フォーカード・プラスα
フレイシア達ファニーポーップとリルバが、スプリガン三体を撃破したことと、聖者の怒りのメンバー、ダビー・ロンドの右腕を入手した件は、国内の各地に通達されていた。
「ハハッ! 派手にやってるッスねぇ!」
ここはエイド王国が統べるホーン列島北西の島、通称“ウェストエイド”のとある場所。
数年前に活動を開始した、新進気鋭の冒険者パーティの一つ、“ライヤーズ・プライド”の拠点である。
赤紫の頭髪を引き立てる黒いシルクハットを被り、マジシャンのような燕尾服を身に纏って機嫌よく笑っている少女は、このパーティーのリーダー、“ウル・クローヴ”。
普段は、人を喰ったような笑みを浮かべる、猫獣人の女性だ。
彼女は、仕入れたばかりの情報の中に、旧友の名を見つけて、目尻に描かれたクローバーのフェイスペイントを歪めながら、他のメンバーの視線も気にせず、一人で情報の書かれた文書を眺めている。
「とうとう旅に出たッスかぁ……懐かしいッスねぇ、二年前の感謝祭以来ッス」
「団長、いつまでも一人で見てないで、私達にも話してくれない?」
とそこへ、しびれを切らした、腹心と思われる女性が声をかける。
彼女は“リグレット・ダルク”、黒い両翼を持つ堕天使族だ。
そんな彼女は、ステージ衣装のような黒いドレス姿である。
「あ~、そうだったッスね。ハート家のシアちゃんを覚えてるッスか? 彼女達のパーティが、ようやく表に出てきたッスよ」
少し不敵に笑いながら、ウルはリグレットに情報の書かれた文書を手渡した。
渡された文書を一瞥して、リグレットは一つうなずき口を開く。
「これは随分な手柄ですね。しかし、ブレの町といえば、ホイープ森林の目と鼻の先ですよ。少し外に出ただけでこんな大騒ぎに……まったくあの子達は……」
リグレットは少し呆れを交えながらそう言った。
そんなリグレットの気持ちなどお構いなしに、ウルは高らかに宣言する。
「さて諸君! 今年こそは感謝祭にいこ~ッ!」
(去年は予定が狂って行けなかったッスからねぇ……)
「まったく、うちの団長は……」
どこまでもマイペースなリーダーの発言に頭を抱えながらも、慣れているのか、リグレットはすぐに取り直し、パーティメンバー達に旅支度を促した。
◆◇◆
同じ頃、北の島、“ノースエイド”では。
「ふむ、興味深いね……きっと正義感が強いのだろう」
報告書に目を通しながら、そんな思い込みの強い発言をしたのは、キリリとした表情の、軍服を着た兎獣人の女性。
傭兵上がりで、現在売出し中の冒険者パーティ、“アイアン・ジャスティス”のリーダー、“レイラ・ドル・スパード”である。
「レイラ……まさか、また変なスイッチが入ったんじゃ――」
嫌な予感を覚えた副官の女性が言い切る前に、レイラの演説は始まる。
「彼女達と我々は盟友になる定め! 何故なら、正義の心でつながっているのだから! ――総員整列!」
スペードをモチーフにしたエンブレムの描かれたタペストリーをバックに号令をかける。
レイラの号令を受けて、同じく軍服のメンバー達は整列し、体の後ろに手を回し、直立不動の姿勢をとる。
「復唱せよ! 我らは鉄血の正義!」
「「「アイアン・ジャスティス!!!」」」
「……このノリさえなければ」
残念美人なレイラと、従順なメーンバー達の言動に、副官の女性は頭を抱えるばかりであった。
◆◇◆
続いて、南東の島、“イーストエイド”のとある場所。
「も~! リア、ちゃんと聞いてるの……?」
ツーサイドアップでミニスカートを履いた、パンクロックスタイルの天使族の少女は、先に得た情報を、幼馴染でパーティリーダーの少女に伝えたのだが、真面目に聞いていない様子を見て、頬を膨らませていた。
同じくパンクロックスタイルで、黒い頭髪に赤いメッシュの入ったミディアムヘアの少女は、椅子にもたれかかり、机の上で足を組んであくびをしている。
「ふあぁ~……ちゃんと聞いてるさ」
彼女こそ、現在、イーストエイドで名を上げている新生パーティ、“フラッピング・クロウ”のリーダー、“グレイリア・ダイヤ”である。
上着の肩口には、ダイヤモンドを咥えたカラスのエンブレムが描かれている。
「むぅ……!」
あくまでも態度を崩さないグレイリアに、腹心の少女は更にむくれてみせる。
「……ったく、そんな顔すんじゃねえよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
意地の悪い笑みを見せながら、副官を茶化すグレイリア。
ひとしきり副官を茶化した所で、グレイリアは少し真剣な表情で口を開いた。
「にしても何の因果かねぇ……これで揃っちまったな」
腹心の少女にはその意味が分からず首を傾げた。
そんな腹心を見て、グレイリアはそういえばと言って、手を叩いた。
「話してなかったか。オレのダイヤを初め、ァ、オレのダイヤを初め、スパード、クローヴ、ハートの四つの家系には、浅からぬ因縁があるんだぜ? ま、先祖共の話だがな」
男勝りな口調で、グレイリアは腹心に説明してみせた。
「何にしてもだ……どんな奴らが出てこようが、今世代最強は、オレ達だ!」
自信家のグレイリアは、そう言って豪胆に笑ったのである。
◆◇◆
所変わって南の島、“サウスエイド”。
このサウスエイドには、ミクスの町の他に、もう一つ主要都市がある。
島の北部にある水の都、名は“リコット”。
フレイシア達、ファニー・ポップが目指していた都市である。
そんなリコットのとある宿屋の一室で、二人の少女達が、神妙な顔つきで話をしている。
一人は西洋風のドレスを身に纏い、反りがある身の丈ほどの剣を背負った、金髪で真っ赤な瞳の吸血鬼の少女。
そしてもう一人は守り人、黒い着物をはだけさせた、二本の角を生やしている白鬼族の少女である。
「お姫、決めんしたか?」
守り人の少女は、吸血鬼の少女の気持ちを確認する。
「うん。なんとしても彼女達に会わなくちゃ。イオリ、ついてきてくれるね?」
「御心のままに」
イオリと呼ばれた守り人は、片膝をつき、胸の前に左手を当て頭を垂れた。
エイド王国の各地では、新しい世代の波が動き始めていた。
Tips:フレイシアが会ったことがあるのは、ライヤーズ・プライドだけ。
この通達は、新聞に名前が載ったくらいのものです。




