爆破
遥香の学園に戻った進は、直ぐさま倉庫に行き倉庫に保管されていた肥料を見つけた。
「よし、やっぱり窒素肥料があるな。あとは手に入れたホワイトガソリンをと」
キャンプ用のバーナーにはガスとホワイトガソリンを使用するタイプがある。ガスの方が使い勝手が良く使用者が多い。だがホワイトガソリンの方が燃料費が安く、キャンプの食堂などの大規模設備で使用されている。
「で、わざわざキャンプの跡地から持ち込んだこのホワイトガソリンをどうするの」
半目で遥香が尋ねた。
「なに、窒素肥料にホワイトガソリンを混ぜ込んで爆薬を作るだけさ」
「出来るの?」
「適切な比率で混ぜ合わせればアンフォという爆弾になる。採石場だと安価で簡単にできるからその場で作って使う。ダイナマイトよりも安い」
実際に鉱山などではその場で混ぜて使う例があり、鉱物採掘に使われている。
だが余りにも安価で簡単に作れるため、テロリストも爆弾テロで使っている。
バン一台分あれば町の一区画は完全に破壊できる。
「まあ、安全の代償に感度が低くて発破にはブースターが必要だけどな」
良い爆薬と評価されるには爆発しにくいことが重要だ。
矛盾しているかも知れないが、使用者の任意のタイミングで爆発しなければ事故が起きやすい。一寸持っただけで爆発するようでは安全に使えない。
実際にプラスチック爆弾も銃弾を撃ち込んだり火の中に入れても燃えはするが、爆発はしない。それだけ安定した物質であり持ち運びが容易という証明だ。
爆発させるには火種、高い圧力を加える必要がある。
「それには持ち込んできたプラスチック爆薬で十分だ。ダイナマイトでも良いけど、プラスチック爆弾の方が扱いやすい。電気信管もデトコードも用意してあるから準備万端だ」
「何でそんなに爆薬に詳しいの」
呆れたように遥香が尋ねると進は昏い笑顔を浮かべながら答えた。
「学校生活を送っていたら校舎を爆破したいと思う事の一〇〇回や二〇〇回はあるだろう」
「いや、無いから」
「で、そのうち十回くらいは実際に調べて、内一回は裏サイトを見つけてその内容を覚えてしまうんだ」
「そこまでするは貴方だけよ」
「わかります。私は銃で撃ち抜きたくなりましたけど」
進に同意を示す美咲に遥香は恐怖を感じたが、止めることは出来なかった。
「ともかく、爆薬が手に入った。これを使って罠を仕掛ける」
「キメラを吹き飛ばすの?」
「いや、地雷を仕掛けるには時間が無いし手間も掛かる。それに誘導できるとも思えない。そこでこの建物を使って叩きのめす」
上手く行くのか疑問を持った遥香だったが、出来る事はやってしまおうという姫理香の判断により作戦は実行される事となった。
そのキメラは苛立っていた。
仲間を殺された事もそうだが、進だ仲間の分も見張りと攻撃を自分一人で行わなければならない。頭が複数あり交互に各生徒睡眠を取ることも出来るが身体は一つであり、疲労が溜まる。だから苛ついていた。
自分をこんな目にあわせた小さい毛無し猿を食い散らかさないと気が済まない。
そのため意識が散漫となっていて攻撃を許した。
ポスンという気の抜けた音の後、頭部に強烈な爆発を受けた。
命中した頭は脳震盪を起こして気絶していたが、残りの無事な頭で攻撃を受けた側に目をやると、例の毛無ザルがいた。
「よし、命中」
進は発砲と共にバイクのエンジンを始動。命中と共にM203を背中に回して逃げる準備を整え、アクセルを全開にして逃げ出した。
キメラはこちらに気が付いて追いかけてくる。
「引っかかった!」
二回目という事もあり、今度は上手く逃げる。
瓦礫や建物を盾に使って町中を進は駆け抜ける。サイドミラーからキメラが追いかけてきていることを確認する余裕さえある。
キメラがつかず離れず付いてきていることを確認すると目的の場所――遥香の学園に向かって走る。
「よし見えた」
学校の建物が見えると進は、バイクで校門をくぐり校庭に入り玄関に向かって走る。
丁度、キメラが追いついてきて進を食おうと跳躍し、校庭の真ん中へ飛び込み襲いかかろうとする。
だが、着地の瞬間一発の弾丸がキメラを捉えた。
美咲による狙撃だった。
一度狙撃を受けて警戒していたキメラだったが、何処からも発砲は見えなかったはずだ。
校舎からも発砲炎は見えない。そして気が付いた。
美咲は校舎では無くその後ろの建物。
校舎の廊下と教室全ての扉と窓を破壊してそこから弾丸が通過できるようにしていた。
そしてキメラがやって来た時を狙い、建物越しの射撃を成功させたのだ。
こしゃくな手を使われたことにキメラは怒りを露わにして校舎越しに睨み付ける。
同時に気が付いた。
校舎内に無数のドラム缶が置かれていてロープのような物が繋がっている所を。
そして次の瞬間。そのドラム缶が爆ぜた。
狭い校舎内で大量の爆薬が、それも一階部分、キメラに近い校庭側で爆発した。
爆発により校舎の校庭側が甚大な損傷を受け、キメラに向かって倒れていく。
大老の瓦礫がキメラに襲いかかりキメラを生き埋めにした。
「やれ! ソフィー!」
進が怒鳴ると隠れていたソフィーが現れ詠唱を開始。瓦礫に埋もれるキメラの上空に魔方陣を展開する。
その魔法の意味に気が付いたキメラは逃げようとするが、瓦礫に阻まれて身動きが出来ない。
ようやく瓦礫から抜けたのと魔方陣が発動したのはほぼ同時だった。
再び強烈な閃光が現れキメラを包み込み、強烈な爆発を発生させる。
爆発に伴う衝撃波で発生した粉塵が収まった後、校庭には巨大なクレーターが現れた。
そこにはキメラは居なかった。




