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⑸『うたと、かたりに、ついて』・・・非在と実在
⑸『うたと、かたりに、ついて』
・・・非在と実在
㈠
うたも、かたりも、録音したり、記録したりしなければ、形としては消失してしまうものだ。場所としては、非在となる。しかし、形ではなくとも、記憶という能力によって、人間は、音や言葉や文章を残存させることができる。これは、確かに、実在として位置する。
㈡
しかし、記憶というものも、いつかは消えてしまうし、伝承しても、在りのまま残すことは難しいだろう。この、非在と実在という問題に関して、リアルタイムの実現象において、うたは、まさに空転し、空間を彷徨い、人々に届くことになる。それは、かたり、としての、会話も同じことだ。
㈢
つまり、録音し、記録しても、実現象には勝るものがないという、結論に達することになる。それ故、うたと、かたりの、実現象程、危うく、また、美しいものはない訳だ。日々それを心掛けることで、まさに、うたや、かたりから、人生に於ける充実が、与えられるのである。