召喚の儀
――んっほぉぉぉぉおおおおぉおおおおぉおおおぉおおおおぉおおおおおおおおおおおおおぉおおおおぉおぉぉっッッ!!!
アルフレッドの雄叫びが早朝の静かな森の中に轟いていた頃。湖の方角から聞こえる彼の叫び声に耳をそばだてる者がいた。ウィンストーン村の住民、マウリッツである。『横井正一』降誕の地として知られる『ヨコイの森』の管理を村から一任されているマウリッツは定期的に森の見回りをしなければならないという義務があったのだ。
「獣の声……ではないな。 となれば余所者か。 よりにもよってこの大事な時期に」
ウィンストーン村で5日後に行われる『召喚の儀』は決して外部の人間に見られてはいけない村の儀式のことである。もし『召喚の儀』を村人以外の者が目にした場合、言い伝えではその者を神の供物として天に捧げない限り、儀式は失敗に終わってしまうらしい。そして儀式が失敗した場合、神は村人らの怠慢をお怒りになり、冥府魔道の理が村に流れ込むことになると言われている。それはつまりこのウィンストーン村が現実世界から隔絶され、地獄と同化するということと同義であった。
――儀式を失敗させるわけにはいかない。不穏分子を早い内に取り除いておかねば。
マウリッツは熱い使命感を胸に、『ヨコイの森』の湖へ足を向けた。
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『召喚の儀』は乳輪ピック(乳輪のデカさを競い合う品評会 ※色や味も加点対象となる)と同じ、4年に1度という周期で開かれるウィンストーン村にとって最も重要かつ特別な行事だ。
『召喚の儀』の手順については村人の口伝によって現代まで脈々と語り継がれており、『横井正一』をこの地に降臨させるには彼と同じニホン人の男が2体、女2体と合計4体必要とし、扉(GATE)を開き、異世界から皮膚が緋色いニホン人を4体この地に召喚するためには生命力溢れる赤子の命を捧げなくてはならないと言われている。
そのため5日後の『召喚の儀』ではペーデル夫妻の下で産まれた生後4か月の赤子を用いることになっている。夫妻は喜んで村に赤子を差し出した。これにより夫妻は村での絶対的な地位を獲得。自治組織の一員となり、村民らを管理する側に回った。
多大なリスクを孕んでいるにも関わらずウィンストーン村が『召喚の儀』に執心するのにはある理由があった。『災厄の日』を逃れるには、天使長である『横井正一』から多大な恩恵を受ける必要があったのだ。
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「イヤじゃ、イヤじゃ。 ワシはもうオナ禁などしとうない。 早うぴゅるぴゅると気持ちよう射精したいのじゃ。今すぐにでもチンチン扱いて絶頂アクメキメたいぞい。 後生じゃからこれを外してくれんかえ?」
「駄目です」
「そんな……世界は何て残酷なのじゃ~。おっそろしい喃」
一糸まとわぬ姿となった白髪交じりの男性老人が床の上に身体を放り出して、まるで子供のように手足をばたばたと動かし駄々を捏ね始めた。彼の下腹部には巷ではあまり見慣れない金属製の器具が取り付けられている。それはアンチマスターベーションアイテムの一種であり、男性用貞操帯と呼ばれる代物あった。いわゆるチンポアーマーである。チンポアーマーの亀頭部にはスリット状の穴が空けられている。これにより衛生面でやや難はあるが、取り外すことなく排尿することが可能だ。
マスターベーションができないだけだと思われがちだが貞操帯を装着することによって発生する被害は他にもある。例えば排尿時。貞操帯を装着するとがっちりと下向きのままチンポが固定されてしまうため立ったままオシッコをすることが難しい。自在に利き手でチンポの位置をコントロールすることができないため、立ったままオシッコをしようものならアーマーの中でお漏らししてしまうというみっともない結果を引き起こすことになるだろう。そのため貞操帯装着時は便座に座って放尿することが村では推奨されている。
貞操帯装着時は勃起することさえ許されない。先ほども述べたが、貞操帯を装着するとチンポは下向きの状態で固定されてしまう。血流が海綿体に集中し勃起したチンポは通常時よりも大きく、そそり立つ塔のように上を向こうとする。密閉されたアーマーの中でもし勃起するようなことがあれば恐らく身を焦がすほどの地獄の苦しみが被装着者を襲うだろう。
「お義父さん。召喚の儀までの辛抱です。頑張って堪えてください」
鼻筋が高く、切れ長の目が特徴的なモーリス・ペーデルが耄碌傾向にある妻の父親に向かって辛抱強くオナ禁を言い聞かせていた。せっかく苦労して赤子を拵えたというのにここで義父が村のしきたりを破るようなことがあっては全てが水泡に帰することになる。
「あと何日待てばいいのじゃぁ~」
「5日です」
「サイアクじゃぁ~」