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田舎の根暗大学生、陽キャに絡まれる  作者: 古月湖
第一章
4/43

1-3 闇落ち直前の冴えない大学生

 のそりのそりとアパートのさびた階段を下りれば、目の前には無駄に広い田んぼが広がっていた。

 こっちに越してきてからもう一か月がたつので、そろそろ鬱陶しくなってきたころだ。

 初めの頃こそ、この大自然を肌で感じる光景にシャッターを切ることもあったが、今思えばバカバカしい。こんなのネットで探せばもっといい写真がいくらでも出てくるのに。


 遠くからのぴーひょろろろーという鳥の鳴き声に神経を逆なでされつつ、仕方なくバス停を目指す。

 なんとはなしに取り出した携帯の待ち受け画面にはメッセージの通知。

 バイト先からだ。シフト表を早く出せという催促のメッセージだった。

 俺はそれに簡単に一言返して、そのまま携帯をしまう。

 それからまたバス停を目指して歩き始めようとすると、ポツリと水滴が肩を打った。


「マジかよ......」 


 一度傘を取りに戻ろうとも考えるが、そうすると遅刻が確定する。

 仕方なくリュックをかばうように前に抱き、小走りでバス停を目指す。

 五分とかからずバス停に到着。ちょうどやってきたバスに駆け込み一番後方の席に腰かける。


 と、バスの前方の席に見慣れた一団を発見した。

 入学式で声をかけたグループのやつらだ。明るく騒いでじつに楽しそうである。

 ......正直、ちょっとうらやましいと思った。

 でも俺はその輪には入っていけない。 


 ――あれから半月、俺は友達を作れないでいた。


 ***


 ずぶ濡れの上着を脱いでから教室に入り、後ろのほうの席に腰かけた。

 適当に授業の準備をしてからすぐ机に突っ伏す。

 ここ二週間、毎日この動きをしているのでそれはもうスムーズな動きだった。

 俺が突っ伏すのと同時くらいに、さっきバスで見かけた一団が「うぃーす」とか言いながら入ってくると、途端に教室中が騒がしくなる。


「昨日のタコパめっちゃたのしかったくね!」


「まじでそれ。また今度やんべ!」


 朝っぱらから無駄にテンションが高い。酒でも入ってんじゃないかと思う。

 腕枕の隙間から彼らの様子をしてみれば、入学式の時から変わらないメンツで盛り上がっているようだった。

 まったくうらやましい。......いや、バカらしい。

 そのままぼーっと彼らのバカ騒ぎを見つめていると、授業開始時間から少し遅れて教授が入ってきた。

 のそりと顔を上げる。


「よーし、じゃあ先週いった通りグループワークやるからな~」


 教授がけだるげにそう告げると、教室の至る所から不満のうめき声が上がった。かくいう俺も、完全に意表をつかれたので「え」と間抜けな声を漏らしていた。


「三人から四人組な~、はい作った作った」


 教授はそう言うとガサガサ手元にあるレジュメを整理し始める。

 ......ていうか、は? そんなこと言ってたか?

 ロクに授業を聞かずにボケっとしていたので覚えがない。


 が、周りの連中はゆるゆるとグループを組みだした。新しく出来た友人との交流の場が設けられて、まんざらでもないのだろう。ふざけんな。

『し、しゃあねーな......。やらね......?』じゃねえよ......。


「......これはまずい」


 おたおた周りを見渡せば、すでに身内どうしで出来上がったグループがあるばかりで、中にはさっきの好青年の三人グループが目に入った。

 いや、それはいい。今は俺と同じようにペアに困ってるやつを探すのが先決だ。

 ......。

 い、いない......!?

 都合よく二人組のところへ「すいませーん」と飛び込もうとも考えたが、その肝心な二人組すらない。

 そうなるとまあ当然、


「――まだ組めてない人は手上げてねー」


 地獄かな?

 ......とはいえ上げないわけにもいかないので、最低限目立たないようにスッと手を上げた。


「え、あー、ひとりかぁ......」


 その目で見るの勘弁してほしいんだけどなあ......。

 上げたままだと恥ずかしいので、すぐさま手を下げる。


「よし、じゃああそこの三人組に入れてもらって」


「うす......」


 指さされたグループメンバーが俺のほうを見た気がしたが、なんとなくそっちのほうを向くのははばかられた。

 目立たないように教室の端を移動してグループの近くの席に腰かけると、同時に教授が今日使うレジュメを配りだす。

 と、 


「――えっと、佐伯クンだよね?」


「え?」


「あ、ちがった?」


 なんとなく下を向いていた視線を上に挙げれば、その先には見慣れた好青年の顔が待っていた。

 その口角がくっと吊り上がる。


「佐伯クン?」


「えっと、さ、佐伯ですけど......」


「だよね。うん、よろしく~」 


 それだけ言うと満足したのか、好青年、木村優馬は前から送られてくるレジュメを受け取り、「ういー」と隣の茶髪男に渡していた。

 そしてそれから俺のほうを半身だけ振り返ると、


「ういー」


「どっ、どうも......」


 雑に差し出されたレジュメを受け取り会釈を返す。

 ......。

 このノリと一緒に九十分。

 これはちょっと、難しい授業になりそうだなあ......。

 サボってまえばよかったと、心の中で後悔する俺だった。

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