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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

紙を纏める道具でどう戦えと?

作者: 名はない

 真っ白い部屋。ここはどこだろう?


「どーもみなさーん」


 明るい女性の声が部屋に響き渡る。

 その声で僕は周りに人がいる事に気づく、クラスメイト達だ。


「おい、ここどこだよ?」


 クラスで不良と呼ばれる上野君が大声で暴れている。


「はい、落ち着いて、落ち着いてねぇ」


 女性の声が上野君を落ち着かせようと声をかけるが上野君はいっこうに落ち着く気配がない。


「落ち着けないのなら、えい!」


 女性の声が響くと上野君の体がきをつけの状態で固まって動かなくなってしまった。


「はーい、ちょっとうざいので黙ってもらいました。どーも女神でーす。では説明を開始します。まず、あなた達は、修学旅行のバスの事故で死にました。女性の皆さんはすでに輪廻の輪に戻しました。そして男子生徒の皆さんには、私の妹の作った世界に行ってもらいまーす」


 ざわざわと声が広がるが僕は何も話せずに固まってしまった。


「静かに!」


 女神の言葉で一瞬で静かになった。


「私の妹の作った世界で、魔王が生まれちゃったの、それを倒してもらいまーす」


 魔王?


「魔王はね、まぁ、あなた達にわかりやすく説明するとその世界のバグみたいなものなのよ。優秀な私はそんなの出来なかったけど、妹はね……。という事でお姉ちゃんとして助けてあげようという事なの。偉いでしょ?」


 いや、自分でなんとかしてよ。


「いや、自分の手でなんとかしてくださいよ」


 あ! 僕が思っても口に出さなかった言葉を誰かが言った! ああ、高輪君か。


「黙れ」


「ひっ」


 今まで明るかった口調が急にドスの効いた声に変わった。その声は上野君がすごんだ時の何倍も恐かった。


「あああああ、恐がらせてごめんね。でも、お姉ちゃんとして見過ごせなくてね。もちろん、魔王を倒しても元の世界には戻れないからそれは覚悟してね。私の世界ではもう死んでるんだから」


 サラッと重要な事を言われた気がする。


「もちろん魔王を倒す手助けは私もするし、魔王を倒した後、あなた達へのサポートは欠かさないわ。そうね、魔王を倒して用済みとかいってあなた達を排除しようとしたら妹と力を合わせてそんな奴潰してあげるわ。あ! でも、もちろん。それにかこつけてあなた達が悪さしたら見捨てるから」


 ボーっと聞いていたら部屋の隅が光りだした。光が消えるとそこに綺麗な女性が……。一、ニ、三、……二十人、ああ、僕のクラスの男子生徒の数と同じか。


「じゃあ、私からのサポートだよ。彼女達は誕生してから百年以上大切にされてきた武器の付喪神達、あなた達と契約して妹の世界のサポートをしてくれるはずよ。一人一つ。順番に喧嘩しないで選んでね」


 そこで言葉が切れて上野君の直立不動も解かれた。


「なんだよこれ! ちくしょう、ぶっ飛ばしてやる」


 怒って暴れまわりそうなのをクラス委員長の大塚君が止める。


「なんだよ大塚、偉そうにしやがって」


「まったく、俺だって混乱してんだ。とにかく、良くわからないがあの女性達と共にいかないといけないらしい」


「ふざけんな。俺はいかんからな」


 そう言って座り込んだ上野君を無視して大塚君が女性の方へ向かって行き、その中の黒髪が綺麗な女性に話しかけた。


「えっと、君は?」


「はい、備前長船と申します」


 その言葉に数人がびっくりしていた。


「備前長船といえば名刀じゃないか。え? じゃあ君は」


 大塚君は隣の女性にも話しかけた


「私は名も無き槍でございます。ですが、戦場で敵を討った経験は十以上あります」


「君は?」


「私も名も無き弓でございます」


 大塚君の質問に女性達が答えていく。武器の付喪神か。


「じゃあ、君、契約して」


 大塚君が最初に話しかけた備前長船さんに声をかけると女性は頷いて大塚君に抱きつき背伸びしてキスをした。

 そして、大塚君の腕に抱きつくと光りそのまま腕に治まっていった。

 大塚君の手には一本の鞘に入った刀が納まっていた。

 大塚君が刀を少し抜くとその刀はキラリと光る。


「本物……。でいいのか?」


 そう大塚君が悩んでいると今度は大塚君が光って消えていった。


「はーい、武器と付喪神と契約したらあっちに送るから、早いもの順だけど喧嘩は駄目だよ」


 女神の言葉にみんなが一斉に動き出す。


「大崎、テメーは最後だ」


 そう言われて僕は投げ飛ばされる。

 上野君の舎弟で僕をいじめる神田君だ。


「テメーはそこで終わるのを見ていろ」


 そう言われてもう一度足蹴にされる。痛い。

 目の前で何人も契約して消えていっている。


「女神様ー」


 高輪君が空に向かって声を上げていた。


「はいはーい、なになに?」


 拍子抜けするような声が帰ってきた。


「この娘、国友って言ってるけど火縄銃ですよね? 弾とか火薬ってどうなるんですか?」


 国友? 火縄銃なら種子島じゃないの? 高輪君って武器の事詳しいんだな。


「あ! 言い忘れた。妹の世界に行くときあなた達の適正に合わせて魔力をあげるんだけど、剣や槍はその魔力で筋力や技量を上げて、弓とか弩の矢とか鉄砲の弾とか火薬は魔力で自動で装填させられるから、いけなーい、移動しちゃった子にも言ってあげなきゃ」


「つまり火縄銃なら装填や掃除の手間がないってこと」


「そう、そう、じゃあ、お願いね。おっと、ごめんね。そうだよ。魔力が続く限り撃ち続けられるよ」


 その言葉に一気に高輪君の傍にいるおかっぱの少女にみんなが目に行った。


「おっと、早く契約しよう」


「はい」


 皆が動く前に高輪君はその少女とキスして契約した。

 少女が光って高輪君の両手に納まると資料の写真でしか見たことの無い火縄銃が握られていた。


「銃なんてずるいぞ、俺に寄越せ」


 高輪君に上野君が怒りの表情と声で詰め寄った。


「あ? 駄目に決まってるだろ早い者勝ちだって言ってたじゃないか」


「うるせえ寄越せ」


「はい、ストップ」


 高輪君が火縄銃を構えて上野君が拳を握った所で女神の止めが入った。


「早い者勝ちだよ。それに文句があるなら、あなただけ百年地獄で魂を煮られてそれから輪廻の輪に戻る?」


 女神の言葉になぜだかそれが本当だと感じて本能的な恐怖を感じた。


「くっ、ちっ、おい、貴様、貴様はなんだ?」


「ホッチキスです」


 諦めたのか上野君は金髪碧眼の背の高い女性の付喪神に声をかける。


「ホッチキスだと! ふざけんな、お前は!」


「拳闘ようの金属入りグローブです」


「ああ、じゃあテメーでいい!」


 上野君は動きやすそうな服を着たポニーテールの少女に無理矢理キスし、そのまますぐに消えていった。

 みんなが選んでいく中、僕は神田君に睨まれて動けなかった。そして、神田君がいなくなって動き出しても他の人はもう決まっていた。

 みんなが消えた後金髪碧眼の女性が僕を見ていた。


「あなたは?」


「ホッチキスです」


 ホッチキスだって! 武器の付喪神じゃなかったの! ホッチキスでどう戦えっていうんだ!

 ああ、向こうに行っても僕はまたパッとしない生活なのかなぁ。あ、でも、この綺麗な人と契約で、キス出来るんだ。それだけで良しとしよう。


「契約しましょう」


 そう言って僕より背の高いホッチキスの付喪神が僕の頭を抑えてキスしてきた。

 そして、僕の中に情報が流れ込んでくる。

 え? え? どうゆうこと?

 彼女とのキスが終わって光って手元にホッチキスが来ると思ったら彼女は僕に抱きついたままだった。


「私、重いから、向こう行ってから、ね」


 そう言いながら僕を抱きしめて光が僕を包んでいくのだった。


 光が消えた先は広い空間だった。

 クラスの皆がそこにはいて、武器のままのクラスメイトと、付喪神状態に戻したクラスメイトに分かれている。

 魔王が現れて僕達を召還した人達がやってきて、僕達を王様に挨拶させてくれた。

 そこで不貞腐れて無礼な事をした上野君に(死なない程度)(のオシオキ)が来て、それを当然と思っている王様にも(死なない程度)(のオシオキ)が下った。


 王様との謁見が終わると広場で僕達の実力試しが行われた。

 そこで高輪君が注目されていたが、ついに僕の番になった。


「おい、大崎の番だぜ」


「あいつの武器ホッチキスだぜ」


「ホッチキスって、どうやって戦うんだよ。こうやってパチンパチンってか」


「ぎゃははは」


 上野君と神田君が僕と隣にいる彼女を笑う。見てろ。


「じゃあ、行きますよご主人様」


 そう言って彼女は両足を閉じて四つんばいになり。光り始める。

 その光はじょじょに収まって三脚とよく磨かれた金属の塊が出てきた。


「1917年フランス製Mle1914ご主人様の為に頑張ります」


 その姿に唖然とするクラスメイトと、どんな武器かわからずに不思議そうな顔をする異世界の騎士さん達なのだった。




 その後、僕はこのホッチキスと一緒に戦場に出て王国軍を苦しめていた二万のオーガファランクスをたった一人で殲滅した功績をあげて、一躍英雄となった。

魔力の修行で撃てる弾が増え、付喪神との魂の繋がりを強化するメンテナンス(意味深)で五分撃てば銃身が熱くなって撃てなくなっていたのが十分、二十分、三十分と増えていき一時間撃ち続けても平気なようになるのだった。

魔王を討ったのは僕ではないが、魔王との戦いにおいて功績が認められ、魔王討伐後も裕福な暮らしをしていくのだった。

誤字、脱字があれば報告おねがいします。

感想をいただけるとうれしいです。

批判もどんとこいです。


オチキスが正式な読み方だぞ! という突っ込みはいりません。

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― 新着の感想 ―
[一言] ホチキスは会社名であり、紙を纏めるのはステップラだしね。 ホチキスで武器なら、ホチキス機関銃と直ぐに分かりますね。
[良い点] まさか、そちらのホチキスだったとは! 短編なのに一捻りされていて、納得の結末でした。 長編展開でも、チート無双で楽しいでしょうね。 そちらも読みたくなるようなお話でした。
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