表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士の時代  作者: 御目越太陽
第二章「ルオマ」
61/131

四十、邂逅

 五人がかりで半日、無人の街と周辺を探し回った。成果は兎二匹と親指大の芋が六個。ささやかと言う他ないが、環境と状況を考慮すれば成果があっただけましと言えるだろう。


 兎を獲ったのは英二だった。畑地に巣穴を見つけ、死に物狂いで格闘してようやく捕まえることができた。良心の呵責を覚えながら何とか絞めた兎を、ペペが野生的嗅覚で見つけてきた芋と一緒に細切れにして、ボリスがごみの山から調達してきた鉄鍋に入れ、アンジェリカとガブリエッラが川から汲んで来た水で煮込む。共同作業の果てに、三刻ほどで吸物ができた。大分遅い夕餉となった。


 五人は椀に煮汁を分け、貪るように啜った。何の味付けもしていない兎と芋の煮込みは、内臓も除かず調理したためだろう、苦味とえぐみでとても旨いなどと言える代物ではなったが、喉を通れば不思議と臓腑に染み渡る恍惚をもたらした。食事の手を止める者はなく、吸物は最後の一滴まできっちり完食された。


 いずれも満腹とは言い難かったが、とりあえずの危機を脱した一行は、ようやく人心地をついた。寂れた街の往来で、言葉少なに焚き火を囲んでいた。


「何だ、それ?」


 目ざとく見つけたのはボリスだった。英二の愛馬が首からぶら下げている麻袋を指している。


「ハナ、おいで」


 主に呼ばれて馬竜が駆けてくる。英二は心なしか嬉しそうに頭を垂れるハナの首から麻袋を拝借しボリスへ手渡した。


 受け取ったボリスは中を検めて思わず息を飲む。何気なく覗き込んだアンジェリカも短い悲鳴を上げて後ずさった。


「な、何ですかそれは!?」


 英二は微かに音を立てる袋の中に手を突っ込み、一つ中身をつまんで見せた。掌ほどのバッタが指の間で長い足と半透明な翅をばたつかせている。忙しげに音を立てる袋の中身は全てこれだった。


「何の真似だよ、こんなもん集めて」ボリスは麻袋を突っ返して尋ねた。

「もし兎が獲れなかったら、入れるつもりだったんだけど」

「入れるって」アンジェリカは口元を押さえた。察しはついているのだろうが、言葉にできないようだ。


 代わりにボリスが尋ねた。


「まさか、鍋に?」


 英二は肯いた。あからさまに引いている二人の反応につい苦笑を漏らしてしまう。


 英二の知る限り、かなり厳しい環境にあったエスパラムの奴隷にも昆虫を食する習慣はないようだった。宗教的あるいは生理的な問題で忌避されているのかもしれないし、殊にベルガ村近辺ではフンコロガシや蜘蛛や(さそり)といった衛生面や毒性について問題のありそうな虫ばかりが生息していたため、誰も試そうとは思わなかったのかもしれない(そのくせ鼠や土竜は食べる習慣があったが)。アンジェリカの様子を見るに、ルオマでも事情は変わらないようだ。


「じょ、冗談じゃねえ」ボリスは立ち上がって頭を振った。「いくら飢えてるからってそんなもん食えるかよ。どうかしてるぜお前」

「わ、私もボリスの意見に賛成です」アンジェリカは素直だった。ボリスよりさらに二歩も三歩も離れたところから必死の説得を試みる。「経典でも禁じられているはずですよ、エイジ。虫を食べるなんて、それは悪魔の所業です。主神エデンがお許しになるはずがありません」


「箴言にある記述ですね。存じ上げております、殿下」英二は頭を振って答えた。「しかし、あの項で言及されているのは蜂の子や蚕の幼虫を贅沢品として食することに関する批判だと私は教わりました。昆虫を食すること、それ自体を禁忌としているわけではないはずです」


 その解釈は全てアントニオの受け売りだった。アントニオは同経典内の別項(言行録)の記述にて、飢饉の折天啓を受けて昆虫食を奨励し多くの民を救った王の政策を挙げて論拠としていた。


 もっとも、特別奇抜な説と言うわけではなく、経典における矛盾を嫌う聖職者の間では公然の解釈としてよく知られていたのだが、行為そのものに対する生理的嫌悪感から聖職者自身ですら昆虫食を忌避する傾向にあるため、一般の理解は遅れて当然だった。


「じゃあ、食うつもりなのか、お前」


 恐る恐るといった様子のボリスに、英二は苦笑のまま答えた。


「そのつもり、だったんだけどね」


 つもりだけではない。英二は実際兎狩りの合間にこのバッタを食してみた。もちろん英二にも昆虫食の経験はなかった。しかし、知識としてイナゴや蜂の子を佃煮にして食べることができると知っていたため、(多少の不安と抵抗はあったが)似たような見た目だし大丈夫だろうと試しに噛んでみたのである。


 結果は大失敗と大後悔だった。


「青臭くて、とても食べられたもんじゃなかった。食欲も失せたから多少の意味はあったかも知れないけど」


 指の間でもがくバッタの姿に、英二は文字通り苦い記憶を思い出していた。恐らく、ちゃんとした方法で調理すれば美味しく頂けるのだろうが、それを試すには現在の状況はあまりに足りないものが多すぎた(無論勇気を含む)。


 嫌な記憶を振り払うように、英二は大口を開けながら待てを続ける愛馬の口へ、バッタを投げ入れた。


 目を細めて咀嚼する馬竜を見て、ペペは肩を落として嘆いた。


「なんだ、食えねえのか」

「試してみる? たくさんあるし」


 英二の提案に一転顔を輝かせるぺぺだったが、すぐさま割って入ったボリスに止められる。


「馬鹿、止めとけ。腹壊すぞ」

「まあ、それが無難だね。馬竜にとってはいいおやつになるし、良かったらイフサンとアマニにも」


 袖を引かれていることに気づいて英二は視線を下ろした。上目遣いのガブリエッラは麻袋に手を伸ばして言った。


「エイジ、あたしあげたいわ、おやつ」


 その言葉を耳にした瞬間、離れた所から様子を伺っていたアンジェリカが飛んできた。


「まあ! ガビー、何てことを言うの!?」

「心配しないで、姉さま。ハナは優しいもの。噛んだりしないわ」狼狽する姉とは対照的に、ガブリエッラは袋を覗き込んで英二に尋ねた。「ねえ、どうやって持つの?」

「そう言う話ではないのよ、ガビー。そんなこと、貴族の子女がやるべきことではないわ」

「あら、姉さま、私たちのために頑張って働いてくれたハナたちに褒美を与えることこそ、貴族の務めなんじゃなくて? あたしはそう思うわ」


 論理的に言い返された姉は頬を紅潮させて黙ったが、結局駄々っ子のように両手をばたつかせながら金切り声を上げた。


「ともかく駄目なの! エイジ、ガビーにそんなもの触らせないで! 命令です!」


 強く言われて英二は動きを止めた。申し訳なさそうに妹の方へ腰を折る。


「あー、そう、言うわけですので、殿下」


 しかし妹も折れなかった。理屈で勝っている分、なお強気に返した。


「エイジ、あたしにおやつのあげ方を教えて。命令よ」


 これを皮切りに再び姉妹の応酬が始まった。


「私が先に命じました!」

「あたしが先よ、姉さま!」


 互いに譲らない争いの間に挟まれて、英二はただおろおろと二人を交互に見やることしかできなかった。お預け状態に飽きてしまったのか、当事者のハナも口を閉じてそっぽを向いている。


 英二は機嫌をとろうと愛馬の首筋を撫でた。そして何とはなしに右を向いた。


 英二にそうさせたのは小さな違和感のようなものだった。食い意地の張ったハナが、目の前のご馳走には見向きもせず、どこか一点を見つめている。英二が撫でてやれば目を細めて喉を鳴らすハナが、触れられていることにも気づかぬ様子で、ただそこだけを凝視している。


 英二は自然にその視線の先を目で追った。見えたのは夜の往来だった。もちろん何もない、真っ暗闇だった。

 再びハナを見上げ、もう一度往来に視線をやる。


 やはりそこには何も、


 不意にボリスが立ち上がった。ペペは尋ねた。


「どこ行くんだ、兄貴?」

「便所だよ」


 答えて、ボリスは焚き火を離れる。背後から英二の声がそれを制した。


「待て!」


 有無を言わせない迫力があった。ボリスはもちろん、姉妹の喧嘩も、兄貴分に続こうとしていたペペも、思わず動きを止めて英二を見た。


 英二は火の着いた薪を掲げて夜闇に振りかざした。何も見えない。何かが動く気配も感じられない。


 往来に向けて、それを投げる。火の粉を撒きながら、頼りない炎が仄かに闇を照らし出した。


 同時に、英二の手は剣の柄をつかんでいた。揺らめいているのが炎だけではないと気づいたからだった。


「いきなり何だよ?」


 ボリスもペペもまだ気づいていなかった。迂闊にもボリスは踵を返して英二に詰め寄った。


 結果的にその迂闊さが彼の命を救った。喉に向けて投擲された短剣は、振り返った彼の耳殻を切り裂いて闇の中に吸い込まれていった。


 突然の激痛にボリスは腰を折った。鮮血の迸る左耳を押さえて呻き声を上げる。


 二撃目は慌てて身を乗り出すペペの肩口に突き刺さった。ペペは予期せぬ苦痛に身悶えし、絶叫を響かせて石畳を転げ回った。


「ボリス! ペペ!」


 ガブリエッラはうずくまる二人の傍にかがみ込んだ。アンジェリカは訳も分からず腰を抜かしてへたり込んでいた。


「どうした? 何が」英二は抜刀していた。闇の中を睨みながら、視界の外から聞こえる呻き声に尋ねる。


 返事もままならない二人の代わりにガブリエッラは答えた。


「血が、エイジ、どうしよう、血がたくさん出てるわ」

「落ち着いて!」英二は振り返りたい衝動を必死に堪えて尋ねた。「ボリス、ペペ、どこをやられた? 動けないのか?」


 耳だ、耳が。ボリスは涙を溜めて呻いたが、ペペの絶叫が会話を妨げる。肩口から生えている短剣の柄を目にして、その苦痛が大げさではないことをボリスは理解した。


 冗談じゃねえぞ。ボリスは懸命に体を動かし、何とか長剣を掴んだ。抜くことすら忘れて鞘の先端を闇に向ける。

 音もなく、闇の一部が彼の面前に抜け出てきた。よく見ればそれは黒衣を纏った人間の形をしていた。


 英二の目にも見て取れた。右と左に一人ずつ、ボリスの眼前にいる者を含めれば三人。注視していなければ、すぐに視界から消えてしまいそうなほど儚い存在感。目深に被った頭巾のため表情はおろか性別すら窺い知れない。


 英二を挟む二人は同時に仕掛けてきた。英二から見て左側の方がわずかに速い。抜き身の間合いに易々と踏み込み、黒衣の下に忍ばせていた刃で首元を薙ぐ。


 確かに速いが受けられない攻撃ではなかった。動作が大振りで軌道があまりにも直線的過ぎる。刀身を軌道の下に滑り込ませて、掬い上げるように手元を返せば英二の刃は相手の手首を切り裂いていたことだろう。


 英二はそうしなかった。正眼で相手を迎えたまま、膝の力を抜いて後方に体重を滑らせた。


 脳裏には数日前の騎士との決闘が蘇っていた。下手に受ければあの時のようにこちらの剣が斬り折られてしまうかもしれない。躊躇無い相手の攻勢に、判断が追いつかなかったと言う部分もある。


 しかし、否定的な心理のみからくる行動ではなかった。元来慎重な性質の英二は、どれだけ切迫した状況に追い込まれていようとも、敵が二人いると言う事実を忘れなかった。


 英二の後退とほとんど時を同じくして、先程まで英二の側頭があった辺りを短剣が通過した。


 安堵する間もなく膝を抜いて体を左方へ。短剣を投げた刺客と自身との間に先手の刺客を挟む。


 これで相手の連携を封じたと考える英二は浅はかだった。奥の刺客はすぐさま左へ回りこみ、手前の刺客は仕掛けた勢いのまま英二の右側から連続して刃を繰り出す。


 避けきれる間合いではなかった。受ける必要があった。しかし右の相手に意識を向ければ左側に背後を晒すことになる。どうすればいいのか、英二には判断ができない。


 視界の左端で敵が投擲の動作に入るのが見えた。


 目的を迷わせていた剣先が左を向く。全身はそれを追随して大きく左へ傾く。復原が不可能なほど前にのめった上段からの振り下ろしが、甲高い音を立てて短剣を弾いた。


 勢いを殺せない捨て身の一振りだった。英二は片膝を着いて石畳に剣の柄頭を打ち付けた。


 最早生きた心地がしなかった。すぐにでも立ち上がらなければいけないのにぴくりとも体が動かない。あまりの不自由さに、英二は自身の死すら疑わなかった。


 事実、英二の背後を取っていた刺客はその間合いの内に英二を捉えていた。手には鋭利な短剣。無防備な背中との距離は一間弱。子供でもし損なうはずのない絶好の獲物だと言えるだろう。


 故に油断したのかも知れない。自身もまた無防備な背中を晒しているということを、刺客は完全に失念していた。


 予期もせぬ後ろから遠慮容赦ない一撃を入れられ、刺客は英二の頭を飛び越え仲間を巻き込んで三間ほども吹っ飛んでいった。


 英二は背後を振り返った。鼻息を荒くしたハナが敵意をむき出した顔で飛んでいった二人を睥睨していた。どうやら彼女に助けられたようだった。


 安堵も束の間、ハナの更に後ろでガブリエッラが短い悲鳴を上げた。ボリスの長剣が鞘に納まったまま石畳を滑る。


 英二は慌てて疲労で軋む体を起こした。すぐさま助けに行こうと身を翻して、側背からの攻撃を完全に見落とす。


 ハナに弾き飛ばされた二人は早くも体勢を立て直し英二に肉薄していた。威嚇するような甲高いハナの吼声で、英二はようやくそれに気づいた。


 右からの攻撃を咄嗟(とっさ)に剣で受ける。痺れるほどの重い手応えはあったが、英二の片刃剣は折れなかった。


 左から回り込もうと駆けてくる刺客はハナが長い尻尾を振るって防いでくれた。


 鍔競り合う相手を強引に弾いて、英二は忙しなく視線をさ迷わせた。すぐ目の前に刺客を見上げて、ボリスは最早立ち上がる気力もないようだった。


 ボリスを見下ろす刺客は左手に得物をぶら下げたままおもむろに右手を動かした。額から胸の前へ、そして左肩から右肩へ。その軌跡で十字を描くと、左手の短剣を右に持ち替え、その切先をボリスに向ける。


 英二は反射的に腰の短剣を投擲した。短剣はその先端で正確な半円を描きながらハナと身を挺してボリスを庇うガブリエッラの間を抜け、刺客の左手を貫いた。


 しかし前方に敵を抱えながらの行為は傲慢と言うものだった。英二と斬り結んでいた刺客は投擲で生じた隙に間合いを詰め、近間からの素早い突きで英二の首を狙う。


 上手く捌く余裕はなかった。直感が膝を抜き、落下の勢いでなんとか致命傷を避ける。が、大きく体勢を崩した英二は石畳に尻を着いてしまった。座った姿勢から繰り出す苦し紛れの斬り上げは容易く弾かれてしまう。英二の剣も石畳を転がった。


 頼みのハナはもう一人の相手で手一杯だった。ボリスとペペの馬竜はガブリエッラの必死の呼びかけも空しく、動こうとしない。刺客の周りを囲んではいるが、もどかしげに唸るばかりで手を出そうとはしなかった。


 いよいよ打つ手をなくした。英二を見下ろす刺客はボリスを追い詰めた者と同じように十字を切り、短剣を構える。最早ハナの威嚇にも怯む様子はない。何事かつぶやいて、振りかぶられた短剣が風を切った。


 鋭い声が響いたのはその時だった。


 英二の喉元ほんの一寸手前で、刺客は短剣を止めていた。その姿勢のまま、再び英二には理解できない言葉で何かを喋る。変声期前の少年のような声だった。


 低くはないが決して高くもない男の声が、それに答えた。やはり公用語ではなかった。


 声の主は、ボリスを追い詰めていた刺客のようだった。男は左手に突き刺さった英二の短剣を造作もなく抜き取り、血の滴るその先端を英二に向けて何かを言った。


 英二には何も答えられなかった。やはり相手が何を言っているのか理解できなかったし、単純に極度の疲労で喋る気力もないためだった。


 ただ、疲労で回らない頭でも、その短剣を見て思い出すことがあった。初めて耳にする言語ではない。彼らの話しているのはサラサン人の言葉のような気がした。


 しかし、それが分かったところで何が変わるということもなかった。結局は相手の質問も自身が何と答えれば良いかも分からないのである。


 互いに言葉もないまま、気まずい沈黙が続いた。


 英二の短剣を手にしていた男は、不意に顔を後方へ向けた。程なく英二も感じ取った。人の物ではない足音、地響きが聞こえる。距離はかなり近いようだ。


 いや、近いなどと言うものではない。漆黒に染まる丘の稜線に、松明を掲げて近づいてくる群影が見えた。


 男は慌てる素振りもなく向き直ると、自身の血で汚れた剣身を黒衣の裾で拭い、丁寧なしぐさで石畳に置いた。


 そうしている間に馬蹄はどんどん近づいてくる。一里以上遠くに見えた松明の集団とは別に、明かりを持たずに先行している集団があるようだった。数は多くないが、かなり早く、そして近い。


 闇の中に薄っすらと認められた白銀の鎧は、見る間にその輪郭を濃くし、疑いようもなくこちらに向けて疾駆している。


「端へ寄れ!」英二は危機感を覚えて声を発した。


 すっかり正体をなくしているアンジェリカの手を取り、這うようにして往来の真ん中から逃げる。


 未だのたうっているペペをハナとイフサン(ペペの馬竜)がくわえて運び、ボリスもガブリエッラとアマニ(ボリスの馬竜)に伴われて道の端へ。


 英二らを襲った黒衣の男たちは、最早彼らを見ようともせずに迫り来る騎士を眺めている。


 焚き火を背にして往来に立ち塞がる黒衣の男を、騎士の方も認めたらしい。下に向けられていた騎馬槍が前方に突き出される。


 男は血の止まらない左拳を焚き火の上で強く握り、何かを唱えた。垂れ落ちる赤い滴が炎の熱で瞬時に蒸発する。同時に炎熱は真紅の蒸気を立ち上らせた。


 男は順手に短剣を構えた。騎馬槍は男の正中にぴたりと据えられている。


 剣と槍とが、高音を響かせて衝突した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ