こっちの日常
あの抗争があった日から1週間が経った。
あんなにあった死体の山と建物はいつの間にか無くなり、新しく”ガンドの薬屋“という店がオープンしていた。中に入ってみたが翔陽には字が読めず何を売っているのか分からなかったが、緑色の液体とか赤色の液体とか見てるだけでもワクワクした。
翔陽はこの1週間は元いた場所よりも楽しく、気楽に過ごせていた。
なんだかんだ怖い人は多少いるが住めば都とはよく言ったもので変なところに迷い込まなければなんて事はない、普通の街だ。
今はモンモンとカンカンに連れられ服を買いに来ている。
元々身一つでここに転移させられたので持っている服はこの制服一着しかない。
服を買うためのお金も働いて手に入れた。この街で働くと言っても薬物を売るとか、人を殺すとかではなく“冒険者ギルド”というところで依頼を受け、それをこなすという異世界ならではのワクワクするものだった。
『ショー兄早く入るの』
「あ、うん」
“マルコリッツロイ“という服屋に入る。
「いらっしゃい♡どんな服を探してるの♡?ってあら双子ちゃんじゃない♡」
モンモンとカンカンは顔見知りだったようで、店員さんだろうか身体がすごい大きくごつい男性と仲良さように話している。
翔陽は少し戸惑いながらもペコッと一礼をする。すると男性も翔陽に笑いかける。
『ショー兄に合う服ちょうだいなの』
「ショー兄?あ〜こっちの綺麗な顔のおとこの子に合う服ね♡」
『なの』
「じゃ試着させてあげるからこっち来なさい♡」
「あ、え、ちょ」
翔陽は店員さんに手を握られながら試着室のような所へ連れていかれる。店員さんの手が思いのほか綺麗でスベスベでちょっとドキッとした。
「はいまずはこれ着てみなさい♡」
「あ、はい・・・あの〜カーテン閉めてもらっても・・・」
「あらごめんなさい♡」
シャーとカーテンを閉め、翔陽は渡された服を試着してみる。
渡された服は全体的にダボッとしたモノクロの服。翔陽にとって初めてこういう物を着たので自分で似合ってるか分からないのでカンカンとモンモンにも見てもらう事にした。
「どうですか?」
『似合ってると思うの』
「そうですか・・・」
「あらあんまお気に召さなかったの♡?」
「いえ、こういう洋服を着たのが初めてだったので・・・よく分からなくて・・・」
「まぁ♡!そんな綺麗な顔してるのに勿体ないわ♡♡じゃあ私がこれからコーディネートの楽しさを教えてあ・げ・る♡」
と鼻息が突然荒くなる店員さん、そこからは色々な服を試着した。
ピチピチの白T、カッコイイ男の人が着てそうなジャケット、なんとか魔法学校の制服、明らかに女性物のスカートなどなんか・・・マネキンになった気分だった。
「あら♡これが一番似合ってるわね♡」
『「わたし」「私」たちもそう思うの』
そう言われた服は、黒と青を基調にした首元にモフモフの付いた服、手元がブカブカで捲らないと手が出ないがそれがファッションらしい。
その後も試着を沢山したが先程の服と最初に着たダボッとしたやつ、あとスーツのような服も一つはあった方がいいとの事で買った。
「お会計は60500ガンよ♡」
「・・・結構高いんですね」
「これでもまけてるのよ♡素材がいいもの使ってるからね♡」
翔陽は腰に着けている布袋から金貨6枚と銅貨5枚を渡す。
この世界の通貨の価値は100円=50ガンなのかな?正確には分からないがそのくらいだ。
貨幣の種類は金貨=10000ガン、銀貨=1000ガン、銅貨=100ガン、真鍮貨=50、10、1ガンとなっている。真鍮貨は形を変えて3つの種類に分けられている。
「またいらっしゃいね♡」
「ありがとうございました」
翔陽は久しぶりに服屋に入ったが服を着るのが意外にも楽しかった。服を着ているだけなのだがなんかワイワイしてるだけで楽しかった。
『ショー兄嬉しそうなの』
「ん?あ〜そうですね、楽しかったからですかね」
『なら良かったの』
翔陽は家に帰り早速買った服をエラに「見せろ」と言われたので着てみる。
「おぉ似合ってるじゃねぇか」
「まぁ良いんじゃねぇの?俺ならもっと派手なやつにするけどな!」
『ジャイルはセンスないの』
「なんだと!?」
『あっはっはっは』
という他愛のない会話で笑える今が1番楽しい。
その後はザイカンの
「わえが昔のころは〜〜〜」
と昔話が始まってしまった。みんな無視しながら各々何かをするけどそれもまた翔陽にとっては幸せな時間。
これから頑張っていきますので、面白いと思ったらブックマーク、評価をよろしくお願いしますm(*_ _)m