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キジンガ  作者: スグル
3/7

第三話「翼生える」

………………


彼らが走りだした廃墟の多い寂れた市街に、一人ロングコートの男がいる。

その男には、金色のネームプレートが胸にある。

ネームプレートには・・、

「ロクト・ミッショネズ・メンバーズ カコイ・トリ」

と刻み付けられている。

これは、彼がロクト・ミッショネズのメンバーであるという証。

証を胸に掲げ、彼は一枚の資料を取り出す。

それには、カジンの顔写真が載っている。

男の細い目が、資料を凝視する。

そして、この男の切れ長の細い唇が開く。

「カジン・コウジョ・・、17歳。罪状、強盗。30分ほど前に、少年院から謎の侵入者と共に脱獄。現在、少年院から数キロ離れたガズ市街に居ると思われる・・」

この情報は、さっき流れた本部からの連絡だ。

男は、それを確認した。

「もう一人、脱獄の援助と新作のインテグラル・ウィルスを奪った男が居るか・・」

カコイという男は、資料を破り捨てた。

もう必要ないからだ。


………………


カコイという男から、数メートルの廃墟の瓦礫たち。

そこに、カジン、マサイは居る。

ちょうど、瓦礫は二人の体を隠せる大きさだ。

カジンは、その瓦礫の壁から顔を覗かせる。

すると、カコイの存在に気づく。

「マサイさん、変に派手な男が居る・・」

カジンの声は、向こうに気づかれまいように小さい。

他の方向に、首を向けていたマサイは振り向く。

そして、カジンが示唆した場所に顔を向けた。

本当に、派手な姿だった。

このことに対して、マサイは・・、

「ポリが消えて、あいつが現れた・・、何故だと思う・・」

そう、カジンに問う。

マサイの片手の握られるリボルバーのシリンダーが動く。

「解りませんよ・・」

素直に、カジンは答えた。

マサイにとっては、腹が立つまでに率直な回答だった。

「ポリは、あいつに俺らの捕獲を任せたってことだよ、このバカ」

そう怒りながら、マサイは瓦礫から体を出す。

「なにする気ですか・・」

カジンは、そのマサイの動きに驚く。

マサイが、丸腰とも思える男の不意を突いて銃を撃とうとしている。

振り返って見た彼の目が本気だ。

卑怯だと、カジンは叫ぶ間もなく・・。


バン!!


サイレンサーのない生の銃声は、カジンの耳を貫く。

男を撃ったリボルバーは、硝煙が漂う。

引き金を引いたマサイの目には、罪悪感も何もない。

「あんた!!なにやってるんだよ!!」

カジンは強く責める。

丸腰の男を撃ったのだ、このマサイは。

彼に強く軽蔑するまなざしを送る。

弾は、カコイに命中した。

そのつもりで、マサイは撃った。

だが、彼は銃を収めはしない。

むしろ、マサイは額から汗をたらす。

その様子に、カジンは気づいた。

銃を降ろさないマサイが、口を開く。

「おい・・、ロクト・ミッショネズってのは銃じゃ駄目らしい・・」

その言葉で、カジンは軽蔑していたマサイから目を離した。

視線は、カコイに向ける。


すると・・。

カジンは、自分の目を疑った。

さっきのマサイの不意打ちを卑怯とは思えなくなった。

撃たれて倒れたはずのカコイが、カジンらの方に顔を向けている。

その細長い目が、カジン、マサイを映す。

「そこに居たか・・」

切れ長の唇が、そう言葉を言う。

銃の弾から、位置がばれた。

さらには、そのカコイの背中から羽が生えていた。

長く派手なコートを破り、鳥のような、いや、鳥そのものの巨大な羽がカコイの体を覆っている。

だから、マサイの銃弾が翼にヒットし、カコイの致命傷にはならなかった。

数メートル先にいる二人には、そのことが解る。

「嘘だろう!!」

カジンは、男の背中から翼が生えたことに驚く。

マサイもだ。

冷や汗が、流れた。

だが、事実は事実で、カコイには鳥と同じ翼がある。

しかも、それどころか、カコイの顔までもが変化し始めた。

あの切れ長の唇が、鳥のくちばしのように尖る。

顔全体が、鳥のように変化し始めた。

その変化に、二人は驚愕するしかない。

同時に、ロクト・ミッショネズの本当の脅威を知った。

このように、人間ではなくなるのが、奴らの恐ろしさなのだと。


………………


インテグラル・ウィルス。

その言葉を、マサイは思い出す。

確か、誰から、そのウィルスの噂を聞いた。

人間の遺伝子に食い込む特性を持ち、そこから、遺伝子から細胞、細胞から筋肉、骨格、神経まで変化させる細菌。

このウィルスに手をつけたロクト・ミッショネズは研究を進めた末、ロクト・ミッショネズ自体が最強になった。

彼らは、ウィルスをコントロールしたのだ。

噂を信じ、マサイは事情から少年院に入り奪った。


………………


この事柄を思い出しながら、マサイは、カコイ・トリの変化を見つめる。

男の肉体が、コートを破るまでに強靭な筋肉に発達する。

顔までも鷲に変化。

さらには、手足には強靭な爪が生え、背中には翼が・・。

人間の姿をそのままに、男の体は鳥になった。

鳥人間という表現が似合う。

ロクト・ミッショネズが、インテグラルウィルスで、人体を人間ではなくさせた。

それを、なにも語らずにカコイは証明する。

破れたコートから、鳥人間と化したカコイの肉体が覗く。

鳥目が、カジンとマサイを睨む。


逃げるぞ!!

そう叫ぶ必要もなく二人は駆け出す。

カジンは、困惑したまま走る。

人間が鳥になったのだ、驚くしかない。

そのカジンの横で、マサイは微笑んでいる。

何故なら、やっと、このポケットに入っている注射器の内容がわかったからだ。

「このウィルス打てば、ああなれるのね・・」

カコイの変化は絶望ではなく、希望であると、マサイは笑う。


………………

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