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キジンガ  作者: スグル
5/7

第五話「孤立」

………………


マサイの姿は、もはや狼のようだ。

下半身は、はちきれんばかりの強靭な筋肉を抑えるGパン。

はたきの様な尻尾までついている。

上半身に至っては、強靭な筋肉と、強靭な獣のような爪が5本の指に。

顔はまさしく狼のように横の切れ長の牙を生やした口。

カコイが鳥人間なら、マサイは狼男という状態。

「おいおい…、すげぇ爪だな…」

と、変化した自分の両手を眺めてマサイは言う。

自分でも驚いているようだ。

だが、そうしている間にもカコイは迫る。

カジンはマサイの変化に驚きもしたが、やはり、迫ってくるカコイに神経を使う。

「マサイさん、鳥男が!!」

迫るカコイを、マサイに気づかせた。

気づけば、もう目と鼻先という比喩が合うほど近づいている。

「けっ…、驚いてもらんねぇか…」

発達した両足の筋肉を抑えるGパンの後ろポケットに、引っ掛けていたリボルバーを右手で取り出した。

そして、カチャリ…と銃をカコイに向けて構える。

いつでも、撃てる様にマサイの眼光は鋭くなった。


当然、数メートル先のカコイにもマサイの変化は見えた。

彼は翼を羽ばたかせ、接近しながら口の中でつぶやく。

「カジン・コウジョを逃がした男は、インテグラル・ウィルスを打ったか!!」

だが、その声は自分の翼の音でかき消された。

体を飛び込むように垂直にさせて飛ぶカコイは、マサイまで、あと数メートルの距離で体制を変えた。

両足を思いっきり、廃墟の地面に押し付ける。

大きくほこりを飛ばして、矢飛びに飛んでいた自分の体にブレーキをかけた。

ザザザザザーー!!!と地面が鳴り、カコイは両足で地面に立つ。

「なんだ…!」

急に停止したカコイを、カジンは廃墟のビルの壁に背をつけ怪しく感じた。

マサイの方は、3メートルくらいの目の前に居るカコイに対して、未だに銃を向ける。

いつでも撃てるように。

「…」

狼男になっても、マサイは無口だ。

その静けさが、3メートル先のカコイにプレッシャーをかける。

「はん…」

銃を向けられたカコイも、冷静だ。

撃ってみろ!

と言わんばかりの仁王立ちをカコイはする。

その様子を凝視するマサイの狼顔の切れ長の口から、ちらちら牙が覗く。

カコイの鳥類のくちばしが開く。

「我が組織のウィルスを盗んだ上に、自分の身体に投与する行為は、我々に対する侮辱だと言うのは解ってるな!!」

「へっ…、これ作る際に、受刑者での人体実験行ったくせによ…」

その言葉に、カコイの体が少しビクついた。

カジンの目からでも解るくらいだ。

リボルバーを握るマサイの右腕は垂直だ。

カコイのくちばしが、また開く。

「貴様と、カジン・コウジョは重罪だ…。我が国の誇りであるロクト・ミッショネズに対するこの行為は…」


バン!!


リボルバーの銃声が鳴った。

マサイの右手からは硝煙が漂う。

リボルバーの引き金を引いたのだ。

「ひっ…!」

喋っていたカコイの顔の左頬から、血が流れる。

これは、さっきの銃弾により生まれた傷だ。

思わずカコイは、左頬を手で押さえる。

硝煙臭いマサイは、口を開く。

「大人しく焼き鳥になれ…」

狼顔で表情が解りにくいが、マサイの目がどす黒く濁った。

カジンには、マサイの考えていることが解る。

あれは、殺意だと…。

「貴様!!」

発砲に激したカコイは翼を広げる。

広がった翼が、大きく上下に動き周囲の砂埃が舞始め、カコイの足は地面から数メートル離れ、空を飛び始めた。

だが、それにもマサイは怯えはしない。

もうカコイと同等になったのだから。

銃を、また静かに構える。

照準の先に映るカコイは、自分の強靭な爪をむき出す。

その爪で、マサイを切り裂くつもりだ。


バッ!!


カコイが体を垂直にし、翼を羽ばたかせ、マサイに向かって突進を始めた。

銃を向けられていようが、逆上しているせいか構っていない。

解りやすいほど、カコイの突進の軌道は安易。

当然、矢飛びに自分に向かってくるカコイを狙うのは、マサイにとっては簡単だ。

しかも、インテグラルウィルスのせいか、さっきまで速く見えていたカコイの飛翔が遅く見える。

そのおかげで、より狙いが精密になった。

だから、ゆっくりと確実に銃の照準を合わせる。

照準は、カコイの鳥顔の額。

そこ撃つ。

マサイは、ためらわない。

本気で、撃つつもりで居る。

当然、カコイの命は配慮はしていない。

「一撃で、楽に…」

ボソッと、マサイは言う。

同時に、引き金に掛かる人差し指が動じた。

その声にカジンは、気づく。

「殺す気かぁ!!!」

思わず、カジンは叫ぶ。

自分達を捕まえに来た男とはいえ、安易に殺害するなど、カジンには信じられない。

マサイは、命をどうとも思っちゃいない。

そういう男だということに、気づいたせいか、廃墟の壁から急いで立ち上がる。

立ち上がると、走った。

短距離走のように、突進する。

カジンは、もの凄い勢いでマサイに迫った。

「やめろぉおおーーーー!!!!」

カジンは叫んだ。

その声に、マサイの銃を握る腕がビクついた。

同時に、指に掛かる引き金が動じる。


バン!!


銃声が響く。

「はっ!」

カジンの足が止まった。

銃から硝煙が舞う。

マサイは銃を放った。

「ぐはっ!」

銃弾の命中で、カコイは血を吹く。

そして、翼の羽ばたきが停止し、そのまま地面に墜落する。

地面に轍を残し、カコイは廃墟の床に倒れこむ。

倒れこむカコイを見るカジンは、彼の左肩から血が流れるているのに気づいた。

あの銃弾は、カコイの額ではなく左肩に被弾した。

たぶん、さっきのカジンの叫び声で狙いがずれたのだろう。

カコイは、激痛で意識を失った。

たぶん、左肩の骨のどこかが砕かれてしまったのだ。

鳥人間だったカコイの強靭な肉体が徐々に衰退し、顔も人間の顔に戻った。

意識と同時に、ウィルスの効力も切れたのだろう。


………………


バゴッ!!


カコイが気絶している廃墟で、にぶい音が聞こえる。

狼人間から、元の人間の顔と肉体に戻ったマサイがカジンを殴りつけた。

狙いを外れさせたのと、ずっと、足手まといで居たからだ。

唇が切れたカジンは、口から血を流しながら…。

「あんたに、人を殺す権利はないでしょ!!」

そう叫ぶカジンの受刑服の襟足を、マサイは乱暴に握る。

「甘ったれんなよ、ガキ!!どっちにしろ、もう亡命してる時点で孤立してんだぜ、俺たちはよ!!!」

そう額に青筋を浮かせて言う。

だが、カジンは退かない。

「罪に罪を重ねて溜まるか!!」

そう言って、マサイの手を払った。

「けっ…、じゃあ、ついて来なくていいぜ…、青二才が」

カジンに背を向けて、マサイは言う。

コンビ解消という意思表示だ。

「ついて来ますよ…、どっちにしろ、ロクトミッショネズから狙われてますし、あんたには助けてもらった恩がある…」

そうカジンは言うと、二人は歩き始めた。

こうして、この廃墟から二人は去った。

カコイは、廃墟に倒れこんだままだ。

彼の左肩には、止血のためらしい布が巻かれていた。

これは、カジンがした施しだ。


二人の考えが合わない。

ロクトミッショネズは、本気だ。

この国から孤立してる。

インテグラルウィルスの効力。

以上のことが、マサイとカジンに解った。

その上で、二人はまた歩き始め廃墟から離れる。

このまま、歩けば違う街に着く。


………………

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