いつも通り
「ということじゃが・・・どうするかの?エラ嬢?」
紙を読み終えたザイカンがエラに問う。しかしみんな薄々気づいているエラがどのような答えを出すか。
付き合いの短い翔陽ですら分かりきった質問である。
「殺るだろ」
「いつも通りじゃな」
「けどまだ手を出さねぇぞ・・・今は待て・・・あっちから手を出してきた時に殺る」
エラはそう言いながら微笑む。翔陽はその顔に父の面影を感じたが無邪気さと凶悪さを兼ね備えたエラの今の顔は父の優越感から来るにやけ面よりもっと恐ろしく感じた。
「あい分かった」
「分かりましたエラの姉御!手を出されてから殺ればいいんすね!?」
「そうだ!」
『普通先手必勝なの・・・やっぱり馬鹿なの・・・』
「馬鹿で結構!あたしはどうせこの拳しか持ってないからな!」
エラは両手の拳を付き合わせてバシバシと音を立てる。正確にはドゴンドゴンのような音を立てながら翔陽の顔に強い扇風機位の風が来る。
そういえば人形の依頼を受けた時のあの人の名前・・・モードさんだったよな・・・まぁ同名の他人だろうと翔陽が考えているとザイカンが話しかける。
「ショーヨーくん」
「ん?どうかしましたか?」
「軽い感じでまた抗争の予定が決まったが今度の抗争は前回よりも大きな物になるじゃろう・・・じゃから君は今度こそ人を殺す事になる・・・出来るかの?」
「・・・」
ザイカンの言う通り翔陽は今度こそ人を殺す事になるだろう。
しかし翔陽はもう既に覚悟を決めている。この人たちと一緒にいるために捨てられない翔陽は何でもするという覚悟が出来ている。
「大丈夫です・・・ちょっと怖いですけどね」
翔陽ははにかみ笑顔でそう言う翔陽をエラが頭をガシッと掴みながらワシャワシャと撫でる。
「お前なら大丈夫だ!あたしの勘が言ってる!」
「・・・なら大丈夫そうじゃな」
「まぁションベン漏らしても俺は構わねぇけどな!」
「・・・」
『・・・それはお前なの』
「おい!」
「確かにの・・・」
こうしていつも通りジャイルが翔陽を弄ろうとして逆に弄られるというお決まりの漫才が展開される。
この日はこのまま“普通”の1日を過した。
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朝目を覚ましモンモンとカンカンを抱っこしながら下へ降りると既にエラとザイカンが起きて椅子に座っていた。
「おはようございます」
「おう、すっかりお母さんになっちまってるな」
「あはは可愛いんで全然良いんですけどね、ほら2人とも椅子に座って」
「・・・嫌なの」「・・・分かったなの」
モンモンは大人しく椅子に座ってくれたのだがカンカンがどうしても手を離してくれない。カンカンは意外と甘えん坊だということがここ最近で分かった。
それと魔法の言葉も見つけた。
「朝ごはん作りますから座って待っててください」
「分かったの」
ごはんというワードに反応してシャキっと直ぐに椅子に座るカンカン。
翔陽は苦笑いをしながら朝ごはんの準備を始める。
すると家の出入り口のドアの方から「ドンドン」と叩く音と共に下の隙間から封筒が中へ入ってくる。
「あん?誰だこんな朝から迷惑な奴は!」
「わえが見てくる」
ザイカンがドアへ近づき、静かに外を確認するが怪しい人は見当たらず、封筒を手に取りもう一度椅子へ座り直す。
「え〜と・・・エラ嬢またラブレターじゃよ」
「またか!昨日の今日だぞ!アホらしい!さっさとかかって来いよ!」
エラは椅子から立ち上がり机に足をかけながら叫ぶ。その怒号のうるささにモンモンとカンカンは耳を塞ぎ顔を歪める。
「あとこんなのも入ってたぞ」
ザイカンは封筒の中に同封してあった粉を机の上にバサッと出す。
それは以前ザイカンが説明した綺麗な深緑色の薬物のインテゲルであった。
「なんだぁ?賄賂かぁ?要らねーよ」
エラはインテゲルを鷲掴みにすると勢いよくゴミ箱に投げる。
「手紙には他より良質なインテゲルと書いてあるの」
「良質だからなんだ!やった事ねぇからどのみち分かんねぇよ!」
「ちなみに今のを売ったら金貨15枚にはなるそうじゃ」
「・・・早く言え!」
金貨15枚・・・日本円でおよそ30万円だと知るとエラは直ぐにゴミ箱の中を漁る。
しかし投げた衝撃のせいだろうかゴミ箱の中で薬を包んでいた袋が破け、ゴミ箱の中を鮮やかに星屑のように彩っている。
「クソォ!!酒屋のつけが溜まってんだよ!!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
『・・・・・・』
この時エラ以外のみんなが思った。
こんな人にはなりたくないと




