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グレイの章・破

 夕刻にさしかかった頃ーー一人の騎士団員が声を掛けてきた。


「おや、誰かと思えばミレイユの夫だったか? すれ違ったのは同じく近衛騎士団の、レオンだった。

 たいそうな家名だった気がするがセカンドネームは覚えていない。


 彼は侯爵家の出身で時折声を掛けてくる。


 理由は明白で、過去にミレイユとの縁談があった際、侯爵家でありながら、彼はミレイユの家から断れているのだった。


 伯爵令嬢とはいえ上級貴族に逆らうというリスクをとった理由が、彼が希代の遊び人として有名だったからだろう。 ミレイユの両親はそこはよしとせず破断に至った。


 だが、そうした因縁があり、時折ねちっこい嫌みを言いに来るのが駆れというわけだ。


 レオンは、貴族らしい制服を着たフェンサーである。

 ウマを狩るグレイとは対照的に歩兵であり、グレイがウマを狩るのは斥候の役割を持っているからという特別扱いではあるのだが、見下ろす形で、対話するのが、不快だったのか彼はやや不機嫌そうに言い放つ。


「ミレイユはいい女だったがな、惜しいことをしたよ、君のような間男しかも下級貴族に寝取られるとは、私もつくづく女運がない」


 彼が振られてしまったのは、彼の行い故に他ならないのだが、八つ当たりでものごと言をってくる。

 

 またか旧貴族で有りながら、ロイヤルガードとしては上位に位置しているグレイが気に入らないだろう?


「馬の扱いに長けているようだな。下級貴族風情がおままごとでもやるつもりか?」


「我々はロイヤルガード、与えられた責務を果たすのが任、この馬は王女殿下より賜ったもの、馬鹿にするのは王女殿下に対する背信ととらえてよろしいか!?」


 騎士団内では階級による序列は関係がない。

 王女殿下の意向らしく、ここでは権力が物を言うことはない。

 むしろ実力的には、下に当たる彼の方が苦しい立場なのだった。


「おう、こわいこわい、これだからロイヤルガード第三位殿は違う。

 騎士団長が一位、副騎士団が二位、三位が下級貴族では威厳を損なうというのに、あの王女前科にも困ったものだ」


「それ以上の背信行為は許せない! 殿下に報告させてもらいますが?」


「ああ、かまわないよ。

 あんな面白みもないフードの女など私の趣味ではないからね。

 これはままごとだよ、グレイ君、騎士などに権威などないからね!」


「まずは己を磨いてから言ってほしい言葉ですね。レオン様」


 最低限の敬意を称して様をつけるがこの男はいつでもこんな感じだ。

 女をものとしか思っていない。


「では騎馬戦で勝負でもするかね? 私が負けるとは思えないが、三位殿の馬は立派白毛の駿馬ーーわたし以上の馬術をおもちなのだろう?」


「いいでしょう、訓練のたまもの見せてあげましょう」


 流石に耐えきれず申し出を受ける。こんな男少しは痛い目に遭えばいいのだと思った。

 いずれ誰かが灸を据えねばならない。


「いいでしょう、真剣勝負も美しくない。 模擬槍を天井に掲げる。

 馬上戦で勝負とそしていただけますか?」


「いいでしょう。その勝負承りましょう!」


 大々的に見物達もが現れて軽い想像ではすまなくなった。

負けるとすごく情けないが、あの男の実力はすでに把握しており、武術や馬上戦闘の心得は非常に半端なのを知っている。


 ミレイユと婚約したときから、言い寄ってくる男として彼を名指しされていたために、それなりに目に入るようになっていたからだ。


 見物人達がはやし立てる中、王女殿下までが、いつからか遠巻きにこちらを見ていることに気づいた。


 二度目となる邂逅ーーこれは負けられない。

 戦闘が開始される。 まずは馬嬢で、模擬槍(木製の当たっても痛くない槍)を装備して、堂々とした立ち振る舞いで馬を操る。


 対するレオンは、ぎこちない手つきで、馬を操っている。


 勝負の開始が告げられ、様子を見る。 向こうが仕掛けてくると同時にカウンターで勝負を決める算段だ。


 だが、レオンハルトはにやりと笑うと、槍を構えたまま旋回する。

 ここまでは予想通りではあったが、彼は魔法の詠唱を開始していた。


 ロイヤルガードの中には貴族出身の故に魔法剣士が多い。歩兵であることや、魔法の力を使えることが騎士団の象徴となっている。


 タンクポジションとして特別な役割が与えられているレオンは魔法の訓練を満足に受けておらず、対抗する手段がない……


「聞いていませんよ。魔法を使っていいなど」

 

 これが真剣勝負なら話は早い。

 ロイヤルガードの武装は、魔術を纏ったミスリル生の武具であるため、グレイでも魔法剣ならぬ、魔法槍が与えられており、その効果でけん制し返せばいいだけの話だった。


 だが、それこそが罠だったのだ、模擬槍や、武装を解いている今はミスリル製の武具による加護がない。


 氷の、つぶてを飛ばして遠距離から攻撃してくるレオン彼に比べて攻撃手段があまりにも少ない。 近づければどうにでもでもなるが、だとしても、逃げながら魔法を使ってくるレオンに突撃するのはリスクが高い。


 だが、状況を打開する手段はもはやそれしかなかった。正式な勝負として申請しておかなかったのが仇となったが、それでも負ける気はしない。

 それだけの実力差はあるつもりだ。


「それで駆ったつもりかレオンーー!」

気合い一戦馬を一蹴り突進を開始する。

 駿馬の足なら一息で、レオンを捉えることができるだろう?

 ハイリスクハイリターン、覚悟の上だ!


「うるさい、おまえがいなくなればミレイユは私の物になる。

 貴様ごときにミレイユを渡せるものかーー!」


 それが本音かとグレイは思う。 ーーと同時に一気に距離を詰めてレオンを捉える。


 突き出そうとする槍を前に、身体が動かなくなる。何人かの妨害や拘束の魔法で、グレイを捕縛していた。


「第三位殿は人がよろしいことで、誰が一対一だと言ったよ、お馬鹿さん!」


 グレイは下級貴族子爵(子爵)である。 それより上の保守層はロイヤルガードにもいて常日頃からグレイをよく思っていないことはわかっていたが、まさかここまでやるとは?


だが明らかな反則行為による向こうの負けではある。

 この結果から彼の勝利を称えるものは少ないだろう?


 ーーしかし、本当の勝負はここからだった。


若干長くなったかな? あと二回でグレイの話は終わるかと? ただし、下書きの頃グレイはゼノンというなまえになっていて、終生忘れてたらごめんなさい。

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