表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/447

宿屋のこと

「そうよね。気になるだろうから話しておくわ」


「あぁ」


「まずシーマが気を失ってたのは2日間ね。風の日に気を失って今日は土の日だから」


「2日間も…」



この世界の一週間は六日間だ。

火風水土光空と魔法属性のように分かれている。

ちなみに1日24時間と1年12ヶ月は変わらないが、1ヶ月は30日に固定されている。

季節も黄・青・緑・白と、4つの色で分かれていて、今は黄の季節だから春夏秋冬でいえば春に当たるのだろう。



「おじさんたちの宿屋については、手伝ったことのある私の両親が…。でも、常連さんが気を利かせてくれて、『食事なしで構わないから』って言って、いろいろと助けてくれたみたい」


「そうなのか…。ガンマおじさん、リーザおばさんはもちろん、お客さんたちにも迷惑かけちゃったな…」



セレナの両親であるガンマとリーザは、実は随分と若くて30台半ばだが、余裕で20代に見える。

普段は畑仕事などをしているが、俺の両親が宿屋を始めた頃から親しくしてくれて、忙しい時などは何度も手伝ってくれていた。

常連さんとはたぶん元冒険者仲間のフォルティスさんたちのことだろう。Aランク冒険者で、この街に来たら必ず泊まってくれるし、僕が冒険者になるって時もいろいろと世話をしてくれた。



「こんな状況だもん。仕方ないよ」


「そうは言っても、俺の家のことだからね。申し訳なく思ってる」


「これからどうするの?」


「まずは家に帰って、みんなに挨拶しないと。もう大丈夫だよって」


「まだ目が覚めたばかりじゃない! 無理しちゃダメだよ!」



ベッドから起き上がろうとする俺を、押さえつけるようにセレナが抱き着いてきた。ほんのり甘い香りがして、もう少しこのままでもいいかなって思ったけどそうもいかない。早く帰らないといけないからな。



「ごめんセレナ。絶対に無理はしないから家に帰らせて。お願いだ」


「そこまで言うんだったら、神官に聞いてみるよ。そこで動かないで待ってるんだよ」



そう言うやいなや、セレナは俺から離れて部屋を出ていった。

セレナは光属性の初級魔法ヒールを使えるってこともあって、教会関係者とも面識があるから何とかなるかもしれないな。



これからどうするのか。


実は答えなんてとっくに決まってた。


宿屋をほっぽり出して冒険者を続けるわけにもいかないから、冒険者は休業して、俺1人で宿屋をやっていくことにした。

俺が引き継いだことなんて少ないかもしれないけど、両親が俺に残してくれたものを大切にして、これからもそれらと共に過ごしていきたい。そう思えるようになった。



不安は尽きないけど、歩き出さないと前へは進めない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ