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3話: 日和達の隠れ家へ

里奈は男の方を向く。男は後退り、里奈はそれをゆっくり追った。

「次はお前だ。舐めやがってこの野郎」

「ま、待て!」

 命乞いくらい必死な情けない声に、里奈は引いた。その影響で一瞬動きが止まったので、男は「今だ」と全速力で里奈とは反対方向に走りだす。

「おい!」

 里奈は少し遅れて男を追いかける。走り始める一歩目、里奈はスタートダッシュをより速くするために力を入れて踏み込んだ。

 地面を蹴ると、里奈は男の方へぶっ飛んだ。能力は分かっていたが、自分の向上した身体能力は把握していなかったのだ。里奈は男を巻き込み、地面を転がった。

 転がった先で、里奈は男に対しマウントポジションを取ることに成功。怯える男に向かってナイフを突き立てた。

「や、やめてくれ!」男が顔を手で庇いながら言った。

「嫌だ。お前はぶっ殺す」

 里奈はナイフを振り上げ、男の左腕に向かって振り下ろす。だがナイフが腕に刺さることはなかった。

「えっ」里奈と男の声が重なる。

 里奈はナイフの刃の部分を触ってみる。指は切れない。先端を触っても血が出ることはなかった。つまりこのナイフには刃がついていない。

「は、はははは。ははははははははははは!」

 男は勝ち誇ったように笑う。

「なんだそれは。お前のナイフ、切れないじゃないか。そんなものでどうやってぶっ殺そうって言うんだ?」

 里奈は眉間に皺を寄せながらナイフを眺める。さっきは怪物を一発で倒せたし、能力があることも理解しているのに、こんな欠陥があったのだと、里奈はがっかりした。

「あっ」と里奈は声を漏らす。「そうだ、そうだよ」

「な、なんだ」

「ナイフに刃がなくたって、このままナイフでも拳でもお前を殴りまくればぶっ殺せるよなぁ」

「えっ?」

 里奈はナイフを手放し、両拳を固く握る。

「もう許さねえからな」

 繁華街に男の悲鳴が響いた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「で、お前ら。全部説明して欲しいんだが」

 男を顔がボコボコになるまで殴ったあと、里奈は勇美達の方へ歩み寄る。ナイフはしっかり握り、刃の先端を相手の方に向けていつでも刺しに行けるよう備えていた。

「そ、そうだね。そうだよね」

 勇美は里奈の後ろにいる倒れて動かない男を見ながら顔を引き攣らせている。

「キミ。今からいうことは信じられないかもしれないが、どうか信じてほしいんだ」

「当たり前だろ。ここまで見せられて、やらされてるんだぞ。もう何言われても驚かねえよ」

「分かった。でもまずは自己紹介からだ。ボクはエコー。キミは?」

「里奈。坂本里奈だ」

「よろしく、里奈」

 エコーと名乗ったぬいぐるみは里奈に握手を求める。だが里奈はそれを無視し、他のウィッチ達の方に顔を向けた。

「勇美、愛、日和でいいんだよな」

 勇美達三人はお互いに顔を見合わせる。

「まだ名乗ってもないのにもう名前覚えたの?」

「お前ら何度も呼び合ってたじゃねえか」

 里奈は、いろいろ便利になるので人の名前を覚えることをよくしていた。だから本人に自覚は無いが、あれだけのやり取りで人の顔と名前を一致させることは得意だった。

「で、お前らは何もんだよ。なんなんだウィッチって」

「さて、何から話そうか」

 エコーは考える仕草をする。そして空を見上げた。里奈もつられて見上げると、空は元の星の見えない夜空に戻っていた。

「あ、結界が消えたな」

 急に周りが騒がしくなった。さっきまでいなくなっていた人々が、いつの間にか現れていた。怪物が消えたからかだいぶ落ち着きを取り戻して入るが、まだパニックになっている人もいて、カオスだ。

 いつの間にか、勇美達の格好がそれぞれの学校の制服に戻っていた。勇美と愛はブレザー、日和はセーラー服だ。里奈自身もそうだ。恐らく変身が解けたのだろう。

「結界が解けたのならここにいるのもあまり良くない。ボクらで集まっているところがあるんだ、そこへ移動しよう」エコーが提案する。

 里奈は警戒した。相手のアジトにホイホイついていくというのは危険だと知っているからだ。

 変身が解け、ナイフはもう手に無い。里奈は概算してみる。変身前の勇美たちであれば、裏切られても勝てそうだ。だがアジトにどれくらい人がいるかが分からないから怖い。流石に大男やさっきの怪物がいれば、無事では済まないだろう。でも自分が何に巻き込まれたのか知りたい。

「ついてきてくれ」

 結局里奈は警戒しながらついていくことにし、どこかに向かって歩くエコー達を追った。



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