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課金ロボット ペイ・トゥ・ウィン!  作者: 賽子転々
灼熱怪獣プロメテウス編
3/18

三話 さよなら、バイト代……

「ペイトゥウィン……ペイトゥウィンかぁ」

『コックピットの中でも言ってるんですか? いいじゃないですかペイトゥウィン。ウィン入ってますし、かっこよくないですか?』

「そういう事じゃない!」


 僕はイヤホン越しに聞こえてくるエルの声に返答しながら、起動プロセスを進めていく。

 

 コックピットの内部はすごくシンプルな物で、僕が座る座席が中心になっていて、その手前には工場の天井を映している大きなメインモニターがある。そして座席の手前には二つの操縦桿が左右の壁から伸びており、それに意識をリンクさせて操縦する事になる。

 座席にはシートベルトの類すらないけど、記憶によるとこの機体が起動すれば座席から重力!”#$%!……ダメだこりゃ。まあともかく、ちょっとやそっとの衝撃では座席から離れなくなるらしい。

 あとはサブモニターがホログラムみたいに空中に投影される。メインに映らない物を映してくれたり、機体がダメージを受けたりした時にCGでダメージを再現してくれるらしい。

 床や壁もシンプルな作りで、アニメとかで見るような複雑な機器とか計器とか、ボタンとかもない。

 これが技術の進んだ宇宙流って事なのかな?

 

 ……そして僕が、あらかた起動プロセスを終えた時だ。イヤホンから聞こえていたエルの声が重く、真剣なものになった。


『……勇気さん。ここからはちょっと真面目な話です。もしあなたが負ければ、この街の皆さんの命は失われると思ってください』

「……うん」

『それだけじゃありません。宇宙怪獣には、地球の兵器では太刀打ち出来ないはずです。この惑星そのものが、死の星にされてしまうでしょう』

「……」

『核兵器も、レーザー兵器も、実弾兵器も、生物兵器も受けつけない。けれどそのロボットなら、何千億マネーも掛けたそのロボットだけは、あの怪獣に勝つ事が出来る』

「……なんでそんな大事な兵器のパイロットに、僕なんか?」

『地球上で身体能力が最も高いのが勇気さん、あなたでした。そしてあなたは善良で純粋、他人の為を思える人だと判断したからです。あなたなら、私の全てを託せると判断しました』


 身体能力って……確かにクラスじゃ一番の自覚はあるけど、大会に出れるとかそんなレベルでもないのに? それに善良で純粋って、どうやって知って……

 

『勝ってください、勇気さん。あなたに私の(マネー)、託します』

 

 最後までそれか、とか。宇宙の事とか僕の事とか。色々言いたい事、聞きたい事があった。

 ……けど、あの子も本気なんだろうな。


「……分かったよ、エル。皆の金も命も、僕が守るッ! ペイトゥウィン、起動ッ!」


 僕はエンジン始動ボタンを押し、操縦桿と意識をリンク! 立ち上がれ、ペイトゥウィン!


 ……

 ……

 ……しかしエンジンは起動しない。


「……なんか間違えた?」

『……あー、そっか! 軍用のやつじゃ分からないですよね! これは失敬!』

「え? 何の話?」

『そのロボット、エンジン改造してまして。普通の起動プロセスに加えて、もう一つ大事な事があるんです』


 ……どうするのこの空気。僕も君も、全力でかっこつけたよ?


「……大事な事って?」

『まずカバン持ってますよね?』


 僕のカバンは座席下の、重力保護$#”%を受けられる場所に置いてある。

 記憶によると置いた物を重力で押さえつけるから、激しい戦いでも大丈夫らしい。


「持ってるよ」

『そこから封筒取り出してください?』

「封筒って、バイト代の入ったやつ?」

『それですそれです。中身(マネー)出しちゃってください』


 ……何かまた急に胡散臭(うさんくさ)く思えて来たな。まあ一旦は従ってみよう。

 僕はとりあえず、魚屋で貰った千円を取り出した。


「……で、これをどうするの?」

『メインモニターの下に、記憶にない長方形の穴がありませんか?』


 何も映らないメインモニターの下を探ってみると確かに長方形の穴があった。

 その穴は横長の長方形で、その右横には縦長の穴がある。

 ……しかし、なんかどこかで見覚えのある形だな。


『そこにお札を入れてください。小銭ならその右の穴に……』

「……詐欺?」

『詐欺じゃないですって! 新しい記憶もあるでしょう!?』


 やばい、エルを信じるって気持ちが一気に失せてきた。

 記憶もあるし揺れがしてるのは本当なわけだし、本当なんだろうけどさ……

 言ってる事は99.9パー詐欺だ。

 まあしかし、やらなきゃいけないならやるしかないのか……


「……じゃあ千円だけ!」


 僕は千円札を穴に近づけ、突っ込んだ。すると突然ウイーン、と音がして、お札は勝手に吸い込まれていった。


 ――これあれだ、自動販売機とか食券機のお札入れるとこだ!

 

「入れたよ」

『じゃあエンジン始動ボタンをぽちっと!』

「ぽちっ」


 ぽちっと押すとコックピット内に重低音が響き始め、メインモニターが起動する。

 ……千円でエンジン始動、出来ちゃったよ。


「せ、千円って、ロボットの使用料って事!? それなら最初からそうと言えば」

『ちーがーいーまーす! ペイトゥウィンに積んでるエンジンが、かなり特殊なものなんですよ!』

「特殊って……金で動くとか? そんなわけ」

『あっ、まさにそれです! ペイトゥウィンは金で動くエンジン、「バリュー・エンジン」で動いてるんです!』


 ………………は?


「は、え、金で動くって、燃やしてるの!?」

『いえ、バリュー・エンジンは物の価値そのものを因果$%””%&”で”$”&”して%”$%#”&オイルを……えーっと、地球的に言うと、お金の価値を同じ価値分の燃料に変換出来るんです』

「……千円分の燃料で、ロボットが戦える?」

『起動には十分ですよ。激しい動きは無理です』


 僕は操縦桿にリンクし、メインモニターを操作。エネルギー残量を見ると、1パーセントしかない。

 記憶での1パーがどれくらいかというと……立ち上がれるかどうかも怪しいくらいだ。

 試しにもう千円突っ込んでみたけど、それでも1パーセントのまま動かない。


『あっ、怪獣が近づいてきました! あと三分で到着!』

「なっ!? でも1パーじゃどうにも……」

『……本当に、出来ませんか?』

「……」


 出来る。そうだ、出来るんだ。でもそうしたら、今日のバイト代は……

(じゃあまた明日、勇気くん)


 ……!

 ……

 ……そうだよね、僕がバイト頑張ってるのは……大学で(あした)響子先輩と会う為!


「分かったよ、エル。僕も全部賭けてやる」

『勇気さん……』


 僕はカバンの封筒を全部取り出し、一つ一つお札を取り出していく。

 八百屋の(げん)さん、家電屋の(みつる)さん、古本屋の晶紀(あき)さん、インドカレー屋のチャンドラさん、喫茶店の邦夫(くにお)さん、そしてさっき使った魚屋の克己(かつみ)さん……

 全部で総額一万四千円、ありがたく使わせていただきます!


 僕は全額を穴に突っ込み、モニターでエネルギー残量を確認した。

 表示されたのは『残エネルギー量5%』。それは怪獣に立ち向かうには、あまりに心細い数字だった。


(5)パー……僕の丸一日が5パーか……」

『……いえ、その5パーセントは何者にも代えられない可能性の数字です。あなたなら、その可能性を掴みとれるはず!』

「分かってるよ、エル。それより危ないから離れといて」


 僕は操縦桿を握り、右腕を動かすイメージをする。すると先ほど見ていた右腕が思った通りに動いた。左腕をイメージすれば左腕が、右足をイメージすれば右足が動いている。


「よし、よし! 記憶通りだ、あとは立ち上がって……」


 サブモニターでエルが工場内部に居ない事を確認し、まずは床を腕でついて背中を地面から離した。しかしたったそれだけの動作で工場全体が大きく揺れ、さっきまで歩いていた階段や通路が崩れていく。

 ……恐ろしいパワーだ。ていうかここ、壊しても大丈夫なのかな?

 

「エル、この工場壊しても大丈夫?」

『大丈夫です! この間私が買い取った土地なので!』

 

 なら、遠慮はいらないなっ!


 僕は立ち上がる事をイメージし、右腕を支えに一気に起き上がり、廃工場の天井を突き破りながら、完全に立ち上がったッ!

 

 ……そしてメインモニターに映ったのは、赤海市の全景だった。

 近くには小学校や公園、住宅街が。少し遠くには赤海商店街が。もっと遠くには高校が、大学が、ビルが、海が……守らなきゃいけない物が、まざまざと映し出されている。


 僕は、ペイトゥウィンは赤海市に背を向け、迫りくる振動へと(メインカメラ)を向けた。


 宵闇の中赤海山をかき分けて歩いていたのは、青紫色のごつごつとした皮膚を持つ大怪獣。

 大きさはだいたいペイトゥウィンの二倍くらいか。だけど腕の長さはペイトゥウィンの半分くらいしかなく、頭部には皮膚が盛り上がったような突起が二つついている。


 エルによれば、確かそいつの名はプロメテウス。カッコいい名前だ。

 ……名前じゃ負けてるけど、見た目じゃあ勝ってるから互角ってとこかな。


「そこの大怪獣、聞こえてる?」


 試しにスピーカーモードで声を掛けたが、ソレは気の求めずに街へと踏み込もうとしている。

 見た目的にそうだろうとは分かってたけど、対話は無理か。


 ……そういえば僕、殴り合いの喧嘩とかした事なかった。戦えるかな?

 いや、まあいいか。どうせ戦うしかないんだから。

 

 僕は見様見真似のボクシングの構えみたいな物を取りながら、そいつの進路上を塞いで叫んだ。


「……来いッ! プロメテウス!」

やーっと! やっとですよ! ようやく皆さんお待ちかねのバトルシーンです!


ふれーっふれーっ! ゆ・う・き! がんばれがんばれゆ・う・き!

……あっ、これが地球の応援法らしいです。現地だと露出度の高い服を着て$#”#%みたいな無機物を両手に持って踊るんだとか。

皆さんも良ければ、コメントで応援おねがいします! 高評価とかも応援に繋がるのでどんどんぽちっとしちゃってください!


それではここからは次回予告、の前に注意!

次回は音声に多少ノイズが混じると思います。耳の良い種族の方はお気をつけて!

という訳で正真正銘次回予告!

ついにプロメテウスと対峙したペイトゥウィン! その鉄拳が悪をくだ……え、鉄拳?

勇気さーん、武器忘れてますよー! 勇気さーん! 無課金武器じゃあ無理ですって! レンタルしましょ?

お金かかるんだろって? ……リボ払いも、出来ますよ?


次回、「武器はレンタル、拳は無課金」

また見てくださいねー!

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