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冒険者の証

三つ星の証をスチールに変更しました。


「お待たせしちゃいましたー?」


 町を一巡りして宿に帰り、食堂でだべっていたフレイシア達の元へ、マルティがやってきた。


「私達も今帰ってきたとこですよ」


 などと、初々しいカップルの様な挨拶を交わしながら、フレイシアはマルティに座るよう促した。


「お邪魔しますよー。ルーちゃん、私にも飲み物くださいです」

「はーい!」


 この宿で働いているルーリーとも面識があったマルティは、席につくなり百メルン硬貨を取り出して飲み物を注文した。


「いやー、くたびれたですよ」

「今日は何処に行ってたんですか?」


 テーブルに上体を乗せて、猫のように伸びをしながらため息をつくマルティ。

 一仕事終えてきたように見える彼女に、フレイシアは何気なく聞いた。


「実は、東の林の見回りに行ってたですよ」


 それを聞いたフレイシア達は、真剣な表情をした。

 だがそれを見て、マルティは手を振りながら言葉を続ける。


「大丈夫、異常なしですよ。でも、あんなことがあったばっかりですからね、念のために確認に行ったですよー……あ、どうもです」


 異常がないと聞いて、フレイシア達は肩の力を抜いた。

 ちょうどその時、ルーリーがマルティの飲み物を運んできた。

 マルティに飲み物を渡した後、ルーリーはちゃっかり、ミーランの隣の席に座っている。

 この宿で夕食が出るのは夕方の六時からであるため、ルーリーは後三十分程余裕があるのだ。


「というわけで、皆で感謝祭に行こう!」


 役者が揃った所で、フレイシアは高らかに宣言した。


「端折りすぎなの」

「何が、というわけなんだ。二人がぽかんとしてるだろ」

「シアお姉ちゃん……エルはついて行くよ!」

「さすがはエルだね!」

「「あの~……」」


 そんなフレイシアを、ミーランとリルバは咎めたが、こういう時、エルアナは乗ってしまうのである。

 フレイシアは、そんなエルアナにウィンクをしながらサムズアップを決め、マルティとルーリーはすっかり置いてけぼりになってしまっていた。


 とはいえ、二人の都合もあるため、この後、改めて説明をしたのである。


「そういうことだったですか」

「びっくりしたよー」


 二人が納得した所で、具体的な日程の相談を始める事になった。


 ミクスの町へ連れて行ってもらえるとあって、ルーリーは実に嬉しそうにしている。

 まるで絵本の中のような、メルヘンチックな町並みのミクスは、女性たちにとっては憧れの空間なのである。

 初めて町に出た時のフレイシアも、しきりに町中を見回し、随分と感動した覚えがあるので、嬉しそうなルーリーを微笑ましく見ていた。

 

 もう数日で十二月である。

 話し合いの結果、ブレの町を発つのは十二月の中ほどとなった。

 途中、ルーリーは席を立ち、宿の女将に休暇を貰いに行った。

 その際、フレイシアとミーラン、そして同じく休暇を貰うリルバも立ち会い、女将を説得した。


 十二月の後半に模様される感謝祭、そしてその数日後の年越しのイベントが、大々的にミクスの町で行われるので、比較的近場のブレの町の年末は、人気も少なくなるのだ。


 宿の仕事にも余裕がある。

 なので、休暇はすぐに承諾された。

 折角だから、年明けまでそちらで羽根を伸ばしてこいと、女将は協力的であった。


 ちょうどその頃、夕食を出し始める時間になったが、今日は特別ということで、フレイシア達と同じ席で、ルーリーも夕食を共にしている。


「泊まる場所は心配しなくていいよ。秘密基地があるからね!」

「え!? 秘密基地があるの!?」


 フレイシアの言葉を聞いて、ルーリーの眼は、更にキラキラと輝いた。

 秘密基地などと言っているが、そこは至って普通の民家であり、フレイシアを産んだノーリン・ハートが遺した家である。

 フレイシア、そしてエルアナもこの家で生まれている。

 いつしかミーランを含めた三人は、自然とこの家を遊び場として使うようになっていた。

 ごっこ遊びの延長で、秘密基地などと言っているだけである。


「いたれりつくせりですねー」


 泊まる場所が確保されているというのは、やはりありがたいと思うマルティであった。

 弟子入り出来るかも分からない現状なので、彼女はまだ本格的な引っ越しはしない。

 弟子入りするにしても、断られるにしても、ブレの町には一度戻ってくることになる。

 フレイシアはこの機会に、もし弟子入りが叶ったら、自分たちの秘密基地を貸し与えるという提案もして、マルティはその好意を有難く受けたのであった。


 そんな具合に、旅行の計画を立てる彼女達の夕食は、和やかに行われていた。


◆◇◆


 今は十二月に入ったばかりだ。

 このホーン列島の南の島は、一年を通して温かい気候であるため、十二月といっても寒くはならない。

 あの後、数日に渡って、リルバを含めたフレイシア達四人は、簡単な依頼をこなしながら過ごしていた。

 

 そうしていたある日、ギルドマスターのメイリア・ルーンから執務室に呼び出しを受けた。


「掛けてちょうだい」


 フレイシア達を迎え入れたメイリアは、ソファーに座るよう促した。

 メイリアも、向かい合わせのソファに腰掛ける。


「待たせてしまったけれど、ようやく話がついたわ」


 メイリアが言っているのは、スプリガン、そして聖者の怒り(ヴォルケーノ)の件だ。

 フレイシア達は、黙ってうなずき、続きを待った。


「当然だけど、ギルドはこの件を重く見ているわ。今月中には、各地のギルドはもちろん、騎士団にも通達がいって、そして一般人にも知られることになるわ」


 騎士団とは、列島の中央の島に首都があるエイド王都から、各地に派遣された警備隊の様な組織だ。

 今回は冒険者の手柄であったため、この件についてはギルドが主導権を握り、国がそれに協力する形をとっている。

 ちなみにだが、リルバが五色精霊(フィフス)になった件は、メイリアが秘匿している。

 

「これからは一斉に摘発が始まるはずよ。主要都市への出入りの際の検問も強化されるわ」


 流石に、小さな町や村などにまで騎士団を派遣し、常駐させるほどのゆとりは無いが、主要都市に出入りをする際は、身元確認はもちろんの事、仮設された部屋に一度通され、体にタトゥーが刻まれていないかまで、チェックが入ることになる。

 少し過剰な気もするが、それほどまでに、聖者の怒り(ヴォルケーノ)の存在は根が深い問題であった。


「ギルドや国の対応についてはそんなところよ」


 そう言ったメイリアは、パンと手を打ち合わせて話を変える。


「ここからは、お待ちかねの時間よ。報酬の引き渡しと……」


 メイリアは一度言葉を区切り、フレイシア達を見渡す。


「あなた達の昇格についてよ!」

「ランクアップなの!」

「すごぉ~い!」

「え……ほんとに?」

「まさか、あたしも?」


  ミーランとエルアナは昇格を素直に喜び、フレイシアとリルバは戸惑いを見せる。


「もちろんよ。まずはリルバ。あなたは、三つ星に昇格が決まったわ」

「――!」

「すごいよリル!」

「さすがなの」

「やったね、リル。おめでとぉ~!」


 やはり面食らっているリルバだが、フレイシア達からの賞賛、そして、メイリアが差し出したスチールのブレスレットを見て、次第に実感が湧いて、落ち着きを取り戻した。


「ありがとう、皆」


 感慨深げにブレスレットを受け取って、リルバは頭を下げた。


「これからは、後輩達のいい見本になってあげてね」

「はい!」


 メイリアからの激励にも、迷いなく返事をした。

 二つ星だったリルバが三つ星へ昇格した後、いよいよフレイシア達の番である。

 ところが、そこで、メイリアは神妙な顔つきになる。


「あなた達の功績はとても大きいわ。実力を見ても、三つ星冒険者を凌駕するものを持っているのは確かなのだけれど……」


 そこまで言って、メイリアは言いづらそうにしながらも更に続ける。


「まだ無名のニュービーであること、そして、実績が少ないことを鑑みて……あなた達は二つ星ということになってしまったわ」


 本部を説得したのだけれど、と、メイリアは少し歯噛みしながらも、フレイシア達へ詫びたのである。


「――頭を上げてください! こんなに早く昇格出来るなんて思ってなかったので、二つ星でも十分すぎるくらいです!」

「オーライなの。何も問題はないの」

「マスターさん、エル達嬉しいよ?」


 頭を下げて力不足を詫びたメイリアを、フレイシア達は励まし、そんなフレイシア達を見たメイリアは苦笑するのであった。


 その後、フレイシア達は二つ星冒険者の証である、アイアンのブレスレットを受け取った。

 ちなみにだが、一つ星には証がない。

 初めて身につける冒険者の証に、フレイシア達は素直に感動しているようだ。


 今回の報酬については、それなりに額が大きいため、キャッシュカードの様な機能をもつ、ピースの口座に振り込まれた。


 そして後日、フレイシア達の名を含め、今回の件が国中に知らされたのである――

Tips:マルティとルーリーの自宅は隣同士の幼馴染。

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エレメンツ:ガールズ―elements girls―プロローグフレイシア達の幼少期の話です。 →のリンクに飛んでくだされば、外部サイトに投票されます。もしよろしければ一票ください!小説家になろう 勝手にランキング
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