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田舎の根暗大学生、陽キャに絡まれる  作者: 古月湖
第五章
30/43

5-2 冴えない大学生は再出発する

 それからしばらく他愛のない会話を交わして、ふと時計を見やれば、小幡が来てからそろそろ一時間が経とうとしていた。


「――あ、もうこんな時間経っちゃった」


 俺の続いて小幡も時計を確認してそうこぼす。


「なんかダメだったか?」


「いや、べつにダメって訳じゃないけど。あっという間だったなーって」


「まあ、たしかにそうだな」


「やー、久々だから盛り上がっちゃったね、久々だから」


 二回言って強調してきたよこの人。ほんと心苦しいからそろそろやめてほしいんだよなあ......。

 いたずらっぽく微笑む小幡と顔が合わせづらくて、俺はおうとかおんとか適当な相槌で返して視線を窓の外に向けた。


「雨は......まだ全然弱まってないな」


 風はやや弱まったように感じるが、雨のほうはまだまだ強い。雨粒で遠くが見通せなくなっていた。

 たしかいつかの大雨の日もこんな感じだったはずだ。

 その日から俺は小幡と話すようになって、今日もこうして、いろいろあったが和気あいあい......とまではいかないがそれなりに仲良く話している。

 と、小幡が視界の端でふっと笑った気がした。


「――それでさ」


 視線を小幡に戻せば、いつもより数段大人っぽい表情を浮かべた小幡が待っていた。


「ど、どした?」


「ちょっとちょっと~? なーに人の顔ジッと見てるの~?」


「ジッとってほどじゃないと思うけど......」


「あ、もしかして私の顔おかしだった?」


「え、いや――」


 そんなことないと続けようとして、やめた。

 よく見てみれと、いつもよりちょっと雰囲気が緩いというか。もちろんサイズの合ってないダルダルに袖が余った服のせいもあると思うが、それ以外に何か、違う気がする......。

 小幡はどこからともなく取り出したコンパクトミラーで自分の顔を確認すると、


「あちゃー、これは完全に化粧落ちちゃってる......」


 なるほど、道理で印象が違うわけだ。

 小幡レベルの女子でも化粧とかするんだなーとか当たり前のことを考えていると、スッと体を小幡が体を背けた。


「すっぴん、見ないで」


「今更ですか......」


 さっきまでめちゃくちゃ顔合わせて話してたってのに、女子っていうのはやっぱり難しい。


「ま、佐伯なら別にいいんだけどさ」


「......」


「あらら、まーた黙り込んじゃった」


「......うっせ」


 俺になら大丈夫とか、いろいろ解釈の余地ありすぎて反応に困るんだよ......。

 あんな想像やこんな想像を繰り広げてもじもじしていると、小幡がその思考を遮るようにパンッと手を打った。


「ていうか、話めっちゃずれちゃったね。佐伯のせいだかんね~?」


「............はい。そうでございますね」


 言外に不満を伝えたつもりなのだが、小幡は「ほんとだよ~」とか言いやがる。

 まあ、ここにつっかかってもいいことがないのは身に染みてわかっているので俺は仕方なく聞く姿勢を取った。


「さて、じゃあ本日二つ目のお題なんだけど。佐伯は何で私のこと避けてたのかな?」 


「なんでってそりゃ、きまってるだろ」


「わかんないよ~、なんでなの?」


 しっかたねぇなぁと説明を続けてやろうと思ったのだが、はたと思いとどまる。

 俺はいままで小幡から距離を置こうとしてきた理由を整理する。

 小幡は俺といたところを見られて憂き目にあっていた。だから俺は小幡との交流を拒むことで、その状況を打破しようとしたわけだ。

 特に頼まれてもないのに。

 ......。


「ねえ、なんでなの?」


「......それは、だな」


 俺のやってたことってもしかして、ただおせっかい......?

 いやいや! 小幡のためにやったことだし、おせっかいというよりは気遣いのはずだ。実際それなりに成果もあったしな。うん、気遣いだよこれは。

 ......が、その利益を一番受けるはずの小幡が距離を置くことに対して否定的だったのは間違いないわけで......。


「――ま、だいたいわかるけどね」


 視線を戻すとなぜか小幡がうんうん頷いていた。


「私のためにやってくれたことなんだよね? うん、佐伯の視点からしたらその判断はよーくわかるよ」


「......は?」


「そこまで悩むってことは、佐伯もちゃんと考え合ってのことだったとは思うけどさ。無視するならちょっとは私の考えもくんでほしかったよねーって」


「ちょっと......?」


「ん、どしたの?」


 いや、どしたのじゃなくて。


「なに、そんな鳩が豆鉄砲食ったみたいな顔して」


「......それ、全部わかってて聞いたのか?」


「まあ、なんとなくは」


「......それはいつから?」


「はじめからなんとなく予想はついてたよ。で、さっきの佐伯の表情の変化を見て、確信したってわけ」


 あっさりと答えやがる......。

 しかも根拠が怖すぎんだろ。小幡とは賭けてポーカーをしないことを決めた。


「ま、ちょっとからかっただけじゃん?」


「......あ、もうそれでいいや」


 どうやらなにからなにまで空回りしていたらしい。

 俺はどさーと後ろに倒れ、はぁぁと深い息を吐いた。


「じゃ、お互いの理解が深まったところで、そろそろ今後について考えていこっかっ」


 心なしか弾んだ小幡の言葉に、俺は間延びした返事をする。

 ......もう俺がいろいろ考えるよりこいつに全部任せたほうがうまくいくんじゃなかろうか。


「それでは、はじめてもよろしいかな?」


 わざとらしくかしこまった物言いをする小幡。

 しかしこんな頭の弱そうな行動に騙されるなかれ。中身は同級生の男子をもてあそぶ大悪魔だ。

 自分の問題を他人におんぶにだっこで何とかしてもらうのは俺の主義じゃないのだが、


「......よろしくお願いします」


 ここは委託の一手待ったなしである。

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