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⑶『うたと、かたりに、ついて』・・・音楽と小説の中核
⑶『うたと、かたりに、ついて』
・・・音楽と小説の中核
㈠
うたと、かたりに、ついて、述べることは、双方が同一現象ではない点で、相似的には論じれない。歌は音楽に分類されるし、かたりは小説に分類される。こういう難しいヴィジョンを前にして、音楽とかたりの中核を担っているのは、現代ではラップだと言えよう。
㈡
ラップは、かたりながら、歌に分類されるという、非常に現代的な試みである。比較的、ラップは歌なのだが、ラップの歌詞を文章に置き換えると、成る程、かたり、という小説的な内容になっている。ラップは、人間の呼吸にまで到達しそうな、或る種の身体表現だと言えまいか。
㈢
考えすぎることは、何かを模倣する。日本の近現代の詩が、もはや詩、足り得なくなっている現状からすると、ラップの形体のほうが、韻を踏んでいるとも言える。しかし、やはりラップは歌である。ラップの先を行くものは、音楽に乗せて、言葉を会話の様にかたること、その試みであろう。うたと、かたりには、まだ、人類の希望が託されている。