4話:日和の仲間
里奈が連れて来られた場所は、繁華街から少し外れたところにある小さな廃ビルだった。そこはいつも里奈が繁華街で捕まえた金ズルを〆るところで、里奈はよく来る場所にウィッチのアジトがあったのかと少し驚いた。
里奈は勇美達の後ろをついていき、廃ビルの中へ入る。中は、入り口のドアを入ると広い部屋が一つあるだけという構造で、すでに中で人が二人、窓際で話をしていた。
一人は小柄で派手な少女だ。所々ピンク色の入った黒髪ツインテールに、ヴィジュアル系のような濃いメイク。そしてそのメイクがあっても尚消えないはっきりとした顔立ち。服装も黒色がメインの派手な服で、背中にギターケースを背負っているので完全にバンドマンという感じだった。
対して、もう一人は高身長の美少年。いや、美少女だ。もし男ならあのワイシャツの上からでも分かる大きめの膨らみは大胸筋ということになり、胸部だけ発達した歪なマッチョということになってしまう。だが、女性にしては短くカットされた髪型や、シャツとジャケットとパンツの着こなしや立ち振る舞い、そして男が嫉妬しそうなほどのイケメン顔が、男だと思わせる。
「ただいまー」
勇美が二人に楽しそうに手を振る。
「おかえり!」
「おかえり。大丈夫だった?」
手を振りかえす知らない二人を、里奈は警戒した。もしかしたらまだいるかもしれない、里奈は部屋を見渡す。だがあの二人以外いそうな気配がしなかったので、里奈はその二人に集中することにした。この人数なら変身される前に行動すれば逃げれるというのが里奈の計算だ。
里奈と高身長の方の少女の目が合う。すると里奈に怪訝そうな目を向けてきた。
「この子は誰かな?」高身長の方が警戒心剥き出しで言うので、勇美はさっきまでに何が起きたのかを話した。
勇美が話し終わると、「ふーん」と、尚も疑いの目を向け続ける。「橋本里奈といえば、ここらで一番の問題児じゃないか」
「そうなの? 奏音」里奈はこの高身長は奏音というのだと悟った。
「知らないのかい? 彼女はこの繁華街で一番有名な不良だよ。繁華街を裏で仕切ってるヤクザすら彼女の前を通らないって噂だよ。噂といえば、暴力団事務所に乗り込んで壊滅させたっていうのもあったかな。その噂は本当なのかな?」
里奈は奏音に、睨むことで答えた。これ以上いらないこと喋んなよとメッセージを目力に乗せる。
「でも今は同じウィッチなんでしょ? だったらそんな話どうでもいいじゃん」バンドマンな少女が言う。「仲間なんだったら歓迎してあげようよ」
「仲間になったつもりは」ねえよ、と言いそうになった里奈を勇美が止める。
「そうは言うけどさ、音羽」バンドマンの子は音羽と言うようだ。「ウィッチだからって仲間とは限らないよ。日和を襲う連中だっているんだから」
「それは、そうかもだけど」
「うん。里奈、君は僕らの仲間でいいのかな」
里奈はまだそのつもりがなかったので、「さあな」と適当に答える。
「オレはただ色々説明させにきただけだ」
「説明?」
「ウィッチのこととか、お前らが何と戦ってるのか。オレは何に巻き込まれたのか知りてえ。お前らにはそれを教える義務があるはずだ」
奏音はエコーの方を見る。「まだ何も話してなかったんだ?」
「結界が消えたから、戻ってきたんだ。ここでならゆっくり話ができるだろうから」
「なるほど。じゃあ先に説明責任を果たさなきゃいけない」
「仲間になるかは後決めてやるよ」
里奈の上から目線な物言いに奏音は動じず、「さて、どこから話そうか」とマイペースに考え始めた。
「あ、まずは自己紹介からかな」
「それはいい。お前は奏音、そっちのちっこいのは音羽だろ」
「あれ、僕ら名乗ったっけ?」
「ちっこいって言うな! 里奈もちっこいくせに」
いちいち騒ぐなと里奈がイラつくと、それを感じ取ったのか奏音はそれ以上言及しなかった。
「じゃあまずは。僕らはウィッチ。話を聞く限りドチクショウと戦ったみたいだからここは説明が簡単だね。僕らウィッチはあのドチクショウと、それを使って悪いことを考えている敵を倒すために戦っているんだ」
「へぇ。なんて名前だ? 敵さんは」
「わからない。突如現れて、人を襲い出したから。それにドチクショウを倒すとあいつら、すぐに逃げてしまうんだよ」
里奈は、あのボコボコにした男から色々聞くべきだったと少し後悔した。
「正体もわからないような敵と戦ってんのか?」
「何が目的で人を襲っているのか、も追加ね」
「話になんねえ」里奈は呆れ果ててため息を漏らした。
「だよね。でもウィッチになった以上、戦うしかない」
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