛けていた可能性を想像すると、めまいがしたし、頭痛と吐き気まで……
情けなく逃げ出した彼は追っ手がないことを確認しながら、ホントに自分が許されたことを実感する。
やはり貴族などと関わるべきではなかったのだ。
ロイヤルガード入りのチャンスを逃したことにももはや後悔はない。
ライアのようになれなくても、生きる道はいかようにでもあるーークルトの実力を今宵の戦いは証明していた。
その刃刃ロイヤルガードさえも切り伏せる。
なら冒険者にでも何でもなればいいだけの話だった。
何より大臣の叱責を再び受けることが怖かった。 あの大臣はクルトを許すタイプではない。 王宮にとどまればが何を言われるか?
そうしてクルトは、王宮騎士団を追われる形で、冒険者として生きることとなる。
それも、人生の目標を失った彼にとってはもはやどうでもいい話だった。
このときクルトは生きる屍となったのだ。
自身の汚れた手と、憧れだった近衛騎士団への道が閉ざされたこと、何より関係ないロイヤルガードをを都合7人も着捨ててしまったこと。
呪いのようにこびりついた罪悪感は、クルトから、最後までその人生を縛った……
「そんなことが……話を聞き終わった少女が悲鳴にも近い悔恨の声を上げた」
「あくまでそういうことがあったと言うだけだ、今の俺にはもはや関係がないがな」
クルトが誰であるのかなどはもはや言い訳する気もない。すべては過去の話なのだ。
「その話はまだ続きがあります。クルトは王女に再び再会するのですからーー!?」
悲痛な声で少女は言う。
何を言っているんだこの女はとも持ったと同時、彼女はフードを外した。
今まで見えなかったプラチナの髪それがはっきりと目に入る。
紛れもなく十年近く前に、目にした他王女のそれだった顔も見間違いようもない。
だが、それだけではない。彼女は記憶にあるままの姿でそこにいる。
ジグルドはすでにかなりの年を経て、青年という年も越えてしまっているが、
少女は少女としてそこに存在する。
「つらかったのですね、クルトあのときの約束果たさせていただきます」
抱きしめてくる王女に、何のリアクションもできず正されるがままにされる。
「王女、馬鹿なーー年をとっていない? 幻術か、嫌そうではない、王女よ、お前は一体?」
「私は特殊な血統と、髪の血を引く巫女であり王女なのです。 故に年はとりません」
「そう言ってのける少女は、相変わらず10年前と同じ風貌で、クルトの記憶を大いに呼び覚ました同時に走る。
初恋とも言える感情すっかり冷めて以来女の一人も抱いたことがないクルトは、一気に少年時代のようなーー戻ったようにすくんでしまう。
立場が今までとは逆だった
ジグルドは思うーーだからどうだって言うんだ。
俺は俺だ、今更、仲良く10年前に立ち戻ることなどできない。
ーーと思うと同時にどうしても、当時の思いがよみがえってくる。
今のジグルドは全盛期だったクルトの頃に心が戻りつつあることを否定しながらも自覚せざる得なくなっていた。
俺の心はそれまで止まっていたーーだが、再び、心臓は動き出した……
自覚はできなかったが、確かに、身体が命の息吹(魂)を取り戻し叫ぶのを感じざる得なかった。
「はっと、今の状況を思い出し、目の前の少女ーーいや、王女を見つめる。
果たして俺は今何を思っている?
思えば初恋だったかもしれない過去の思い出、蓋をし続けたそれを強引にこじ開けられたが、頭は混乱して、素直に認めることはできない。
それに彼女は美しいーー年齢的に30近いはずだが、まだ10代半ばぐらいの少女に俺は何を思っている。
認めることなどできない。 ましてや俺はもう28にもなる。
今更、恋だと馬鹿げたことをーー!?
こちらの苦悩を知って知らずか、王女が話を始める。
「あのときは驚きました。 貴方が昔の知り合いにどことなくですが、雰囲気が似てたもので…… 少年の貴方は、かわいかったし、ただ、純粋に助けなければあの時はそう思ったのです。
ここで散らしていい命ではないとーー?
ですが力およばずもうしわけありません。
私だけでは貴方を、完全に助けることができず……もうしわけありませんでした」
「それは違う、王女よ、おまえは俺を許した。 罪状も取り消すと言った。
だが、罪悪感に潰れて逃げたのは俺自身だ。 積は俺にある!」
「ぐっと、拳をにぎり、力説する。 ただ彼女を悲しませたくない思いがそうさせるのかもしれない」
俺は何をやっているのだろうかーー? 相反する思いが、せめぎ合う中、更に口は勝手に開く。
「俺があのとき、逃げなければロイヤルガードを身を置くことができた。
だが、俺はそうはしなかった。ただそれだけの話だ」
だが、本心はそう簡単なものではない。 大臣をぶん殴ったことと、卑しい平民でしかない自身の境遇、ロイヤルガードしかも王女側近の側付ーー近衛騎士団などなれたはずがないのだ!
リリーオブーベル(ロイヤルガード)その中でも王女付きは側近中の側近、ラウンズオブ・ベルと呼称されると聞く。
かつての英雄ライアそして、レオンの奸計で戦死したとされる。
筆頭騎士グレイーーいずれも名高い英雄である。
その地位に平民である自分が収まれようはずなどないのだ。
「そうですね。貴方はグレイに雰囲気が似ています? 無垢な少女はそう言い放った。
それが頭をぶん殴ったような衝撃とともに波及する」
英雄グレイーー下級貴族にすぎなかった彼は、出世街道を歩み。
騎士団唯一の王女より下賜されし、白馬ーーユニコーンとされる。
幻獣・ロンドベルをかり、悪逆貴族レオンと一騎打ちに臨むとされている。
彼はその卑劣な罠にはまり、善戦するも、王女を守り、最後に悲劇の死を遂げたという、 後に彼の妻は、王女おつきの文館となったとか聞くが、詳しいことは知らない。
泥臭い政治に興味和なかったといえば聞こえはいいが、俺はただ、王女の影から逃げていただけだったのではないだろうか?
聖騎士グレイはそういう逸話を持つ、王女は後に語ったという、グレイこそが最高の騎士だったと。(ライアは、創設者として番外)
当時年少者故に正式に騎士ではなかったという(ザックの話を照らし合わせるとわかる)例外的なライアを除けばその参事は最高クラスと言えた。
動揺を隠したくなり、ジグルドは、一歩引く態度と話題を振る。
「おまえに俺の何がわかるのかと言って顔を伏せた。
顔はほてっているようで、なんとかごまかせたが、男の照れた顔など見られたものではない。
王女の様子が陰ったのがわかる。
それからぽつりぽつりと王女が語り始める。ライアのこと……、ザックのこと、グレイのことなど様々だった。
多少脚色されているものの、ザックや王国に伝わる伝説的な逸話が、そう嘘だったわけでもないことを悟る。
「グレイと雰囲気が似ているか……」
誰にも聞こえないようにぽつりとつぶやく、彼は最後まで王女のために戦ったと聞く?
ならば俺も王女のために戦うべきか? グレイのように、嫌違う、これは俺自身の意思の筈だ?
今の俺に何ができる? 今更、ロイヤルガードになるのは不可能だ。 人生はやり直せない。
ならば死ぬまでまで戦おう。この小さな王女のためにーー!
「わかった、前金分がこれだったな、残りの正攻報酬をお願いしようか?」
厳密にはまだ任務は達成してはいない。
だが、けじめをつけておくべきだと思った。
王女が懐に手を入れるのを見計らって、隙を突いたように接近して、抱きしめる。
た。 壊れ物を扱うように優しく抱きしめる。
彼女の驚いたように、目が見開かれる。
はじめは状況が理解できないようだったが、はじめこそは抵抗されたが、徐々にこちらに身体を預けてくる王女?
これは、同情なのか、それとも、同意なのかそれすらもわからずしばし時が流れる。
自然と身体が離れ、名残惜しい感触が消える。
「私男性にこんなことをされるのは初めてです。 ドキドキしてしまいました……」
「そんなことはねえだろう? 男なら、放っておかないと思うがな?
隙を見ていた奴ら、は一人二人じゃないね。グレイは何もなかったのか?」
「彼は婚約者がいましたし、私とは、そこまで親しかったわけでは……」
「なあ、こんなことを言うのも何だが、俺はおまえの名前を知らない。教えてはくれないか? ずっとおまえでは都合が悪いだろう?
「リリーといいます。 彼女はやや顔を赤らめながらもつぶやいた」
その後しばらく雑談をして、彼女は部屋へと戻っていった。
そのままたき火の前出考えを巡らせるうちに眠くなり部屋へと戻った。
翌朝、部屋で目覚めた俺の元にザックが戻ってくる。
王女の姿は部屋にはない。外から鐘の音のような、歌が聞こえる。
ふぅと安心して胸を何故下ろす。
ザックの強面の面を見ながら、問いただす。何の用だ? ただ俺の顔を見に来たわけじゃねえんだろう?
そこに、後ろから騎士が現れる。先頭を歩く、騎士は確か、あのとき見た、ロイヤルガードの少女だった女だ。
面影が残っているーーもう、淑女といった年齢である彼女は王女と同年代だろうか?
「リリー・ベル当代団長、レイアだ、王女より直接呼び出された! 以後同行させてもらおう……」
彼女は、深々とお辞儀をした後に、こちらの顔をまじまじと見る。
驚いたように、つぶやく、おまえはーーあの時の!?
「あのときは失礼したな。 大臣が先走ったため、私には止めることができなかった。
大臣は、反王女派の男でな。
第二王子ーーまあ、王女の腹違いの兄弟なのだが、10年前から、邪魔になる王女の殺害をもくろんでいる。
君はその策略に利用された存在だったわけだ。10年前は話すことができなかった、すまない。 今謝らしてもらおう。
深々と頭を下げる騎士を前にーーだが、ジグルドはへりくだりはしない。
ただ、うなずいただけだった。
信仰心やら、礼儀といったもの10年前にすでになくしている。
今のジグルドはおうようにうなずくだけだった。
「君に提案があるーー我々、あとのロイヤルガードはまだ、二人外にいる。後はあのザックとか言うのが用意した傭兵三人だったか、それが我々の全戦力だ。
正直、われわれ、三人だけでは心許ない、君も王女の護衛に協力しないか?
元ロイヤルガード候補生君? 最後に多少嫌みっぽく皮肉を言い、口をかすかにゆがめる。
「いいだろう、もとより俺に返るところなんてねえ、報酬ははずんでくれるんだろうな? 元ロイヤルガードの騎士様?」
こちらも負けずと言い返すーーバチバチと交錯する視線、お互いを認めつつはあるもののどこかで散る火花とライバル心、それはおそらく出会った時から揺らぐことはない!
「今後の逃走ルートについてだがーー」
「それはわしから説明しよう。 ザックが割り込んでくる。 この場をまとめるのは、やや中立的な立場にいる彼こそがふさわしいのかもしれない。
リリーとも面識があり、こちらや傭兵とも、やりとりできるリーダーはザックだけだった。
指揮官としての、レイア畑しか似頼もしいが、騎士団には彼女をよく知るシリウスがいる。
行動を読まれる心配があった。
向こうもそう思ったらしくレイアは身を引く。
「逃走ルートとして有力なのは、近くの港町じゃ、そこから船を出す手はずにしておる。 全員乗り込む必要はあるじゃ労から、六人分のスペースを用意した」
「六人では数が少ないですが?」
「どのみち全員は助かるまい、それぐらい危険な仕事になる。特に傭兵達は手練れとはいえ、街に残るというものも多い、無理して船に乗らなければならないのは、王女、わし、ジグルド、レイアの四人となる。 ロイヤルガード部下にはいざとなれば乗り込んでもらうが基本足止めをお願いしたいがよろしいかね?」
「いいでしょう、彼ら二人は捕まった後もどうにかなるように私が手配します。
問題は追っ手の指揮をするであろう、ロイヤルガード第二位シリウスと、大臣ですが……
シリウスはああ見え、熟練のマジックフェンサー、私が一人前になる前から騎士でした。単純な剣の勝負では私よりしたとはいえ接戦ですが、切り札の一つや二つは持っているでしょう? 彼の実力は底が知れないところがあります。
対するこちらは、王国全土に轟く傭兵ーー千人斬りのジグルド、ラウンズオブリリー三名、向こうにもロイヤルガード隊員がいることを考えれば、そう簡単な話ではないでしょう?
貴方の働き如何によっては王女も危うい、とこちらを見るレイアーー
「ほう、それはどういう意味だ? 聞かせてもらおうかお嬢さん?
「そのままの意味だよ、貴公の実力を確認したい。ホントにリリーにふさわしい男なのかどうかをな? まあ、そうでなくても背中を預けていい男なのかだ!
酒場随一の飲んだくれ、駄兵ジグルド君?」
「はは、それをいわれるとつらいのう、ジグルド!」
「いいだろう、だが、ただしょうぶするだけじゃつまらねえな、何を掛ける?」
「今後私に負けたら、王女に手出しはさせないが、私が負けた場合王女の自由を尊重しよう?」
「いいだろう表へ出な」
得物を担ぎ上げ立ち上がる。
ジグルド編は、かなり読み応えあるんじゃないかと? 導入部分が相変わらず弱いかなと?




