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ジグルドの章、序章

まだストックがあるのでサービス回、バトルはあまりないかも?

ーーそうこうするうちに精神にまた新たな声が聞こえてくる。再び感応状態へと移行する。



『俺は、まだ死ねないーー王女を守るまでは……』



 新たな声が聞こえてくる、動機はグレイによく似たものだったが、声のトーンは全く違う。たくましい、熟練の若き傭兵ーーそれが次の、死者の声だった……


 時代は更に10年の月日が経過していた。


 歴戦の傭兵(猛者)ジグルドの雷鳴はかなりの範囲に響き渡っていた。

 王宮からの依頼さえもあるぐらいには力を認められてはいたが、素行はまっとうなものとは言えず、裏稼業を中心としていた。


 理由は彼が貴族を忌避していたためだった為だった。

 実力のみでのし上がりと言えば聞こえはいいだろうが、彼のような野蛮に育った平民ーー初戦は傭兵である。


 出る杭はいずれ煙たがられることを彼はよく理解していた。


 だからだろうか? まっとうな仕事よりも、傭兵などと言う荒くれ家業に身をやつしていたのは、だがそれが彼の性分であり生き方でもあったのだ。



 彼はなじみの酒場に赴くと酒を注文する。 潰れるほどの大酒のみ、それがジグルドという男だった。


 いつもの繰り返しとも言える。 習慣、店主はあきれたように彼に声を掛ける。


「いい加減飲んだくれは、勘弁しねえか?

 わしはアンタのことは評価してるが、そうも不景気なに飲まれちゃこっちまで景気が悪くなるってものだ。


 酒場の店主は初老にさしかかる一歩手前と言ったところだろうか?


 名前をザックというらしい?

 傭兵上がりのジグルドに共感しいつしか面倒を見るようになっていた。

 曰く、昔の自分に似て危なっかしいらしいが、ジグルドは余計なお世話だと感じている。


 どこがどうこの親父に似ているのかは理解できないからだ。

 彼の話す英雄譚は非常にうさんくさく、時に、嘘くさい。


 王宮のシンボルとして語られる、希代の偉人ーー初代名誉騎士ライアと、王女を助けて、生還したという話がまさにその筆頭で、大げさで鼻につく上にあまりにも嘘くさい。


「ザックの旦那、アンタはいつだって景気がいいことを言うがな。

 そろそろ戦争が始まる。 内乱か? この国の王女は20代後半の女性だって聞くが、アンタは実際その目に見たのか?


 もう、結経な淑女になってるはずの年齢だ。

 だって言うのに今度の戴冠式になるまで、目撃者もいやしない。

 王女が成人の儀を行い戴冠式を行うという話もあるが真相は不明だった。

 

 あまりにも遅い一人前の儀式、王女を見たことあるものは、そろえてまだ少女という年齢だったと口にする。 うら若き美貌とはかなさを兼ね備える乙女だと。全くうさんくさいとジグルドは独りごちた。


 それはザックも例に漏れず、王女を守った話は少女だった彼女を護衛して、王女をかばって代わりに海に落ち、運良く助かったという話だった。 話によるとその過程で王女が受けるはずだった矢を受けており、その影響で傭兵を引退しているが、命の恩人なんだとか?

 盛りに盛ったうさんくさい話だといつも思う。

 バイキングを次々と屠っていく、下りなどは妙に嘘くさく創作じみているのなんの……



「天下の女王殿下の武勇伝なんて、誰も信じちゃいねぇよ。

 ましてや、アンタのホラ話もな?」


 ジグルドはいいながら肩をすくめた。


「一回手合わせしてみるか? 英雄殿の実力とやらを、拝ませてもらおうじゃねぇか」

「おいおい、老体をいたわらんかい」


 ザックは苦笑しながら酒を煽る。と同時に軽口を放つ。


「まぁ、わしはお前さんほど強かぁないが……真実に少しの嘘を混ぜるのが、語り部の技ってやつよ」


「ほら、やっぱり創作じゃねぇか。散々聞かせやがって、酒の肴にもならねぇっての!」

「ファファファ! わしは、真実を語ってないとは言っとらんがな!」



 やれやれ、とかぶりを振って、店の棚をあさり始める。

 注文はいつも決まっており、いちいち考えるのがめんどくさいので、店主おすすめのザック・スペシャルというカクテルをあおる。

 もうちょっとましなネーミングセンスないものかと思いながら、自分もそういうのは全く興味がないことに思い至り、素直に酒をあおる。

 カクテルの名前などつけられるような教養もないのは自分もまあ同じだ。


「もう一杯だ、親父、キツイのを頼むーー」

既にできあがっている。 だが鍛え上げられた体はこの程度では全くびくともしないのだ。



 彼が飲んだくれているのには理由があるーー彼は歴戦の猛者ではあったが、王宮や出世街道にも興味はない。 ただ、戦って飲んで酒場でうさばらしする、それだけがすべてだった。


 日々景気が悪くなっていく中、王国の国力は衰得ていく。

 そこで万の辞して現国王が立てた政策が、世代交代である。

 王女は聡明で次期女王として据えることで、国の勢いを取り戻そうとしていた。

 噂では王女からは予言やら、啓示やら、うさんくさい話も聞こえてくるのだ。


 王女を支持する声も多く、だが、一般での演説などは見たことがない。

 まあ、そういう催しがあったところで、彼には興味などなかったが。 見に行くつもりがないならないのも同じ事だなとジグルドは思って再び酒をあをった。


 そうこうしているうちに隣の席にたまに見るローブの少女が座っていることに気づく。

いつからそこにいたのか、いままでの会話を聞かれていたらしい。


 百合をあしらったケープが特徴的な、彼女はその体つきから一目で少女であることを連想させた。 上質の布地、貴族だろうか? なんて場違いなと思うが、関わらないのが、身のためだと理解しているため、それ以上のリアクションは取らない。


 それ以上に興味もなく、多少ばつが悪い思いをしながら酒をあおる。同時に未成年がこんな酒場で何をしているのかとか、そんなことを思うのだった。


「王女を守るために、儂は命を懸けたんじゃよ」

ザックの親父が、例の武勇伝を始める。 フードをかぶった少女は、楽しそうに相槌を打つ。

「本当に? それって凄いね」

大げさに親父が答え、少女がそれに合いの手を入れていく。


「儂がいなければ、国は滅びておったな!」

嘘くさい。だが、少女は無邪気に笑う。


ジグルドは肩をすくめた。馬鹿馬鹿しいが……少女の声は、不思議と耳に心地よかった。

まるで鈴の音のように、軽やかに響く。


「なに?」

 少女がこちらを見る。ジグルドは少し戸惑いながら、首を振った。


「別に……」


 内容は武勇伝ーー要するに親父のホラ話だ。

 あんな話が楽しいとは、若さというのは偉大なものだ。 まだ未完成で経験も浅いのだなとか勝手に失礼なことを思う。


 リンと鈴のように響く少女の声をききながらーーそれが心地よかったのか?

 彼は、意識が避けに覚えれているのを感じていた。




 寝静まった酒場には誰もおらずただ、少女と親父の雑談が響いている。

 その内容が徐々に真剣味を帯びていることにいつしか気づいた。



 ぼけた頭では内容までは理解できなかったが、次期女王の戴冠式に関してだった。

 腕のいい傭兵の当てはないか? そんな話が話の節々に聞こえる。


 傭兵を雇う? この少女がーー?

 酒の飲み過ぎてとうとう自身の頭を疑い出すジグルドだが話はそれだけにとどまらず、ザックがこちらを指さしたので身体を起こす。

寝ぼけ眼でも以来ぐらいは受けるられる。


「話はほとんど理解してなさそうなのでもう一度言う。 彼女は貴族の令嬢でな。 古い知り合いじゃ」

「そう言い出す親父に、いや、未成年に古い知り合いなんているのかと考えるが、赤ん坊の頃から知っているなら、確かにそういうこともあるかと考え直すーー貴族嫌いのジグルドではあったが、まじまじと少女を眺める。


「手付金ですーー少ないかもしれませんが、これでどうでしょう?」


 鈴の音が響くーー!

 提示された額は、金貨一枚、飲んだくれジグルドの、実に5回以上の働きに相当する。


 こんな少女が、金貨だあ!? 確かによく見れば身なりや肌のつやも良い。

 隠しているが高貴な、出身であることをうかがわせる要素は所々にあった。

 ただ、ジグルドが興味がなかっただけだ。


 ジグルドは断りたい衝動に駆られて頭をかいた。 何せ貴族と関わるとろくなことがない。

 だが、親父の頼みとあっては付けもあって断りづらいし、何より相手は少女だ。

 それも人畜無害な、それならば少しぐらい依頼を聞いてもいいのでは? と考えてしまった。


 少女の依頼内容はこうだった。

 近く、屋敷で、即位の儀が行われる弟ーー彼は、父親とは折り合いがいいとは言えず、野心家だった。 彼が家を継げば危機的状況になる。


 お家想像に発展してしまう寸前で、後を少女を後継者と指名することで高齢な父親は息子から逃げようとしたーーという、ジグルドにとっては、実にくだらない話だった。


 そんな家を出たい。それが少女の願いだった。

 すでに傭兵は6人そろえてはいるのだが、連れ戻されて二度と屋敷から出られないかも知らないという?


 確かに不憫な話ではあるかもしれない? がーー置かれた立場を省みれば、国外逃亡を企てている。 彼女の動機もいまいち不明なものだった。

 貧乏くじを引かされるのは嫌だ。確かに面倒そうな話だったが、ジグルドにとってはそれだけだった。


 どうすべきか考えがまとまらないーーそんなときに酒場のドアが乱暴に開け放たれる。 入ってきたのは貴族だった。


 実にめんどくさい展開だ。大方の成り行きを理解しジグルドは少女から視線を外す。

 貴族の目的は十中八九少女の連れ戻しだろう?


 俺が手伝うとすれば、国外逃亡を援助するぐらいで、直接彼女をかばう木などない。もめ事に巻き込まれるのは御免被る。


 だが、手には金貨を持ったままだった。

 頭が痛くなった。親父の頼みも断れない。ーーとなると、少々重い腰を上げるしかないかとジグルドは思った。 どのみちこの国に未来などない。

 先王の時代は良かったらしいが、10年前に王女を狙って、大罪人レオンという男が暴れたと聞く。 そのとき彼はロイヤルガードだったらしい?


 なんでも、先王は彼の父親と仲が良かったらしく、王女暗殺を企てているという疑惑を掛けられたらしい?


 おかしな話だと思うーー娘の暗殺するなら、もっとうまいやり方があるはずだった。

自分から犯人ですと行っているようなものだ。

 だが、結果として先王は、弟の告発理由に玉座を明け渡し隠居した。

 その後ぐらいから、隣国との戦争の話が徐々に持ち上がっていったのだった。

 やはり、それが原因だったのかその頃から黒い噂が後をたたなくなり、気がつけばこの有様だ。


 ジグルドは王国をどうでもいいとは思いつつ、住処としては悪くないとは思っていた。


 景気がひどく悪いことを除いては、もめ事が少ない。

 それ故に貴族も跋扈していなかったからだ。

 逆に景気が良くなってくれば貴族に金が行き活気づく。 彼らが幅をきかせるという仕組みだ。

 どっちにしても悪いシナリオだったが、後者の方がまだ普通なら喜ばしいことだろう。 ーーだがジグルドは、そう思っていない。 貴族からのは依頼などは跡を絶たないからだ。それらをすべてを彼は断ってきた。


 貴族からの依頼が増えるのは迷惑だった。断る度に彼らのお怒りを買う始末だからだ。

 現国王は隣国に戦争を仕掛けたあげくに退廃して、ロイヤルガードも解体させられていると聞くそれがこの国の結末だった。



 あまりに救いがないとも思えるかも知らない。

 だが、生きているとも死んでいるともつかないジグルドにとってはもはやどうでもいい話に過ぎず。

 レオンとかいう、貴族を輩出してしまったロイヤルガードにも責任の一端はあると感じた。

 武力解放に、反対しきれなかったのはそういう側面もあるのだろう? 結果的に、もはや国力の乏しい状態だ。


 敗戦国の末路などそんな物かもしれないーー結果として、今滅亡の瀬戸際に立っている国王をかばうものも少ない。


 だからどうだって言うんだ! こんな国捨ててしまえばいい? 少女は見たところかなりのお金を持っている。

 通貨価値がわかっていなさそうなのがその証拠だった。


 適当に亡命を手伝って、そこで次の国へと乗り換える。

 沈みゆく泥船からはさっさと逃げ出すのは定石と言えるが? 

 確かにそろそろ潮時だっただけのはなしかもしれないーーライア団長の英雄譚は、確かに今でも語り草で、ロイヤルガードを支持することも多数あったと聞くが、結果がこれでは報われもしないだろう?


 百合をあしらった紋章は語り継がれているが、ジグルドにとってはどうでもいい話だったそのために特に興味もない。


 ここで一度一山当てて国外逃亡も悪くないシナリオだと、打算的な考えに算段し始める。


 そうこうするうちに、騎士らしき男は、少女の後ろへと歩いて行く。


 その歩みに迷いはない。 やはりかと、ジグルドは思う。


 だが、少女に近寄った男が胸に手を当てて倒れた。 剣を抜こうとした男にザックが先制したのだ。

 その時ジグルドは動こうとしいた。 だが、ザックの親父が先に反応したのだ。


 親父に負けるなんて俺も相当によってるらしいとか思いながら様子をうかがう。

 親父はいきなり猟銃を発砲したのだった。


 ーー貴族相手にだ。冗談きついぜ。


 そこに至って、親父がただ者でないことに今更ながら気づいた。

案外、武勇伝がすべて嘘だとは思えなくなっていた。


 銃弾を受けて倒れる騎士風の貴族、だが、その発砲音ですぐに外に控えていた数人の騎士風情が押し入ってくる 店主が少女に裏口を支持するのが見えた。


「やれやれ、俺の出番って訳かーー!」


 傍らには一振りの大剣ーーそれをここで振るうのは悪手だ。

 長すぎて天井に引っかかる。

 素手で十分だと思った。男の数は3人ーー数秒で決着がつく。

 ジグルドは先ほどの金貨を見せつけるよう手でもて遊ぶ、即座にトスし、その煌めきに目を奪われた貴族に殴りかかった。


 一撃ーー二撃ーー三撃、10秒と掛からず三人の男はノックアウトした。


 少女が感嘆の声を上げるがそれにかまっている暇はない。

ここももうやばい。剣をとり裏口へと向かう。


 店を出たところで、たいまつの光に照らされる。

 すでに取り囲まれていた。


 銃声が響く、顔の横を銃弾がかすめた。


 ーー銃を発砲する騎士、今度はお飾りではなくホントの騎士だった。


 断続的に続く発砲。 だが、ジグルドには通じない。剣を盾にするようにして正確に弾道を読み防御する。

 その大きさは刃が、通常の剣の三杯はあろうかというグレートソードだった。

 銘をファフニールという、どこかのトレジャーで手に入れた品だった。

 若い頃に冒険者をしており、その頃の戦利品だったろうか?


 効果がないことに驚く騎士達は、抜刀して魔法を詠唱し始める。

 魔法の心得がない。ジグルドには相性の悪い相手と言えた。 近づいて殴り倒すか?

 だが飛来する魔力の塊を、リンとした鈴のような声が制する。


 少女の発した言霊が魔力を無効化した? なんだこいつは? 

 ギョッとして少女に視線を送るが、すぐに思考を切り替える。

、その間にも前に出て、騎士を蹴り飛ばす。


 吹き飛ばされた騎士はドミノ倒しのようにほかの騎士を巻き込んだので、狭い路地をザックに続いて飛び出していく。

 少女の歩みが鈍いので、担ぎ上げ人さらいのように地面を蹴る。


 ーーとんだ逃亡劇だな、どんな貴族の娘ならばこうなるのか? 白の兵力がほぼ総出といえるほどだここまでで出張ってくるなど、とんと聞かない話だった。

 まずい展開だなと思うが、後の祭りだ。 今更、乗りかかった船から下りる方法はない。

 ザックを戦闘にして、町外れまで来たところでーー待ち伏せに遭う。


 現れたのは小太りの男、大臣だっただろうか? そんな大物がどうして!?


 他人のそら似で会ってほしいと祈りつつも、すでに周囲は包囲されていた。



 だが、そこでザックが銃を屋根へと向ける。

 ロープ付きのボウガンだった。あれで飛び移ろうってのか?

 いいだろう、その話載ってやる。 邪魔者を一喝するためにウォークライ、突然の響いた轟音にびびった兵士達が動きを止める。

 そのすきに少女をザックのそばへと移動させて退路を確保する。


 だがここに来て、王国最強とうたわれる。 男ーー疾風のシリウスが現れる。


「お初にお目に掛かります。 疾風のシリウスと申します。 二つ名等横行かと思いますが、いざ尋常に勝負ーー! そちらは確か?」


「俺は、ジグルドーー自称百戦錬磨傭兵だ。 アンタに恨みはないが、その勝負、乗ってやるよ!」


 強者の習性・サガというやつだろうか? 敵を前にした興奮久々にそれを感じた。 

 シリウスはロイヤルガードとして名の知れた男だった。

 

 その二つ名の通り、疾風のような速さを得意とする。

 同時に魔法も唱える。マジックフェンサーだった聞いたことがある。さてどの程度のものか見物じゃねえかーー!? 試してやる!



「小剣か? その剣じゃ、俺の大剣は防げねえよ!

 既に開戦している。 つぶてのような魔術の猛攻を浴びながらも、ジグルドは防御をやめ、勢いに乗せて体験を振りかぶる。


 殺さない程度に手加減はしたが、それでも重傷は避けられない一撃だったーー それを何事もなかったかのような巧みに絡め取り返された。 これがロイヤルガードしかも熟練って分けか?

 なるほどーーすこしは骨のあるやつがこのくににもいるらしい。


「なあ、アンタ、こんな腐った国の騎士なんてやめちまいな? それだけの腕だいくらでも行く当てがあるんだろう?」


 純粋な心からの忠告だったのだが、シリウスは命乞いされたのかと勘違いしたらしく嘲笑で返してくる。


「ふふふ、老体とはいえ貴方程度には、後れをとりませんよーー!」


「抜かせーーー! 側面、サイドの重量の乗せた全身全霊での一撃、さすがにこれは堪えたらしくシリウスが呻く。 圧倒的な膂力の差だ。 そう何度も無効化されては困る。


「重いですね。想像していた以上の男のようです。 ですがこちらも一人ではありません。お忘れではないでしょう?」



 辛うじてといった体でなんとか大剣をいなしているシリウス、その背後から魔法の追撃が放たれる。


 一つ二つではない。 元ロイヤルガードの騎士達全員の一斉掃射だーー!

 流石にあれを受けるとやばい。

 そこで、ザックが、ロープをこちらに発射する。

 反射的にそれを手に取り、宙へと舞い上がる。

 少女とザックはすでにかなりの高所へと逃げ延びており、教会の鐘のあたりにいる。




 鐘撞き堂か? そこに合流する形で、いいアイデアを思いつく。

 ジグルドはザックと目を合わせ、短く 『3秒後に鳴らす』 と口の動きだけで伝えた。

 ザックは ニヤリ と笑って、耳を塞ぐ。

「……よし、行くぜ」 ーーガァァァァン!! 鐘の音が爆ぜるように響いた。

 生半可な腕力ではない、その衝撃で足元の瓦が砕ける ほどの轟音

 ーーつんざくように町中へと響き渡る鐘の音。 轟音は時に凶器へと変わる、即席のトラップだ。


 騎士たちは反射的に耳を押さえ、膝をつく 。

 その隙を逃さずーージグルドは 少女を肩に担ぎ、屋根を蹴った。

 夜風を切り駆ける! 屋根から屋根へと飛ぶ、跳ぶーー!

 下ではシリウスが剣を抜き、まだ追いかけよう剣を構えている。

 だが、まだ鐘の衝撃で動きが鈍い。

ーーよし、撒いたな!


 シリウスの影が、遠ざかっていく……!


 ーー屋根から屋根へと飛び移りシリウスを蒔いた。


 町の外へと出て、森の中へと駈ける。 ザックも足が速く素直に感嘆する。

 すでに追っ手はなく、すでに足音が遠のいていった。


 森へと逃げ延びた彼らは、廃屋。

 まあ、ザックが昔使っていた隠れ家だった。 で、過ごすことにする。


 あえて少女とは距離を置き、哨戒任務を引き受ける。

ザックに任せてしまう手もあったのだが、少女と二人になるのは避けたかったからだ。

 

 だが、そうもうまくはいかないらしい。背後に気配を感じる。

 少女のそれだった。


「何の用だ? 俺は、アンタは体力がない。 昼は相当答えたんじゃないのか?

 こんなところでしゃべってる場合じゃねえだろう?」


 さっさと追い払おうと先手を打つ、だが少女はなおも進んでそばに腰を下ろした。

 忠告も全く効いてはいないらしい。


「失礼します。ジグルド様ですよね? 昼間は大変助かりました」



「なんてことはねえ、俺は俺のできることをやっただけだ。

 どのみちあの国にはもういられねえよ。 次期女王の機転がいくらきくにしてもあそこから立て直すのはきついだろうさ?」


「確かにそれについては申し訳なく思っています……」


 よく分からない返しだが気にはとめない。


「先王の時代に、下手を売ったのが失敗の原因だったからな。それだけのことだ。」


「グレイ……ライア二人のことは今も忘れてはいません。 私がふがいないばかりに……」


 ポツポツとつぶやく少女だったが、小声過ぎて内容まで知ることはできなかった。


 ジグルドに話しかけると言うよりは、ここにいない誰かへの言葉だろうか?

 家族を残してきているであろう少女は、そのあたりにまだ未練があるのかも知れない?


「ジグルドさんは、なんで貴族がお嫌いなんですか?」


 気おとり直したように、顔を輝かせてフードの少女が聞いてくる。


「……貴族が好きな庶民なんていねぇよ みな態度がでかいからな。


 ジグルドは苦笑して、酒をあおった。一息つくと……


「態度がでかい、働かねぇ、偉そうなことばかり言う。そんな連中に、誰が好意持てるってんだ?」


「でも……ホントはそんな人ばかりじゃないってことは?」

 少女は少し眉を寄せた。


「いや、貴族なんてどいつもこいつも同じ穴の狢だ」

 煽った酒が効いていたこともあって言い放つ!


「本当にそうでしょうか?」

 眉根を寄せて静まりかえってしまう少女、自問自答するかのようにつぶやく。


 おそらくザックにでも聞いていたのだろう、俺の貴族嫌いのことも知っているらしい。

そして、その原因が自分たち貴族にもあると聞かされて、うつむく少女……」


 そんな彼女を見かねて、少し本心を語ってやる気にはなった。


「ある少年の話をしようか、彼は騎士に憧れていた。

 まあ、あの国では誰でも知ってるライアって騎士団長に憧れる少年のおとぎ話だ。

 彼は歳でいえば10の少年だった。

 貧しい家の出身だった彼は、両親もろくでなしでな。

 飲んだくれの親父と、身体の弱い母親、それはもう大変な貧民でな、少年も年端も行かない頃から働かざる得なかった」


「そんな! 10歳なんてまだ子供ーー彼が働く必要があったなんて?」


 自分のことのように少年のことを悼む少女、底辺の家庭なんてそんな物。 だが、この少女には想像もつかない世界だったらしい。


 退屈な話なので、このまま眠ってくれれば楽なのになあ、などと思いながら話を続ける。


更新時間がとれない。 まあ、行けるところまで行くかな?

今回から、時間を昼前に移します。 そのぐらいが昼ご飯食べる人が見るようなので?

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