〜誰のものでもない世界へ〜 ②
・□□〇〇年×月▷日(水): 日常
あれから、1年という月日が流れた。
誰かが、SNSにあの日の出来事を投稿したせいか、テレビをつけると、『あの歌い手、「凛音」が戻って来た』など、色々な番組やネットで話題になった。
幸いにも、その投稿には顔が写っていない事もあり、未だにどんな顔なのかも世間では分からないままであった。それに関しては安堵した…
私たちは、高校2年生になったが、毎日、「凛音」として扱われる始末。
〈私の平穏な日常を返してくれ!!〉
とも叫びたくなる始末。
どうしたらいいのかも、分からない。
「おーぃ。次、移動教室だって。早く行かねぇと先生に怒られちまうぞ!」
「そうだね。走るか!ダッシュだ!」
前から先生が来て、怒られた。
「おい!ほら、そこ!廊下を走るな!まだ予鈴もなってないだろ!」
『すみませーんっ!』
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
今更ではあるけど、私が通う高校は、音楽と美術を専門とした高校。中学校とは違い、5年間の教育である。
でもある一つの問題を抜ければ、至って普通の高校だ。
その問題というのが、先生たちが進級させないように難しい課題やテストなど作って出してくる所だ。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「うーん。この歌を、どういう感じで歌えばいいか?」
「何か険しい顔しとるけど。どしたん?」
背後から、誰か分からないけど声をかけられたから、後ろを振り向いたら、
「あっ。真葉じゃん。今日は、ちゃんと来たんだね。偉い。偉い。」
頭を撫でてあげると、
「やめいっ!頭撫でるの。てか、僕が毎回来ないみたいな言い方しないでくれ。」
「えっ!?でも、実際に来てないよね。」
「・・・。来てないんじゃなくて、毎回用事があって来れないだけ。」
「それ…。学校に来る気ないよね。鳳凰からメールが送られてきたよ。[真葉がまた二度寝してる。]って
用事じゃないよね?」
「・・・。まぁ話変えるけど、どしたん?今にも怒鳴りたそうな顔して。その顔、おもろいでww」
一生懸命やってるのに、悩んでる顔を笑ってきて
イラッとしてきたが、仕方なく課題を真葉に見せた。
【問1:次の歌詞に強弱をつけなさい。また、♩=〇〇(テンポ)も書きなさい。】
「・・・。ごめん。僕も分からん。てか、歌詞なんて何処にも書いてないよな。」
「そうだよね。どうしたものか…。」
このように、先生たちが意味不明な問題を突きつけてくる。
「あー。疲れた。マジで授業嫌い!学校終わったら、
カフェで甘いもの食べたーい!!」
ー昼休みー
『ご飯っご飯っ♪』
ノリノリでスキップをしながら、鳳凰たちが待つ、中庭に向かう途中。
〈誰かいる!?でも、私、あの子知らない。一体誰だろう?〉
〔LaLa La〜 あの向こうで待っている 世界の人よ 君とはもう2度と会えないと分かっているのに〜♪〕
〈なんで、その曲を知っているの?〉
疑問がありながら、その子を見つめ続けている。
・◇◇〇〇年▽月□日(水):昼休み・続
〈誰だろう?なんか聞き覚えがあるような曲だけど・・・。でも、なんであの曲を!?〉
桜の木の下で歌っていた子に向かって大声で、
「待って!!」
驚いたのか、その子は私に気づくなり、その場から去ってしまった。
「あっ…。」
私は、その場を後にした。そして、翔真たちの元へついた。
「はぁ〜。ねぇ、私って嫌われてるのかなぁ?」
疑問に思っていることが、口に出てしまった。
「そんな事はないと思うぞ。あぁ。弁当うめぇー。」
「あー。てか、なんか歌ってる声が聞こえてきたから、夜舞が歌ってるかと思ったんだけど。歌ってなかったのか?」
「私、授業とカラオケ以外の所では歌わないようにしてるのに、そんな事したら余計日常生活が崩れる。」
今日一日、昼休みに話してた内容が帰りまで続いた。私は気になり過ぎて、明日学校に行くのが待ち遠しいかった。
あれは、一体誰だったのだろうか。そして、何故あの歌を知っていたのだろうか。色んな疑問が出てくる。〈だって、あの曲は、ネット上でも出していない曲で。私以外知らないはずなのに。〉
「おーぃ。夜舞!カフェ着いたぞー」
「あっ、本当だ。なに頼もうかなぁ〜。」
よし。今日は奮発して、いっぱい食べよう!
「すみませーん。いちごパフェとショートケーキ、
モンブランにカフェラテを下さい。」
店員さんがお辞儀して去っていった。
これからも物語という、とある一部を
ある少女が死ぬまでに、
日記にしてこの世に残した物である。