集合ポスト
今回は安定の気持ちを得るには…ということを考えて書きました
本当に安定の状態を手に入れようとすると…
自分的にはこういう考え方が一番なのではないかと
自ら確認したかったのかもしれません
俺の名は伸介…とあるマンションに一人暮らしの身である
一人で居ることに抵抗も寂しさも無い…そう思い込むことで
日常のバランスを取っている…そんな日々を送っている
自分でも分析出来るくらい…客観的に物事を見てるつもりだ
だったら…何度も何度も自分に問いかけたが…答が見つからない
なので…この生活も悪くない…そう思うことにしているということだ
そんな日常の中から…マンションにはどこでもそうだと思うのだが
集合ポストが設置してある
届く郵便物も…ほとんどがDMか公共料金の説明など
どちらでもいいものばかり…なのでもう半月くらい放置している
あんまりこうしてるのも…管理人に見つかるとこれはこれでやっかいだな
そう思った伸介は…とりあえずそのポストの中身を取り出すことにした
「やれやれ…」そう言うのは…予想通りの展開だったからである
「予想通りか…」何やら郵便物だけでなく…
そんな少しばかり自虐的になりつつ…部屋に戻って郵便物を一応確認してみる
すると…差出人も不明なら…全く何も書かれてない…奇妙な郵便物が
何通か混じってることに気が付いた
「何だよ…これ…」
不気味は不気味だが…タチの悪いイタズラだろう…
そう思い…まとめてゴミ箱に捨てようとしたが
「何だか捨ててしまうのも…それにイタズラとしたら誰に言うなり
証拠が無くてはな」
そうしてその何通かある郵便物を…タンスの引き出しの中にしまい込んだ
それ以来…妙に集合ポストのことが気にかかり
「今度何かあったら…」伸介はその不気味さから…管理人に告げるつもりでいた
なるべく考えないようにしよう…そう思ってもどうしても気にかかり
恐る恐るポストの内扉を開けてみる…すると
「あった…」
また同じ内容の郵便物が…
「これで一応証拠となるだろう…監視カメラの映像でも…」
そう思う伸介だったが…
「もしもそれらしい怪しい者が居なかったら…こっちが逆に…」
そう考えると結局何も出来ず…またしてもその郵便物をタンスに
俺は愛想は悪いが…一応品行方正で通っている…このままで問題ないさ…
でもどうしてこんなものが届くのだ…
管理人ではいざというときあまり…と思うところもあり
「探偵か…あるいは警察か…」
そう思えど…やはり同じようなリスクを背負うのは間違いないと判断した
伸介は…
「とりあえず今後どうなるのか…見届けてやろうじゃないか」
何やら正体の分からない何かと対決するのを決めたような…そんな心境だった
それから数日おきに届く郵便物を…並べたり揃えたり…
「本当に何なんだ…」
思えど思えど理解出来ない…しかし何らかの意図は確実にあるはずだ
もう他の人は頼らず…自分でこれを解決なり理解なり…答を出してやる
意気込む伸介の心境を反映してのことなのか…数日おきに到着した郵便物は
いつしか毎日のことになっていた
だんだんとその謎めいた事柄に…次第に興味が無くなってきたのか
「もう放っておこう」
しかしその郵便物だけはとりあえず保管しておこうとは決めてたので
数えること50枚…すると…郵便物が途絶えてしまったのである
「これでおしまいか…結局誰かのイタズラだったんだろうな…」
そのこと自体も忘れようと努力し…数週間の時間が流れた
もう特に所有してても仕方ない…そう考えた伸介は
その郵便物を捨てようと…しかし最後に一応考えるだけ考えようと
すると…裏面に凸凹のようなものが…
「これは…」その凸凹はちょっとした線になっていたのだが
微妙に角度がそれぞれ違っていて…
何かのヒントになるのかも…でもそれが何を意味するのか分からず
「う〜ん…」
無意識のうち…それらの郵便物を円形に並べていた伸介だった
その円は…二重の円になっていて
「二重丸?そういえば小学生の頃はテストでこれをもらったら嬉しかったな」
少しばかり童心に返ったのか…そんなことを思い出してると
「丸か…丸の反対語って何だ…四角?角が立つ?」
品行方正だが愛想が無い…角を立てている?俺が?
何故こんな風に考えたのか分からない伸介であったが…理解しようとすると
こんな風に考えるしか無さそうだ…
どういうのか…確信じみたものが頭を過ぎり…
「そういえば…この暮らしも味気ないと言えば味気ないものだな…」
この話も丸く収めることを考えれば…問題を問題と思わないこと
それ自体が問題だ…禅問答のような問いかけを自分で考えてるうち
「それもそうだな…何故二重の円を作ったのか…きっとそのことにも…」
結局イタズラでもそうでないにしろ…自分で納得したらそれでいいんじゃないのか
自分で納得するというものに勝る答というのは存在しない…そうどのようなものでも…
随分強引な考え方をするものだ…自分に呆れながらも
「まあいいか…」投げやりな独り言のようにも思えど…
「そういえばしばらく連絡取ってなかった父と母はどうしてるだろう…電話の一つでも
してみるか…」
それまで考えたこと無いような思いつきに…でも悪い気はしない伸介だった
おしまい
短い文章ながらも…思うことが伝わればと思います
現実味とファンタジーの間とは…
見る映画の趣味も…こんなものかもしれません