散歩日和
時は夜になり、外はシンと寝静まる。まるで世界に誰もいないかのように静かな夜だ。
しかし翔陽の鼻はしっかりと危険を察知して痛みとしてまるで警鐘のように知らせる。
明らかに今までよりも強い痛み。
鼻の痛みがそのまま外にいる人たちの悪意の強さ。
「・・・本当にやるんですか?」
「なんだ?やっぱり怖いのかショーヨー?」
「そりゃ・・・そうですよ・・・」
「まぁ安心しろ」
「この状況で安心出来ますかね?」
「所詮、外にいる奴らはチンピラだチンピラ、散歩に行く気分で良い」
エラは心配する翔陽にそう言う。安心させるためだろうか、いやこの人にそんな事出来るわけが無い、それでもこの人がそう言ったのだからと翔陽は心を落ち着かせる。
「よし!お前ら集まれ!」
エラの一言で赤獅子組が一塊に集まる。
「これから家族全員で散歩に出掛けようと思う!」
「はい!エラの姉御!」
「いい返事だ!」
「デヘヘ」ジュル
エラに褒められたジャイルはだらしない顔になり、ヨダレを垂らしそうになる。それを見ていた翔陽、モンモン、カンカンは「うわぁ」と声には出していないが心の中で3人息ぴったりに揃う。
「散歩の先頭はじい!」
「まぁ妥当じゃな」
「次にモンモンとカンカン」
『分かったの』
「次にショーヨー」
「分かりました」
「最後にあたし!」
「・・・エラの姉御」
「あん!?」
「・・・俺は?」
「あ・・・」
明らかに忘れられていたザイカンは少し泣きそうな目でエラを見る。もう泣いているのかもしれない。
「え〜と・・・お前は・・・そこら辺適当に付いてこい!」
「・・・・・・」プルプル
雑に扱われたジャイルは小刻みに体を震わせている。
ここでまた「うわぁ」という心の声がぴったりと揃う。
「・・・わっかりました!任せてくださいエラの姉御!」
しかし雑に扱われたとは思えないほどの元気な声でジャイルは返事をする。本当にその扱いでいいの?
「よし!じゃあ並べ!」
その言葉の通りに
ザイカン
モンモン、カンカン
翔陽
エラ
ジャイル
家の扉の前にこの順番で並ぶ。やっぱりジャイル可哀想じゃないと思う翔陽に対して本人はウキウキで並んでいる。もはや並んでいない説まで翔陽の中で出ている。
「じゃあザイカン歩け!」
「ほいほい、じゃいくぞ?」
ザイカンは扉を開け、ゆっくりと歩を進める。
さも本当に散歩にでも出掛けるかのように悠然に歩を進める。
そんな足取りとは裏腹に目の前には明らかに敵意を持った無数の人
先も見えないほどの凄い数の人。
それでもザイカンは歩を止めることはしない。
それが強者の在り方であるように、立ちはだかる無数の人たちへ向かっていく。
しかし相手もそんな隙だらけの標的をそう簡単に進ませるほど呑気な人達ではない。
「舐めやがって!」「ふざけんじゃねぇぞ!」「この人数だビビることはねぇ!」
「お前らやっちまえ!!」
その一言で一気に10人程の人がザイカンへ武器を振り回したがら突っ込んでくる。
━━━━━━━シュパッ
「・・・え?」
翔陽にその音が聞こえた時には既に立ち向かったであろう人たちの頭が冷たい道に落ちていた。
・・・ぶしゃぁぁ
と後から切られたことに気づいたかのように血が吹き出す。
その光景はあたかも前衛的な芸術のように身体だけを残して血を出しながら立ち尽くす。
先程までの威勢のいい人たちは人数差からの余裕は消え去り、次は自分の番かもしれないという緊張感と恐怖の感情に頭を埋め尽くされる。
「魔法も使えぬ・・・剣すら満足に使えぬ・・・そんなお主らが何人何千人何万人集まろうと」
「ただの塵じゃよ」




