〜過去から現実世界へ〜
「おーぃ、お前ら!あったぞ!」
「何?あ〜!これだ!懐かしい。」
そこにあったのは、一つのアルバムだった。アルバムには、一枚の写真だけクラスの全員が映ったものだった。
ピンポーンッ ((ピンポーンッ))
「はーいって、あれ?炎じゃん。なんでここに?」
「いや、逆になんで鳳凰がここに居んの?」
「あ〜、おばさんが入れてくれたから。その後、買い出しがあるとかでスーパーに行ったよ。」
「そうなんだ。そうだ。お線香やっても良いのかな?」
「いいと思うよ。あいつにも、挨拶しないとな。」
鳳凰と炎が玄関で喋っている声は、上にいる私にも聞こえて来る。その後、和室に行き、お線香を焚いた。
時間が経つにつれて、色々な人が来た。
真葉・あいつの後輩君。
和室で色んな話をした。
「あいつは、誰よりも頑張り屋で負けず嫌いだったから、昔よく色んな事で勝負をしたものだ。」
「あ〜。確かに、色んな勝負してるの見てたわ。
誰かが、帰ってきた。
「あら。人が増えてるわね。なら、おやつ食べていきなさい。甘くて美味しくて、よくあの子が食べてたもの買ってきたから。」
「あっ。おばさん、ありがとうございます。」
「あっ。お茶は僕が淹れるんで、少しでも休んでて
下さい…。」
おばさんは、すごく落ち着いた表情でお辞儀をしていた。
心の中では、まだ整理が追いついていないのだろう。そういう表情に見えてくるから、よく分かる。
ー20分後ー
俺らは、あいつの家を後にしてお寺に行き、お墓参りをしに行った。あいつのは、分かりやすい。
何故なら、挿してる花が“薔薇”と“ガーベラ”だからだ。
普通、お墓に挿す花は“仏花”や“ホオズキ”。そこら辺のが多い。
「ほら、お前が好きな花だぞ。最近また、値段が上がってきて昔みたいに数が少ないけど、花が綺麗だから許してくれ。」
「やっほ〜。ねぇ、何で私たちを置いて先に行っちゃうの?あの時言ったじゃん。“置いていかないでね”って。そしたら、“大丈夫!置いてかないよ”って言ったよね…。どうして…。」
ごめんね。みんな。私だけ、逝っちゃって。
本当にごめん。なにも教えてあげられないまま…。
・2035年3月5日(水):思い出の丘
「懐かしいな。ここにくるのも。」
あの後、お菓子を食べて、俺と幼馴染の2人以外帰って行った。だから、久々に“あの丘”に来た。
「あぁ。久々だ。昔とあんま変わってないんだな。」
「そうだね。でも私、久々って言うほどではないんだよね。正直に言うとちょうど3週間前に一回だけ“りんちゃん”と一緒に来たんだ。」
「えっ!?ズルッ。」
もう、ここに立つと笑うしかない。
でも、あの綺麗な星々は今でも覚えている。
みんながとても静かに空を見上げていたからだ。
あの空は、もう2度と見れないだろう。
そんな“見れる”奇跡なんて、そうそうない。
あったとしても、次に来る時は3人だけだ。
何度も何度も思った。
あいつが帰ってきてくれたら、
どんなに良いことかを。
そんな事言っても、神様が叶えてくれる
訳でもない。
俺は、あの時の光景を思い出していた。
そして思った。
“あの時、こうなると分かっていたのか?だから、不自然な質問、不自然な動きなどして居たのか?”
でも『そんなことをする必要がない』って、俺の心が言ってる気がする。
《なぁ。お前だったらどんな考えが浮かんだんだ?
教えてくれよ。俺の目の前にもう一度…。》
「ん?ちょと待て。梨穂、“りんちゃん”って誰の事言ってるんだ?」
梨穂が最初の会話の方で“りんちゃん”と言う名前を出して、誰なのか分からなかった。
こいつに、そんな名前を持つ友達がいた覚えがなかったからだ。もし、あだ名だとしても“りん”って言う子は、居なかったはずだ。
疑問が重なって、心の中が煙があるような
モヤモヤ感があった。
「ん?誰って、分からないの?」
「分かってたら聞かねぇよ。」
「あ〜ぁ。ごめん。“りんちゃん”って言うのはね、“〇〇ちゃん”のことだよ。鳳凰的にいうと〇〇だよ。」
驚きの表情が隠せなかった。
「えっ!?マッ…マジで?やばい。今さっき言った言葉が、すげぇ恥ずい…。」
俺は、女の子みたいな仕草で、顔を手で覆った。
梨穂と炎が、俺のことを面白がってスマホで写真撮ってやがる。クソが〜!
「ちょっ。やめろ。撮るな!」
「ねぇ〜、鳳凰。手をどかして。撮らないから〜ww ほらね、スマホ持ってないでしょ。」
「いや、絶対笑ってるから、炎が梨穂のスマホ持ってるんだろ!分かるんだよ!」
嘘泣きだってわかる声で。
「ひどい…。友達を疑うなんて。鳳凰って、そんな事言う人だったんだね…。」
「わー、鳳凰がひどーい。(棒)」
数十分経って、2人とも満足したのか、写真を撮らなくなって。すっごい満面の笑みで梨穂が急に言葉を発した。
「ねぇ。鳳凰。本当はね、3週間前に会った時、元気な姿じゃなくて、もう腫瘍が進行していった状態で、車椅子に座って数時間もしないで病院に戻ったんだよ。すごく辛そうで。病院戻った後、急に容態が悪くなってその後の面会が一回も出来ないほどの状態で…。」
梨穂が急に涙目になって話し始めたから。あいつが誰にも話さないで欲しいと頼んだのだろう。それを梨穂はずっと心にしまっておいた。偉い事だ。友達との約束を守れて。褒めるのに値する。
「ありがとう。梨穂。教えてくれて。」
疑問は、解けてスッキリしたけど。
やべぇ…。
物凄く頭をハリセンで叩いてやりたい奴が、
浮かんだ…。
同時にイライラが込み上がってきた。