6話:新たな敵はウィッチ
「ま、マジかよ!」
里奈は驚きつつ、ステッキを握り構える。赤黒い空に、ビルだけがペシャンコになって崩れている事から、地震でも耐久性の問題でもなく、正体不明の敵の仕業だと里奈は思った。先ほどのような敵であれば、余裕で倒せるはずだ。
里奈は崩れたビルの直上の空を見上げる。そこには例の敵はいなかった。代わりに、一人の女性と一人の少女が並んで浮いていた。
よく見ると両方若い。大きい方は高校生で、小さい方は小、中学生だろう。両方黒いゴスロリドレスみたいな衣装を着ていた。恐らく、里奈や勇美達と同じウィッチだろう。
「ねえ。あれ誰?」
「凛、人を指差したらいけませんよ? ですが、確かに見たことのない方ですね」
「でもウィッチみたいね。陽子、こっちに引きつけてちょうだい。どうせ日和の仲間だろうし、ここで殺す」
大きい方が陽子で、小さい方が凛という名前なのかと里奈は理解した。
「女の子が殺すなんて言葉、はしたないですよ?」
「うるさいわね。いいから引きつけなさいよ」
陽子は「はいはい」と苦笑いして、里奈に手のひらを向ける。
「ぅわっ!」
里奈は、自分の足の接地感覚が無くなったことに気づいた。浮いている。しかも、加速度を上げながら陽子に近づいているのだ。
この速さなら陽子の元へ到達するまでの時間は一秒にも満たない。里奈は、スイヘルリンベンを唱える時間はないので、体を縮めて手足で頭と胴だけでも守る対策をとった。
陽子との距離三十センチで、制動距離ゼロでビタッと停止。直後、体全体をとんでもなく重い何かで押されているかのように、地面に向かって急加速した。
下は瓦礫の山。どんな屈強な男が相手の喧嘩でも臆せず戦ってきた里奈でも、流石に死ぬなと思った。
「危ない!」
だが里奈が落ちたのは瓦礫の山じゃなく、勇美の腕だった。ウィッチに変身した勇美が、ギリギリ
のところで里奈をキャッチしてくれたのだ。
「大丈夫?」
ビルの崩壊に巻き込まれたのだろう、勇美は頭から血を出して辛そうな表情をしている。それなの
に勇美は里奈のことを考えた言葉をかけた。
「オレはいいんだよ。それよりもお前の方がやばいじゃねえか」
「私は大丈夫。多分みんなも。ギリギリで変身してるのが見えたから」
里奈は勇美に抱えられたまま、周りを見る。すると確かに全員いた。日和以外は変身して、なんとか逃げきれたようだ。愛が怪我をしているのを見るに、恐らく日和を愛と勇美の二人で守ったのだろう。
また、里奈は初めて奏音と音羽のウィッチとしての姿を見た。奏音は青いタキシードのような衣装で、音羽は全体的に白と黒が多い、ロック系のような見た目で、エレキギターをすとらっぷで吊って肩にかけていた。ギタリストみたいだった。
「あぁ、ならいいか。それより、あいつらは誰なんだ」
里奈が勇美に、地面に下ろしてもらいながら問う。
「あれ、ウィッチだろ。なんでウィッチがこっちを攻撃すんだよ」
だが勇美は目を逸らした。
「なんだよそれ。お前、まだオレに言って無い事あるんだろ!」
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