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特務調査隊第三班

「よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


 進と遥香は今日から仲間となる姫理香と美咲の二人に対して頭を下げた。


「ようこそ、特務調査隊第三班に」


 再び会うことは無いと思っていた進に会った事に美咲は動揺した美咲に代わり姫理香が答える。


「あの他の人達は?」


「今この班に居るのは私たちだけよ。先の出撃で一名死亡もう一人は負傷して入院中。復帰は絶望的ね」


「出会い頭に銃撃戦になった後、次々とモンスターに遭遇してしまって、命からがら帰ってきたんですよ。救援が来なかったら私たちも死んでいました」


 ようやく動揺が収まり答えた美咲だったが、その時の恐怖を思い出して身体を震わせながら答えた。


「で補充として貴方たち二人が来たという訳」


「他に補充の予定は?」


「なし」


 姫理香の言葉に進は溜息を吐いた。

 待遇も給与も良い特務調査隊だが、グレーゾーンの中心部、ゲート近くへ調査のため単独で出撃するので非常に死傷率が高い。そのため志願者は少なく補充は殆ど無い。


「三日後の出撃に備えて準備して貰います」


「急すぎませんか?」


「モンスターの動きが活発化しているらしいの。この基地も襲撃を受けたから何が起きているか情報を収集する必要があるの」


「それでも早すぎませんか? 訓練の時間も無い」


「基本の訓練は御殿場で受けているでしょう。私たちとの連携を確認することに集中してもらいます。今日と明日で訓練を仕上げて明後日は完全休養。三日後に出撃します」


「ハードスケジュールだ」


「ええ、だから頑張って準備してね。で、組み分けだけど進には美咲と組んで貰って、遥香は私と組んで貰います」


「序列は?」


「美咲はまだ学生だから、幹部候補の貴方が先任よ。指揮を執るように」


「大丈夫なんですか」


 少人数とはいえ、先日幹部候補に合格したばかりの進を指揮官にする事に遥香は疑問を口にした。


「階級は絶対よ。それに幾ら幹部候補でも不適任な人材を指揮官に置くほど私は無能では無いつもりよ。全員生きて帰れる、片方のバディを任せられると考えての配置よ。それとも私の判断に疑問があるの?」


「い、いいえ」


 メガネの奥から伝わる鋭い眼光に遥香は怯み反射的に返事をした。

 都市は殆ど変わらないはずなのに修羅場を幾度もくぐり抜けた鋭さがあった。


「では直ぐに演習を始めるから準備をして」




「よろしくね」


「は、はい、こちらこそ」


 バディを組むことになった美咲に進は挨拶をする。ショートカットの活発的な印象だが人見知りなのか、進を前に緊張してぎこちない笑顔を見せる。

 その姿に可愛らしいと思った進だったが


「ありがとう。今日から君が僕の部下だ。じゃあ、命令を下せるね」


「は、はい」


「それじゃあ最初の命令を伝える。もしも僕が間違っていると思った直ぐに言うんだ」


「え?」


「少なくとも君の方が部隊の経験は長いから判断は上だと思うよ。それに間違ったことをしたら、いや致死性のミスを犯したら死ぬと聞くからね。経験者である君の意見を蔑ろにする気は無い」


「でも、私年下ですし、一応進さんが幹部候補ですから上司にあたりますよね」


「年齢や職位が上だからと言って全ての技能が君より優れている訳ではないよ。年下でも優れているところがあれば、僕が君に敬意を払うのは当然だ。と言うより優れたものを使わないのは馬鹿げたことだよ。君の経験と能力に期待する」


「ありがとうございます」


 つい先日やって来たばかりの新米の指揮下に入ることに不安を抱いていた美咲だったが進の言葉に安堵した。口先だけかも知れないが言わない奴よりは多少信頼できる。一方的に命令するだけの馬鹿とは違う。

 先の出撃では明朗闊達なバカが隊長を務めていたため、姫理香隊長の独断専行による離脱がなければ危うく戦死するところだった。

 姫理香がいなければ自分も戦死していただろう。その姫理香が選んだだけに十分な能力がありそうだった。


「じゃあ出撃に備えて装備を整えるわ。ガンルームからとりあえず好きなのを選んで」


 そう言って姫理香は何種類もの銃が保管されている銃架を開けて見せた。


「西側の銃が殆どだな」


 進は置かれていたM203を手に取った。薬室内が空である事をボルトを引き、トリガーを引いて銃が問題無く動くことを確認する。


「日本の銃は無いの?」


 御殿場で使っていた八九式を探していた遥香が尋ねた。M16も悪くないが使い慣れた方が良かった。


「三〇年以上経っても小銃の更新が完了しない無能共がここに供給できると? そもそも部品数が多すぎてメンテが大変でジャム――装填不良の多い小銃は第一線に支給されないの」


「もう少し自国の事を信頼しないのですか?」


「自衛隊の川柳大会で断トツ一位を取った川柳知っている?」


「何です?」


「またに撃つ 弾が無いのが 玉に瑕」


「……笑えないわね」


「ああ、この事だけでも自衛隊に入らずここに来て良かったよ。文民に指揮されるなんて真っ平ゴメンだ」


 選挙で選ばれただけの軍事の知識の無い奴の命令を絶対に聞かなければならないのが自衛隊だ。

 首都放棄の混乱後、政権の面子の為に即時首都奪還を命じられ自衛隊の過半を投入した作戦が行われた。だが準備不足――弾薬の不足を始め満足な部隊移動訓練さえ行われていないため移動だけでも多大な失敗を繰り返した。何より実戦を想定しておらず、専守防衛の建前を金科玉条にして政治家達が作った法律により雁字搦めで動けないのではまともな戦闘行為など不可能だ。しかも、相手は異世界から来たモンスターでほぼ初見。人外相手の戦闘など分からなかった。

 早々に作戦は頓挫して撤退命令が下り、関東山地を防衛線にしてかろうじて保っているのが現状だ。

 だが八島には少なくとも弾は潤沢にある。二〇連のマガジンが一〇個あり、それぞれに十八発入れても弾は余る。

 グレネードの弾も豊富にあり限界まで持つことが出来る。

 この事だけでも多くの青少年が八島に来る十分な理由だった。


「装備さて、装備は選んだ?」


『はい』


 進と遥香は揃って答えた。結局、遥香も進と同じM203を選んだ。

 火力をグレネードを使えるのが決め手だった。

 更に他の装備、ヘルメット、バックパック、肘・膝・掌の各ガード、ベストを着け、装着の具合を確認し調整する。


「調整は終わった? じゃあ、訓練スペースに移動して連携を確認させて貰う。それと二チームに別れて、模擬戦を行いましょう」


「模擬戦ですか?」


「二人の能力を把握しておきたいのよ。訓練、演習で出来ない事が実戦で出来る訳がないもの」


「はい、絶対に勝ってやる」


 姫理香の言葉に遥香は素直に答えた。

 試験で幹部候補になり損ねたが、ここで良い動きが出来る事を見せつけて幹部候補への道を開きたい姫理香だった。

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