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とある盗賊の話



 今日も城下町を()()中だ。目ぼしいものがないか吟味しながら。


 この辺りは人が多くて比較的盗りやすいほうなんだぜ、他の町と比べて。金持ち多いし。

 盗ってくださいって言わんばかりに、開けっ放しのカバンとかポケットとかに堂々と財布突っ込んでさ。ぼ〜っと油断して歩いてんのよ、みんな。


 だから、そこをサクッと頂いちゃうわけ。

 な、簡単だろ?いくら衛兵が見張ってるったって、人ごみの中にいちゃさすがに気づかない。


 それに俺、これでもなかなかスリうまい方なんだぜ。同じ盗賊仲間の中でも。




 そろそろ時間かな?……いや、まだ大丈夫か。

 あんまり喋るのに集中して、間に合わなくなっちゃ困るからな。


 何がって?

 ほら、この街の真ん中にでっけぇ城あるだろ?

 国章の入った赤い旗が立った、ばかでかい石の城。この街のシンボル。


 もう少し日が暮れたらそこに忍び込もうと思ってるんだ。


 なにしに行くのかっていうと……あんまでかい声じゃ言えないんだけど……実は、毎晩こっそりそこの姫様に会いに行っててさ。

 へへっ、すげぇだろ俺。


 えっなんでかって?

 ん〜、まぁなんていうか……話すと長くなるんだけど、聞いてくれる?




 いや……それがさぁ、前に一度しくじって衛兵に捕まったりそうになったことがあって。


 基本的にはバレて捕まるなんてヘマ滅多にしないんだけど、その日はちょっと例外でさ。

 歩いてたらいきなり知らないばあちゃんに呼び止められて、壺を取り返してきてほしいって頼まれちゃってさ。

 なんか相当大事なやつだったらしいけど、何も知らない屋敷の使用人が古くて汚いからってどっかに売っちまったんだとか。


 面倒事はまっぴらごめんだし無視しようと思ってたんだけど……あんまり必死に泣きついてくるもんだから、なんだか断れなくってさ。


 んで、売られた店は見当ついてるって言うからそこ行ってさくっと盗ってきて。

 そんで返してやろうと思って引き返していって、あともう少しでばあちゃん家に着く……って時にちょうど衛兵に見られちまったんだ。背中にでっかい壺背負ってたからな、めっちゃ目立ってたし。


 どこに隠れてたんだか、あっという間に何人も集まってきて囲まれちゃって。俺が盗んだって思いこんでるんだ。捕まえる気満々で。


 確かに嘘じゃないけどさ……でも、あくまでこれから返しに行くってとこだったんだぜ?俺の物にする訳じゃねぇ。

 もちろん、俺だって黙っちゃいらんねぇ。弁解したよ何度も何度も……でも全然駄目だった。

 ほんと石頭っつ〜か、融通利かないよなぁあいつら。


 んで、もう駄目だ!捕まる……!って時に、突然ローブを着た女性が現れた。

 どう見てもその辺の町娘とは違った、なんとなく上品な雰囲気の人。


 この人は罪人ではないわ!って言い切って。そしたら全員一斉にさあーっと下がっていってさ。

 鶴の一声ってやつ?別に大声出したわけでも、暴れた訳でもなくたった一言で。


 俺が驚いてポカーンとしてる間に、全員どっか持ち場へ戻っていった。

 ほんとに一瞬だったよ。あっという間。




 それで、誰もいなくなってからその女性はローブのフードを外した。ああ息苦しかったぁとか言いながら。


 あれ?この顔知ってるぞ?ってなってさ。

 どう見ても姫様だったんだよ、この国の。つい最近婚約が発表された、誰もが知ってる超有名人。


 直接見たことはなかったけど、新聞とか雑誌は今もその話題で持ちきりだからな。そこらじゅうでその顔写真をよく見かけたもんだから、すぐピンと来た。



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